乳がん検診の誤解と注意点

相次いだ乳がん検査の報道。でも少し誤解もあるのでは?

著名人が「乳がんだ」と公表するたびに、注目されるのが乳がんの検査です。今回も、この週末、たくさんの報道がありましたが、肝心の検査については、少し、表面的だったように感じました。検査にはいろいろありますが、報道では「マンモグラフィー」に集中していました。ただ、マンモグラフィーには注意点もあるので、そこを理解しておくのが重要です。    さらに、こうした中、昨日の読売新聞に見逃せないニュースがありました。自治体のマンモグラフィー検査で、「異常があるかもしれないのに、異常なしとした」自治体がかなりあったそうです。あってはいけないことですが、一方で起こるべくして起こったとも言えます。そこで今日は、誤解も多い乳がん検査について、これまでの取材をまとめて伝えます。

マンモグラフィーは万能ではない!技術的な見落としに注意

まず、乳がんですが、検査による早期発見が重要なのは、間違いありません。乳がんは、早期治療をすれば、他のがんに比べ生存率は高いのです。

ただ「マンモグラフィーは万能ではない!」まず、このことを覚えておいてください。

マンモグラフィーは、簡単に言うと、X線=レントゲンで、胸を撮影して、シコリがないかどうか、見つける検査です。シコリがあれば、それが白く写ります。また「シコリ」が悪性かどうかを見分けやすいというのがメリットとされています。ただ、シコリが小さすぎると、見つけにくいという問題もあります。女性の胸の中には「乳腺」という、母乳を作ったり運んだりする「腺」があります。リンパ腺などと同じ漢字を書く「腺」です。この乳腺は、マンモグラフィーで撮影すると、白く写り、シコリとかぶります。高齢の方は、乳腺が目立たなくなっているので、問題ないのですが、20代から30代では(また40代でも)密度が高いため、胸全体が白くなります。そのため、小さなシコリがあっても、この乳腺に隠れて、見つけにくいわけです。

乳腺が多い人は「エコー=超音波検査」の方が見つけやすい

乳がんの検査というと、「マンモグラフィーを受けましょう」という運動が成功して、「乳がん検査=マンモ」となっていますが、乳腺が多い時は「超音波=エコーも重要」です。エコー検査でも、乳腺は白い線で写るんですが、シコリについては、マンモグラフィーと違って、小さなものでもはっきりと「黒い影」で写ります。若い女性は乳がんの進行が早く、1年で数センチなることもあります。だから、少しでも小さな段階で見つけるのが重要なので「エコー検査」が必要です。

エコー検査の問題は、導入している自治体が少ないこと

ただ、このエコー検査は、自費で任意で受けなければならない場合が多いのが問題です。

乳がんの検査の1つは、会社や自治体などの団体が補助して安く受けられる検診です。これらはおおむね「40歳以上」になると、自治体などから案内状が来ます。ただ、こうした自治体の検査のほとんどは、マンモグラフィーなんです。関東では、東京の品川、江戸川、茨城の水戸、つくばなどで、エコーとマンモの両方が受けられますが、ほとんどの、自治体ではマンモだけ、となっています。予算や医師の数など問題はありますが、エコーも受けられるように改善して欲しいです。

自治体のマンモグラフィーでは、人為的見落としにも注意

また自治体のマンモ検査については、精度も問題視されています。これは、2016年6月12日の読売新聞の記事ですが、131の自治体を調査した所、およそ「7割」で、異常がないとは言い切れない状態なのに、「異常なし」と伝えているそうです。これはどういうことかというと、本当に「異常がない」ものだけではなく、乳腺が多くて「異常が見つけられない」ものも、「異常なし」と通知しているそうです。異常が「ない」のではなく、「見つけられない」だけかもしれないので、おかしいです。

なんでこうなるのかというと、国の指針にも問題があるんです。国の指針では、異常があれば「要精密検査」で、異常が見つからなければ「異常なし」という二択です。集団検診では、後日、郵送などで通知しますが、この二択で伝えるところが多いんです。しかし、日本女性の半分は、乳腺が多くてマンモではみつけにくいともいわれています。第三の選択肢「乳腺が多くてマンモでは見えにくいのでエコー受診を」というのも必要です。実際、こうしたことを考慮して 「乳腺が多くて見えにくいのでエコー検査を」などと独自に通知する自治体もあるようです。関東では、川越、所沢、川崎等は「見えにくい」と独自通知しているので、こうした取り組みは、ぜひ広がって欲しいです。

マンモグラフィー検査は「乳がんの専門医のいる所で」

乳がんの専門は、婦人科ではなく、外科、さらには、乳腺外科です。ところが、婦人科でもマンモグラフィーの検査をしているところはあります。それは、検査数に比べ、乳がんの専門医が少なくい、というのが原因です。そこで、子宮がんなどの専門の婦人科の先生などが、「マンモグラフィーの映像を読む講習」を「2日間」受けて、「試験」を受けて、マンモグラフィーを読む「認定医」となって、検診を手伝っているんです。乳がんの専門ではないので、何かあっても「専門医に診てもらって下さい」となります。

やはり、乳がんの専門医で、同時にマンモを読む認定医である人、両方の条件を満たしている人がいる病院がいいでしょう。自治体のがん検診は案内が届きます。そこに指定の病院が書かれています。その病院に、乳がんの専門医がいるかどうか「日本乳がん学会のHP」でチェックを!また、マンモグラフィ認定医についても、ネット検索で出てきますので確認して下さい。

★日本乳癌学会の「乳腺専門医一覧」は
http://www.jbcs.gr.jp/people/people_senmon.html

★マンモグラフィ認定意の一覧は
https://www.qabcs.or.jp/mmg_d/list/

日本全国8時です。毎週月曜日は、医学ジャーナリスト松井宏夫さん 2016/6/13掲載分

  


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