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殻を破るきっかけ

500日のサマーという映画がある。
天真爛漫な女性サマーに一目ぼれした青年トムの、500日の恋愛物語である。


今でも覚えているが、新潟に住んでいた当時、出張先の長野のホテルでパッとテレビを点けたらたまたまこれがやっていた。主演男優に見覚えがあった。ダークナイトライジングで警官役をしていたジョゼフ・ゴードン=レヴィットだった(インセプションにも出演。ノーラン映画でよく見かける俳優さんですね)
あ、この人観たことあるやん、というくらいの感じでチャンネルを止めたが、オープニングのトムとサマーの生い立ちをフィルム調で表現するというその演出とBGMだけで泣けてしまい、すっかり釘付けになってしまった。


この映画、恋愛ものとして結構話題になる。そして極端に賛否が分かれがちである。争点となるのはサマーに共感出来るかという点で、サマーが可愛いと思える人はこの映画が好きだし、あんな女信じられないと思う人は嫌いである。怒り、憎んですらいる人もいるかもしれない。トラウマになっている友人も居た笑。(ちなみに私は、サマーのような女性に惹かれてしまうのはものすごく共感出来るけど、当事者はたまったもんじゃないよな、と思っている)

私はこの映画がかなり好きで、サマーがどうというよりは、トムが成長する映画として非常に感情移入している。やりたいことや夢があったはずなのに目を背け、なんとなく就職をして、なんとなく仕事をこなしている日常の最中、目の前にふらっと現れた天真爛漫な女性とたまたま馬が合い、心を奪われ、影響される。振り回される。そしてわけのわからないまま飽きられてしまい、気づいたらふられている。ふられているのにまだ自分に都合の良い妄想や解釈を続け、どん底まで落ちる。


そのまま終わったら何の共感も無いラブコメだが、この映画の本質はそこからの彼の再生だと思っている。
今でも元気が無い時、ラスト手前15分程度のシーンだけだが、何度も観る。即座にサウンドトラックも購入した。USを聴くだけで泣けるし、vagabondを聴くと胸が熱くなる。ジョゼフが唄うhere comes your manも大好きだ。だから好きな映画の話題になると結構早めに挙げるが、この映画の世間一般的な評価がサマーの賛否に集中してしまいがちなことを残念に思っている。


これはトムの成長と再生の物語である。もちろんタイトルにもなっている通りサマーが中心であり、サマーのインパクトが強烈すぎて興味関心感想がそこに集中してしまうのも当然なのだが、サマーはあくまでトムが殻を破るきっかけだった、ぐらいの見方にすると、またこの映画の楽しみ方が変わってくるのではないだろうか。
だからあえて言う。観て欲しい。
そして一緒にトムを好きになりませんか。


私はこの映画きっかけでジョゼフが好きになり、彼の映画を追いかけることになった。2016年、ザ・ウォークというノンフィクション作品を、日本一巨大なイオンモールと名高い越谷レイクタウンのレイトショーに観に行くことになるのだが、映画開始1時間前にたまたま立ち寄った金子眼鏡という眼鏡屋さんで綺麗な店員のおねーさんと出会い、それから京都に戻るまでの5年間、あらゆる面でお世話になることになった。
本当に分からないものだと思う。

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