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冬の影

電灯に映し出された冬の影は
とこかぼんやりとして、儚げで、寂しげで
頼りなげに揺れている。
アスファルトにうごめく誰彼の様々な感情。
俺は右手を上げてみる。
右手の影は俺の右手じゃないみたいに動く。
左手を上げてみる。
左手の影は俺の左手じゃないみたいに跳ねる。
風の冷たさに震えるわけでも、泣くわけでもなく、影は影としてアスファルトの上を漂う。
影をじっと見つめる。無くなりそうな両手をコートのポケットに突っ込んで。
やがて影は足元からゆっくりと離れ、ゆっくりと起き上がり、ゆっくりと一人で歩いてゆく。
俺は影の分だけ身軽になって冬の街を歩いてゆく。
ポケットの中で右手と左手を交互に確かめながら。
気がつくと新しい影が街灯の光に照らされていた。

冷たい風にさらされると自分が間違えていた事を否応なしに思い知らされる。
どこから、どうして。
多分最初から。

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