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若者のすべて

好きなアーティストは、と聞かれると少し困る。昔ほど音楽に熱中出来ず、語れるものが無いからである。学生の頃はどこに出かけるにも必ずMDウォークマンやiPod nano(自分で書いといて何だが懐かしすぎる)を持っていき、常に何かしら聴いていたのに、今はラジオの方が聴いている事が多いくらいになってしまった。
過去、最も熱中していたのはバンプ。他にはナンバーガール、イエモン、YUKIなど。一番長くコピバンをやっていたのはミッシェルガンエレファント。最近のは全く分からないし、分かろうともしていないのが一番まずい。歳を取ったよなと思う。オードリー繋がりでCreepy Nutsは絶対に好きになった方が楽しめるんだろうなと思って聴いてみたが、全然はまれなかった。


くるりも結構好きで、最も仲の良いといえる友人に大学の頃勧められて以来、細々と聴いている。その友人と、京都音博に行ってきた。


今年の1月、前職の同僚と長時間電話をして、いよいよ来月オードリーのオールナイトニッポンin東京ドームやなあと意気投合し、風呂に入り、テンションが高くなっていた私は、23時を過ぎていたがマックに出かけようと思い立った。
深夜のマックで好きなように食べる。30代後半のおっさんにとっては禁断ともいえる行為に半笑いになりながら、寝巻きの上にダウンジャケットを羽織り、車に乗り込む。
1月の帯広なのでとてつもなく寒いのだが、風呂に入りダウンジャケットを着こんでいる私は、ぽかぽかだった。
そのぽかぽか感が、過去の記憶をフラッシュバックさせる。学生の時に度々友人とスーパー銭湯に行っていたのだが、長時間風呂に浸かりぽかぽかになった身体のまま車で帰宅する、その感覚が強烈に蘇った。


実はその友人も北海道在中である。彼は数年前に結婚し子供も小学生になっているため、昔のように連れまわすことに気が引けていたのだが、一度誘ってみたところ普通に来てくれた。そして昔と同じように銭湯で2時間くらい話し込み、風呂上がりにコーヒー牛乳やコーラを飲み、餃子の王将で天津飯を食べて帰るといったことが全く違和感無く出来てしまい、とても嬉しかった。それから月に一回くらいのペースで行くようになっている。11月の三連休も行く予定。


おっさんになり、様々なことに興味を失い、感情を忘れ、日常に忙殺されがちな中、せめてやりたいと思いついたことは躊躇わずやりたい、好きなようにしたいよな、という話から、くるりのライブが観たい、京都音博に行こうという流れになった。
北海道からの参加となると、それなりに骨の折れるスケジュールである。だがえらく意気投合し、チケットを取るためだけにファンクラブに入り、飛行機の格安セール情報を抜け目なくチェックした。いっそ伊丹空港から京都までレンタカーで行ってしまおうと盛り上がる。6月にツアーで小樽と帯広に来たライブにもそれぞれ参戦し、ツアーTシャツを荷物に忍ばせ、当日を迎えた。


京都出身だが私も彼も音博の参加は初めて。梅小路公園でライブを観るというのも初めてだったが、非常に良かった。良かったとしか言えないが、良かった。
もちろんくるりも良かったのだが、フジファブリックが最高に良かった。彼らのことはほぼ知らないも同然で、若者のすべてくらいしか曲を知らなかったのだが、活動休止の知らせが音楽界隈とファンの間で相当なショックになっているらしい雰囲気は感じ取っていた。
京都タワーをバックに、夕暮れの中で若者のすべてを演奏し、終わっていくその時間が最も感極まり、泣いた。最後のあのギターのフレーズ一音一音が消えていくのが本当に惜しかった。
次の日、ライブのセトリ曲を聴きながら、彼らの経緯やエピソードを追い、また泣いた。リアルタイムで聴けなかったことを後悔するアーティストがまたひとつ生まれてしまった。ナンバガもミッシェルも追いかけるようになったのは解散後である。


活動休止まで時間が無い。
もう一度聴きたい。ライブを観たい。札幌に来てくれないだろうか。


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