意外と知らない“床ずれ”その予防と治療について

床ずれとは?

今では、自宅で看護や介護をする方も増えていますが、その一方で、正しい床ずれの知識がない方も多いようですので、注意が必要です。床ずれは、寝たきりや車いすで、自分で体の向きを変えられない状態が続く方が、体重で、いつも同じ場所が圧迫されたり、摩擦があることで、血流が悪くなり、皮膚の一部が赤い色味を帯びたり、ただれたり、傷ができてしまうことです。ひどいときは皮膚が壊死して、穴が空き、筋肉や骨が見えることもあります。感染症を引き起こすこともあるので、非常に怖い症状です。

床ずれが起きてしまう仕組み

どうしてこうなるのか、というと・・・皮膚というのは、いくつかの層から出来ています。一番表面が、皮膚の油の膜と書く「皮脂膜」で、その下に角質とよく言われる「角層」、次が、表面の皮膚と書く「表皮」、その下が、真実の皮と書く「真皮」となっています。この、表皮と真皮の間の結合が弱くなって、ベローンと向けてしまうのです。

栄養状態も床ずれに影響

特に注意が必要なのは、自分で体位が変えられず、いつも同じ場所が圧迫、摩擦されるだけでなく、栄養状態が悪い方は、床ずれになりやすいとされています。というのも、普段、栄養は幅広く行き渡りますが、栄養状態が悪くなると、数少ない栄養は、まず、生命維持に必要な骨などに、優先的に使われます。その結果、床ずれを防ぐための皮膚には栄養がいき渡らず、どんどん弱るわけです。

床ずれのできやすい場所

それから、床ずれのできやすい身体の場所というものがあります。骨が出っ張っていて、皮膚が薄いところは床ずれになりやすいです。一部の調査では、頭が7%、肩甲骨が33%、仙骨(お尻の出っ張った骨)が44%、そして、かかとなど、足の下の方が16%、あとは、ひじなど、となっています。特に注意が必要なのは、お尻の骨、仙骨です。活動している人は、お尻の筋肉が発達しているので、わかりづらいのですが、寝たきりになると、お尻の筋肉が萎んできますので、この仙骨が出っ張ります。そして寝ている時は、この仙骨に、体重の半分くらいの重さがかかるそうです。また寝たきりの方の場合、排泄がうまくいかず、不衛生になることも影響します。

床ずれの誤解

床ずれの予防の基本は、寝ている患者さんにかかる「圧力」と「ズレ」を減らす事です。ところが、この床ずれの予防法ですが、実は、誤解が多いので注意が必要です。この「圧力」の減らし方で誤解が多いのが、ドーナツ型の座布団を使う事です。骨が出っ張っている「かかと」や「お尻」に、ドーナツ型の丸い座布団を使うと、確かに、出っ張った部分が、ドーナツ型の真ん中の穴に入って宙に浮くので、一見、圧力もかからず、擦れる事もなく、問題が解決されると思われるかもしれません。ただ、この方法だと、本来、圧力がかからない周辺の部分が、ドーナツ型の座布団で圧迫され、血流が極端に悪くなってしまうという問題があります。

予防は、点ではなく面!

圧力を減らすポイントは、身体を点ではなく面で支えるようにすることです。例えば、お尻なら、骨の出っ張りがない、広い面積のお尻の部分を下にすることです。クッションなどで、寝ている身体と布団の角度を斜め30度に保つといいようです。あわせて、ズレ=つまり摩擦にも気をつけることが重要です。そして、同じ場所が圧迫され、摩擦を受け続けないように、定期的に体の向きを変えることが大切です。

身体の位置を変えるには

身体の向きを変えるのは、大変ですし、難しい作業です。病院では10年程前は、2時間に1回、身体の位置を変える規則でした。今はベッドのマットレスが柔らかく改良されているので、緩和されましたが、それでも、4時間に1回は、体の向きを変えることになっているようです。2時間に1回が、4時間に1回になったというのは大きな進歩ですが、それでも、1日に何度も変えることになるので、介護・看護の方は非常に大変です。また、一度に体の向きを変えようとすると、患者さんの身体に負担がかかります。できれば、2人で位置を変える方がいいですが、1人で行う場合も、患者さんの上半身・腰の部分・下半身の順に、少しずつ移動させます。それから圧迫されたり擦れたりする部分を、オイルの薬で乾燥を防ぐこと、それから、排泄、失禁などがあった場合は、清潔にするようケアするのも大切です。

床ずれの治療

床ずれになってしまったら、病院での治療になります。床ずれは、医療用語で「褥瘡(じょくそう)」と言いますが、褥瘡外科というのがある病院もあります。医療用語が難しいので、病院で、「床ずれなんですが」と相談してみてください。床ずれ専門の外来がない場合は、まず形成外科、他は皮膚科、外科が対象になります。そこでどんな治療が行われるか、ですが、床ずれでは、皮膚が壊死したり、骨が炎症を起こしたりしますので、そうした皮膚や骨を取り除いていくことになります。方法としては、外科的に切除する方法、塗り薬で少しずつ治す方法などがあります。

床ずれチェック方法

悪化する前に、早めに行ったほうがいいのですが、ポイントが1つあります。床ずれが起きやすい仙骨等の出っ張った骨の上が、赤や紫色になっていたら危険です。そこを指で3秒ほど軽く押して、押した時に白っぽくなり、離すと赤くなれば大丈夫。一方、押しても白くならず、赤や紫のままなら、初期の床ずれの可能性があります。そうなったら、すぐに専門の医療機関に相談してください。

日本全国8時です。毎週月曜日は、医学ジャーナリスト松井宏夫さん   

2016/5/30掲載分




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