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「ストップ・メイキング・センス」と言われているのに、面白さの理由を考えてしまう愚かさよ

先日観たデイヴィッド・バーンの新作「アメリカンユートピア」は手軽に語り尽くせないほどの傑作だった。
興味深かったのが、想像以上に「ストップ・メイキング・センス」との関連が強かったことだ。
D・バーンは、かつてトーキング・ヘッズのリーダーだったので当然と言えば当然のことだが‥
この機に改めて「ストップ・メイキング・センス」を見直してみた。

やっぱり傑作だった。30年以上経っても、最高のロックライブ映画であることに変わりはない。

古いデータで恐縮だが、英Total Film誌が2012年に、史上最高のコンサート映画50本を発表している。上位10本は以下の通りだ。
1位が「ストップ・メイキング・センス」だ。
客観的に見ても傑作だったことが分かる。

1.「ストップ・メイキング・センス」(84)トーキング・ヘッズ
2.「ラスト・ワルツ」(78)ザ・バンド
3.「ローリング・ストーンズ・イン・ギミー・シェルター」(71)
4.「ウッドストック」(70)
5.「ビースティ・ボーイズ 撮られっぱなし天国」(06)
6.「ドント・ルック・バック」(67)ボブ・ディラン
7.「Meeting People is Easy」(98)レディオヘッド
8.「モンタレー・ポップ フェスティバル’67」(67)
9.「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(99)
10.「真夏の夜のジャズ」(60)

「ストップ・メイキング・センス」が映画として素晴らしい点は、
①映画になることを意識してステージが構成されている
②出演者全員の骨身を惜しまないダンスパフォーマンス
③観客のカットを入れずにステージ上の描写に専念したこと
④ステージ上の人物を際立たせるために、背景をシンプルに見せた演出
⑤監督ジョナサン・デミのキャラクター描写が秀逸
 ※後の傑作「羊たちの沈黙」のレクター博士につながる、サイコパスな雰囲気のD・バーンがどんどん魅力的に見えてくるところなど

ステージの素晴らしさに加えて、映画としての完成度も高かったことが、今回見直してみて実感できた。
J・デミが生きていたら、彼に監督を依頼したかったのでは。

しかし、今回、スパイク・リーの映像演出も見事だった。
「ストップ・メイキング・センス」を上回る傑作になった。
J・デミが見ても納得の出来だったのではないだろうか。

「ストップ・メイキング・センス」。
日本語にすると「意味づけをするな!」となるらしい。
だとしたら、この映画がなぜ素晴らしいかを考えることくらい野暮なことはないな。

無心に見ても素晴らしいことに変わりはない。
時代が変わってもこのピュアな面白さは色あせないだろう。
チャップリンやキートンの無声映画のように。
※最近、彼らの映画を見たせいか、D・バーンの動きがそんな風に見える。


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