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帯広生活の終わり
帯広を離れることに決めた。来月には北海道を去る予定。
2023年2月に移住、それからほぼ丸2年の帯広生活となった。
最も仲の良い友人が北海道の札幌近郊に15年程住んでおり、彼に会いにかれこれ10回以上は遊びに来ていた。当時東京に住んでいた私にとって、2LDK50000円弱、札幌まで車で30分、道路も広く運転しやすい、夜は静か等、暮らしの違いに驚き、また魅力的に見えた。彼が居なければおそらく移住はしていなかったと思われる。
夏が嫌いで冬が好き、という安易な思いもあって北海道に来たが、夏は想像以上に暑く、冬は想像以上に寒かった。特に冬は命の危険を感じた。朝晩はとてつもなく寒いし、除雪は過酷である。北海道に住めば人間的にたくましくなれるのではないだろうか。
CAの友人が千歳に配属になったことがあった。生活が辛い、すぐにでも離れたいと語っていた彼女の話に当時は全く共感出来なかったのだが、実際に住んでみてその気持ちがようやく分かった。新卒早々、縁もゆかりも無く、車の運転も満足に出来ない状態で千歳に住むことになったら相当しんどいと思う。
帯広の暮らしに関しては、期待を大きく上回ることも下回ることもなく、概ね想像通りの生活を送ることが出来た。車で生活する分には不自由しないし、今の時代amazonでなんでも手に入る。
ただ退屈ではあった。行くところが本当に無い。最大の本屋は岡書、ショッピングモールや百貨店等は無い。街歩きしようにも駅前は飲み屋しか無いので散歩する気になれない。私は雄大な自然に元気をもらえる等といった性分でも無く、本当に出掛けるところが無かった。主にスタバしか行っていないし、今もスタバでこれを書いている。この店には感謝しかない。
また、住環境についてもストレスがあった。帯広は都市ガスの選択肢が非常に少ない。私の物件は新築、3階最上階、南向きの日当たり、角部屋とほぼ問題無い条件だったが、プロパンガスだった。そこだけ目を瞑るしか無いと思い入居を決めたが、エアコンは寒冷地仕様ではなく冬季は使用不可、契約上は灯油暖房器具類の持ち込み禁止という物件で、暖房は備え付けのプロパンガスファンヒーターしか無く、冬場のガス代は20000円を超えた。ひとり暮らしのガス代だけで、である。しかもそんなに高い温度に設定していない。常にヒートテックを着込み、ウルトラライトダウンを部屋着にしている。水道・電気代も東京や京都に住んでいた頃と比べても妙に高い。北海道の文化として会社から暖房費というものが支給されるが、冬の光熱費を賄える程の金額にはならない(貰えるだけ有難いけども)。結果的には家賃が安くても思ったより恩恵は少なく、満足度は低かった。
部屋のレパートリーも少ない。引っ越そうにも似たような部屋ばかりなのである。面白くない。
なんで普段の生活でこんなにストレスを感じなければならないのだろう、本州で住めば済む話なのか…という気持ちが強くなってしまった。
食事に関しては正直なところ語れる程のことをしなかった。帯広ならでは、みたいなものを満喫したとはとても言えない。北海道地場の回転寿司チェーンは美味しいとは思う。帯広にトリトンは無いが、他にも3つくらい選択肢がある。カレーのインデアンも美味しい。
しかし総合的に考えるとやはり都心部の選択肢には敵わないと思う。
仕事に関しては得意先・同僚にも恵まれ、有難い環境だったと思っている。細かいところで気になるところはあったが、概ね大変良くしていただいた。普通、県外から突然40手前のおっさんが飛び込んで来てもこんなに良くしてもらえない。慢性的に人が足りていない状況の中、退職を告げるのは非常に申し訳ないが、こればかりは仕方無い。
営業職としてなんとかやっていけると思えた反面、自信が無くなったこともたくさんあった。社会人として欠けている、至らない点を自覚する日々だった。仕事が変わる度に考え方や価値観が変わり、新たな発見がある。年齢やキャリアは関係無いと改めて思い知らされている。
勤めている会社は北海道の企業で、道内の主要都市各種への異動しか選択肢が無い。札幌に住める可能性もあるが、帯広は北海道でもかなり積雪が少ない地域と言われており、逆に札幌はどちらかというと雪が多い場所である。帯広で雪に辟易しているのに、札幌で更に苦労することを想像すると、仮に札幌に異動となっても素直に喜べない気持ちすらあった。もし札幌で暮らしていたら…といったことを考えなくもないが、それでもおそらく永住には至らなかったと思う。
そもそも帯広への移住に関して、「楽をして生きたい」というコンセプトを持っていた。なんとなく、田舎であれば生活も仕事もゆったり出来るかも…と考えていたが、生活はともかく、仕事は忙しかった。帯広に来てようやく私は「世の中に楽な仕事は無いのかもしれない」と実感した。当たり前なのかもしれないが、40手前にして自分の中で実体験として納得した。
なので、どうせしんどいなら改めて環境を変え、腹を括って仕事をしようと考えている。
とはいえ、これらは北海道に住んでみなければわからなかったことである。なんとなくではあったが、憧れていた北海道への移住を形にしたこと、そしてこの2年間にとても納得している。
納得は全てに優先する。