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【エッセイ】移転八倒

~皆様は、今まで何回引っ越しをされたことがありますか?~




私は、上京、転職、同棲などで
5回引っ越しをしたことがあります。


日本国内の平均引っ越し回数は
約3回ということなので
5回というのは多いほうなのかもしれません。


ちなみに、アメリカ人の方は
世界でも有名な引っ越しが大好きな人種だそうで、一生で平均11回引っ越しされるそうです。


そう考えると
私はまだまだなのかもしれません。



今日は、そんな引っ越し中に起きた
出来事をお話しさせていただければと思います。


皆様、よろしいでしょうか?








7年ほど前に就職とともに
私は引っ越しをすることにしました。


当時はお金が全くなくて
引っ越し業者さんにお願いするのを
躊躇いました。


に連絡をして
出世払いで焼き肉奢るから
手伝ってくれないかとお願いしました。


あっけなく断られました。


出世払いで回転寿司にも連れて行くと
お願いしました。


それでも断られました。


追加で
アイスクリームも買ってやると
お願いしました。


弟は、ようやく了承してくれて
私と弟の2人で引っ越しをすることにしました。








まずは、学生の頃に住んでいた
部屋の荷造りから始め
実家から野菜を運ぶ用の大きなトラックを
借りて荷物を運びました。


引っ越し先は
生まれて初めての7階の部屋でした。


都心の夜景が見れる部屋に憧れて
無理をして契約したのです。


荷物を新居に運ぶためには
エレベーターを使わなければいけません。




私達は荷物を台車に乗せて運びます。


エレベーターで待っていると
後ろから恐らく同じマンションの住人の方であろう、私と同い年ぐらいのカップルが後ろに並びました。






これから
ご近所さんになる方達ですので
決してご迷惑をおかけしてはいけません。



このマンションの新入りである私
先輩カップルを待たせてしまえば
失礼千万です。




エレベーターが着いて
乗ってる人が降りてから
急いでスムーズに邪魔にならない端っこに
乗り込みましょう!


私は何度もイメージトレーニングをします。








今、5階のランプが点いています。





失礼がないように。失礼がないように。
急いでエレベーターに。






4階




ドキドキしてきました。

大丈夫、私ならやれます。





3階




そろそろです。
私は足首を回して準備体操を始めました。









2階




次です!
絶対に失敗は許されません。


速やかにエレベーターに乗らなければいけません!












チン! 



エレベーターが1階に着きました。





ドアが開きますが誰も乗っていません!



それでは、GOです!!


私は勢いよく台車を押しました。













ウヴオエッ!!





強烈な痛みが腹部を襲います。


台車のストッパーをONにしたままでした。


私は腹部の痛みより
超強烈な恥ずかしさで死にそうでした。




慌ててストッパーをOFFにして
もう一度、無我夢中でGOです!!



ドントマインドですよ!私。


人間は失敗するのが当たり前です。


もう一度急いでエレベーターに向かって
直進すればいいのです。

GO!GO!










あれ?



さっき後ろにいた弟が目の前にいます。


そして、その目の前にいる弟の後ろには
さっきまで私の後ろに並んでいた
カップルがこちらを見ています。



私は、わけがわからないまま
とりあえずカップル達に笑顔で会釈をします。



え?何が起きたのですか?



確かに私はエレベーターに向かって
台車を押しましたよね?


なぜ後ろに並んでいた
弟とカップルが目の前に…?












はわわわわわっ!!



パニックです!!


私はエレベーターに向かって
GOしたはずです!


しっかりGOしました!






すると、慌てる私に
弟が片方のストッパーが
まだONのまま
だと教えてくれました。



なるほど、なるほど。
全ての謎が解けましたよ!


ストッパーで片輪だけ止まったままで
その片輪が軸となり
私はグルリと同じ場所を回っていたのですね。








ひぃいいいいいいいい!!


恥ずかしいってもんじゃありません。







私は、もう片方の車輪のストッパーをOFFにして
恥ずかしさを紛らわすために
カップルに笑顔を向けながら
そのままバックでエレベーターに入りました。



そして、
エレベーターの隅っこで
邪魔にならないように乗りました。



カップルも同じエレベーターに乗りますが
なんとも言えない
気まずい空気が漂います。





弟が、ボソッと
「さっき、すげえダサかったな。」
と言ってきました。





私は
「エレベーターでは静かに!」
とお兄ちゃんとして注意しました。








ちなみに、無事引っ越しを終えましたが
新居から見える夜景は
想像していたような
きらびやかな夜景ではなく
点々と少しだけ光る寂しい夜景でした。

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