「ラストナイト・イン・ソーホー」から「星の王子さま」へ。映画迷路。

年末に「ラストナイト・イン・ソーホー」という映画を観た。監督のエドガー・ライトは、作中に過去の映画作品をたくさん引用する作風で有名。
今回も60年代イギリス映画、イタリア映画が引用されていて、私のような老人映画ファンも楽しめた。
ご親切にも、監督がこの作品に影響を与えた作品リストを公開している。

映画リミックス時代

ネット配信の影響だなと思った。
今はネットで新作から無声映画まで、かなりマニアックな作品でもすぐに見られる。作品をより深く理解するために、こんなリストがあると確かに便利だ。
私も家にたまたまあったDVDとかで関連作をいくつかチェックできた。

エドガー・ライトは1974年生まれなので、ビデオ世代と言えるだろう。
1950年までの劇場オンリー世代、60年代までのテレビ世代を経て、70年代以降の生まれの人はビデオ世代になる。
何が違うかというと、時代を超越して自由に映画を見られる環境になったことだ。テレビでも古い映画は放映しているが、自由に選べるわけではない。偶然に頼るしかないので、そういう点では劇場しかなかった世代とあまり変わらない。
それが今はネット配信に進化した。選べるというより、選べないくらい膨大なコンテンツを前に呆然とする、というのが1956年生まれの実感だ。

新作を見るのに、過去作の知識(教養?)がないと正しく理解できない、なんて言われたら、これはえらいことだな。
映画も文学のようになっていくのか?

映画迷路の先に

一方で「ラストナイト‥」をきっかけに違う方向に興味が向かって、見た映画がある。
「星の王子さま」(1974年)だ。

なぜ「星の王子さま」なのかというと、「ラストナイト‥」の冒頭場面に「スィート・チャリティ」のポスターが貼ってあった。
見てないなと思って検索したら、この映画の監督がボブ・フォッシーだった。振付師として監督として傑作を連発したB・フォッシーの映画処女作。で、そのフォッシーがダンサーとして出演したのが、ミュージカル映画の巨匠スタンリー・ドーネンの「星の王子さま」というつながりだ。

ボブ・フォッシーのスネイクダンス

ネットで映画を検索していると次々に関連作へと横流れしていって、思わぬ(忘れていた)作品に出合えたりする。
この検索の連鎖に、自分の映画に対するコンテクスト(文脈)がある。
「雨に唄えば」「パリの恋人」「シャレード」など、
子ども時代にテレビで見て大好きだった映画の監督が晩年につくった映画に、次世代の巨匠が出演している、というつながりを思い出させてくれたのだ。

膨大なコンテンツジャングルの奥の細道は、自分なりの方向感覚で進んでいくしかない。

パリの恋人


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