ただのあがり症?・・・もしかしたら社交不安症という病気かも!

この時期は、学校・職場など新しい環境で、知らない人の前で話をする機会も多いのではないでしょうか。そういう場所で、あがってしまうという方も多いと思いますが、一見、ただの「あがり症」、「人見知り」と思われるものの中にも、実は、気の持ちようではすまされない、病気の場合もあります。それが「社交不安症」(昔は「社会不安障害」と呼ばれた)病気です。

社会不安症は気の持ちようでは解決できない!

社交不安症を、わかりやすく言えば、「あがり症の重症なもの」です。                通常、誰でも人前に出れば多少は緊張するものです。少々「あがる」こと自体は、むしろ人間にとって自然なことです。でも、病気の社交不安症は、明らかな身体反応が出てきます。例えば顔が真っ赤になる、汗が止まらない、めまい・吐き気・息苦しさなどの反応です。体に異常を来たすようになると、もう「気の持ちよう」で解決できるものではなく、社交不安症という病気である可能性が高いです。

例えばこんな症状。

人によって症状が出る場面は違うのですが、日本人にいちばん多いのは大勢の人の前で話す時に不安になる「スピーチ恐怖」です。                                                    結婚式の挨拶、会社の会議や学校の集会などで話す時、誰でも緊張しますが、     度を超えて、口がもつれて言葉が出ない、身体がふるえる、また、他に多いのが、「書痙(しょけい)」クレジットカードのサインなど、人前で字を書く時、手が震えて書けなくなる症状です。他にも、近くに他人がいると排尿できない「排尿恐怖」などあり、どれも何も、体のコントロールができなくなるくらい、重症のケースだと考えてください。

病気だと見方を変え、対処の仕方を変える。

気持ちの問題だと思われてしまうことは多いです。そのため、「だらしない」とか「しっかりしろ」とか言われて、余計辛くなることも。そういうことを言われると、「弱い自分が情けない」などと言って、さらに自分を責めるようになり、     余計悪化することもあります。大切なのは、「病気」だと見方を変え、対処の仕方を変えていくことです。

社交不安症の人は、脳に明らかな異常

まず、脳の作用に問題がある病気だと捉え、その治療を行います。                       社交不安症では、冷や汗が止まらなくなったりするので、皮膚科に行く人もいますが、精神科へ行くことが正しい治療につながります。というのも、社交不安症は、脳の働きに異常が出ることが原因とされるからです。社交不安症の人は、MRIで脳を見たとき、「扁桃体」という部分のはたらきが、明らかに活発になっているのがわかります。「扁桃体」というのは、不安や恐怖を感じると、呼吸や脈拍などを上げる指令を出す役割がありますが、強い緊張があると過剰反応を起こして、      神経伝達物質のバランスが崩れて、呼吸や脈拍をどんどん上げてしまうわけです。

改善のカギをにぎるのは、神経伝達物質

「扁桃体」が過剰反応して、神経伝達物質のバランスが崩れるのを抑えるようにします。神経伝達物質には、不安や緊張を抑える「セロトニン」や、集中力を高める「ドーパミン」などがありますが、これらが足りなくなることで、呼吸や脈拍が異常な状態になります。セロトニンは心を安定させる働きがありますが、不安に過剰反応している脳の「扁桃体」では、「セロトニン」の分泌量が減っています。分泌量が低下すると不安や恐怖を感じ、心の平静を保てなくなります。ドーパミンは、集中力を高め、心地よさを感じる働きをしますが、分泌量が低下すると意欲的な行動や社会的活動ができなくなります。

どんな治療方法があるのか?

①薬物療法「SSRI」10年ほど前から、よく使われているのが、「SSRI」という薬です。SSRIは「セロトニン」が減ってしまうのを防ぐ役割があります。SSRIは、抗うつ薬の一種ですが、比較的副作用が少ないと言われています。ただ、効きすぎると逆効果のこともあります。神経質なくらい、きれい好きだった人が、逆に、粗雑になり、部屋が乱雑になったり・・・ただ、これで、脳の扁桃体が正常な状態になれば、再発はしない、と言われています。医師と相談しながら、上手に、使って、治療をしてください。                                                           他には、抗不安薬で、脳神経の高ぶりを抑え、リラックスさせる神経伝達物質を増やしたりするなど、薬による治療法は様々あります。
②精神療法「認知行動療法」社会不安症の人は、物事を必要異常に悪く捉えるので、臨床心理士と一緒に、その誤った認知を修正することで症状を軽くします。

家族のサポートも大切

特に気をつけてほしいのが、年頃のお子さんを持つご家族のサポートです。         学校に行くことを嫌がり、友達と遊んでいる姿を見たことが無い。また、長く続けていた部活を辞めた、自分の部屋に閉じこもりきりだ、ここまできたら、社交不安症となっている可能性があります。こういう性格だと決めつけずに、一度、脳の状態を見てもらう方がいいでしょう。

TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」医学ジャーナリスト松井宏夫さん2016/4/11より。





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