原因不明の頭痛、耳鳴り、めまい・・・脳過敏症候群を知っていますか?
「脳過敏症候群」とは?
「脳過敏症候群」というのは、名前の通り、脳が興奮状態に陥り過敏になって、様々な辛い症状を抱える病気です。主な症状としては、しつこい頭痛、頭の中で雑音が鳴り響くような頑固な耳鳴り、フラフラしためまい、不安感、抑うつ状態、不眠、などです。命が危ない、ということにはなりませんが、四六時中悩まされるので、生活していく上で、大きな障害になる病気です。しかも、病院に行っても「原因不明の頭痛」とか「原因不明の耳鳴り」とか、「原因不明」で片付けられてしまう事が多いのですが、実はただの頭痛とは仕組みが違っていて、頭痛の治療では治らない、辛い病気です。 この「脳過敏症候群」というのは、2010年に発表されたばかりの病気です。発表したのは、東京女子医科大学脳神経外科の清水俊彦客員教授です。
なんでこんな病気になるのか?
きっかけは、慢性の頭痛、特に片頭痛から、脳過敏症候群になると見られています。片頭痛の段階での治療を誤ると、時間が経って、脳過敏症候群になると指摘されています
では、なぜ片頭痛が脳過敏症になるのか?
では、なぜ片頭痛が脳過敏片頭痛は、頭の片側、もしくは両側がズキンズキンと脈打つような発作性の頭痛です。その原因については、いろいろな原因が指摘されています。一つは、ストレスなどで脳内の物質が変化して、血液をたくさん送り流そうとして、脳の血管が膨らみ、近くの神経を圧迫することだとされています。それからもう1つは、脳が興奮して、頭痛を引き起こす、とされています。光や、音など、体の外からの刺激で大脳の一部=脳の後ろにある後頭葉という場所が、過剰に反応して、その興奮が限度を超えたときに、頭痛になる、というわけです。光の過敏症状は脳の後ろ側にとどまりますが、音への過敏症状は横側にまで回りこみ、さらに、においの過敏症状は、頭の前側にまで、興奮症状が回りこむと言われています。
脳の興奮の方は、気づけない・・・なぜか?
片頭痛=頭が痛いというだけで「水面下で脳が過敏状態にある」事まではわからない。そうなると、頭痛薬などで、痛みを紛らわす=痛みを感じにくくする治療だけが行われ、「水面下で起きている脳の過敏状態」は放置される、という事になります。また、治療以前に、「たかが頭痛」という考えが日本には強いので、治療しないで、市販の頭痛薬で我慢する、結果、脳の過敏状態を放置する、ということもあります。
痛みはごまかし、脳の興奮を放置するのにはこんな訳も・・・
そうなると、脳の興奮は、ますます高まり、不快な症状が強くなることになります。一般に、50代60代になると、脳の血管も動脈硬化となり、膨らみにくくなります。そのため、神経を圧迫する頭痛はなくなるんですが、その一方で、違った形の頭痛、頭の中で雑音が鳴るような耳鳴り、強いめまい、不安感、不眠が残ってしまいます。そして、症状は悪化して、音の過敏症状は、頭の中で太鼓が鳴るような頭痛になり、また、「めまい」は、後ろから髪を引っ張られるようなめまいとなってしまいます。結局、脳過敏症候群は、早期治療できなかった事が、あとあと響く、と言えます。また、治療を誤る前に、「たかが頭痛」という考えが日本には強いので、治療そのものをしない結果、脳の過敏症状が放置されてしまう、ということもあります。
どういう治療をしたらいいのか?
診察と治療の手順ですが、まずは「脳神経外科」で診察を受けていただきます。まずは、他の病気から来ている症状なのかどうかを見極めます。そこで、くも膜下出血や脳梗塞などにつながる頭痛ではないか、チェックします。そして、お医者さんが、問診で、脳の興奮性が高い体質かどうかチェックします。その上で、脳が興奮しやすい状態かどうかを調べる脳波検査を行います。頭に電極を貼って、脳の神経細胞から出る弱い電気信号をキャッチする検査です。脳波検査で、起きている時、寝ている時、光を当てた時など、色々な脳波を調べます。こうして「脳過敏症候群」ということがわかると、薬での治療となります。治療に使われるのは、頭痛薬の中でも、脳の異常な興奮を抑える薬が選ばれます。代表的なものに「トリプタン」と呼ばれるものがあります。ただ、脳梗塞や狭心症、重度の高血圧、肝機能が悪い人などは、この薬が使えません。そういった人は、非ステロイド系の薬で痛みを抑えていきます。さらに、これに合わせて、頭痛のきっかけになる飲酒・喫煙を控えたり、規則正しい睡眠など、生活習慣の見直しをしていくことが必要となります。
日本全国8時です。月曜日 医学ジャーナリスト松井宏夫さん 2016/5/23掲載分