プロポーズ大作戦(脚本のようなもの)

3部めっちゃ観てた時に作ってたやつ。2部が1番好き。多分。(4部からまだ見てないので)

これも多分ちょっと未来のお話。

プロポーズ大作戦

登場人物
すみれ
典明(のりあき、すみれの幼馴染)
ゆり(典明の母)
あやめ(すみれの母)


一般家庭のダイニングテーブルにすみれと典明、その向かいにゆりが座っている。
お茶セット的なものがある。


すみれ  「すみません、急に押しかけて。」
ゆり  「ううん、丁度今日お仕事お休みだったし大丈夫。」
すみれ  「ペットショップですよね、みんな元気ですか?」

すみれ、終始落ち着かない様子。

ゆり     「うん、最近ね、新入りでオオアナコンダのタケシくんが入ってきたの。すごく怖い顔してるんだけど、皮膚がツヤツヤでキレイな子なの。」
すみれ  「へぇ〜!ゆりさんが担当してるんですか?」
ゆり 「ううん、やりたいって言ったんだけどなんか危ないからだめだって。」
すみれ  「ふふ、ゆりさんちょっとボーッとしてるとこありますから。」
ゆり     「そんなことないよー。」

ほのぼのとしている空間。

典明      「ごめん、すみれ時間ないんだろ、飛行機の時間。」
すみれ   「そうだけど、心の準備ってものが。」
典明 「してきたんじゃないのかよ。」
すみれ   「してきたけど!でもいざこう、改っちゃうと!改っちゃったの私だけど!」
典明      「ったく。」
すみれ   「しかたないじゃん!」

二人のやりとりを微笑ましく見ているゆり。それに気づき姿勢を正す、すみれ。

すみれ  「あの、ですね、ゆりさん。」
ゆり     「はい。」
すみれ  「大事なお話なんです。」
ゆり     「はい。」
すみれ  「今更というか、改まってというのも恥ずかしいんですが。」
ゆり     「いえいえ。」

すみれ、落ち着くために深呼吸を始めるが三回目くらいで良い匂いがしてることに気がつく。

すみれ  「その…今日の晩御飯カレーですか?」
ゆり     「そうなの!カレーって匂いで分かっちゃうわよね。」
すみれ  「めちゃくちゃ良い匂いです!」
ゆり     「今日は特に美味しくできそうだからすみれちゃんにも食べてほしかったんだけど飛行機
            の時間あるのでしょう。」
すみれ  「ああ、えっと、」
ゆり     「もうちょっと煮込んだほうが良いんだけど、味見してもらおうかな。ちょっと様子見てくるね。」

ゆり、席を立ち台所がある方へ一旦捌ける。

すみれ  「はい…。」

去っていくゆりをぐっと見つめるすみれ。そして俯く。


典明      「まあ、今度はゆっくり来れば良いじゃん。」

典明、すみれの頭をポンポンしようとする。が、すみれが無意識に頭をズラしたため手を空かす。

すみれ  「はぁー。次いつ休み取れるか分かんないんだよねー。」

典明再度、すみれの頭に手を乗せようとするが上手い具合にすみれが無意識にかわす。

すみれ  「カレー…。」

典明再々度、注意深くタイミングを身図りすみれの頭に手を置こうとする。

すみれ  「!」

すみれ、無意識に典明の手をかわし、勢いよく鞄を漁り、スマホを取り出しどこかへ電話をかける。

すみれ(ワントーン高いよそ行きの声)  「あっお疲れ様ですぅー。はいー今実家で。はいー。  で、ちょっとご相談なんですけど、はいー。今空港に向かうところだったんですどー、車が鹿とぶつかっちゃって!はい、鹿、エゾシカですー。はい、ありがとうございますー身体はなんともないんですけどねー、ちょっと車がほんと、エゾシカなんで、鹿はあの、森に帰って行ったんですけど、ええ、野生すごいですよね、はい、車が色々あってですね、今日帰れなさそうなんですよー、はい。」

典明、己の手とすみれの頭を交互に見つつ頭に手を置くことを諦める。

すみれ  「で、明日の会議ちょっと最悪リモートで参加できないかなーと。はいー。いやですねぇ          さすがにネットは繋がってますよーははは。はいー、進行ですね、そろそろ鈴木に経験させようかなと思ってたんでーはいー丁度良いかとーはいーすみません、はいはいー失礼しますーはいー。」

電話を切るすみれ。

すみれ  「ふぅ。」

スマホを操作。鈴木にライン的なものを送っている。

すみれ  「ごめーん、あとよろ。バターサンド倍で買ってくる。と。」
典明     「なんか色々無理あるだろ。」
すみれ  「本州の人間なんてちょっと壮大な自然なこと言ってれば基本信じるんだよ。」
典明     「未開の地かよ…。」

ゆり、台所から戻ってくる。

ゆり     「鹿がどうかしたの?」
すみれ  「あ、いえ、なんか鹿肉食べたことないなーって。」
ゆり     「あらそうなの!鹿肉って鉄分豊富でいいのよー。今度手に入れたら送ってあげるね。」
すみれ  「ありがとうございます。あ!ゆりさん!私今日ご飯食べていけます!」
ゆり     「あらーそうなのーよかったー。」
すみれ  「なんか会議無くなっちゃって!ラッキーです。」
典明     「無くしたんだろ。」
すみれ  「黙れ。」
ゆり     「ふふ。それじゃあすみれちゃん一家もうちで食べましょうよ。」
すみれ  「ああ、そうですね、あとでお母さんとおばあちゃん呼んできます。お父さん確か出張でいないんで。」
ゆり     「うん、ありがとう。」
すみれ  「いえいえこちらこそ、ゆりさんの手料理食べられるの嬉しいです。もう毎日食べたい…。」

すみれ、そう言ってしばし考え込む。

典明     「すみれ?」
ゆり     「すみれちゃん?」

すみれ  「そうです、私、大事な話があって来たんです。」
ゆり     「そうだったわね、なあに?」
すみれ  「あの、ですね、ゆりさん。」
ゆり     「はい。」
すみれ  「大事なお話なんです。」
ゆり     「はい。」

すみれ  「毎日…味噌汁…。」

すみれ、ぶつぶつ、味噌汁などと呟きながら肩を上げ下げしたり首を回したり。温まってきた気がして深呼吸を二回した後、意を決して喋る。

すみれ  「私と結婚してください。」

ぴちょん、と台所の蛇口から水滴が落ちる音がするような気がする。

典明     「は?」
すみれ  「私、と、結婚、して、ください!」
典明 「いや、聞こえなかったとかじゃなくて。」

かばんを探り、通帳を取り出すすみれ。勢いよく広げてゆりに見せつける。

すみれ  「お金ならあります!銀行から一戸建て建てられるローンも組めるくらいの社会的地位も築きました!ゆりさんが百歳まで生きるとして、いや、永遠に健康に生きて欲しいんですが、もしもの時のための資金も稼げます!個人投資とかもしてます!本当は十八歳になった瞬間に結婚を申し込みたかったけど、先立つものがないと不安かなと思って、だいぶ時間かかってしまったんですけど、出張の時にクオカード付きのプラン選んだりコツコツ貯めてきました!」
ゆり     「まあー。」
典明 「ただただせこい…。」
すみれ  「黙れ。」
典明     「まず色々と状況を読み込めない。」
すみれ  「お前の母親に結婚を申し込んでいる。」
典明     「幼馴染が俺の母親に結婚を申し込んでいるってどういうことだよ。」
すみれ  「何?そんな珍しいことじゃないでしょ、ペタジーニだってそうじゃん!」
典明     「そうだけど、その例えはどうなんだろう!」
ゆり     「そういえばすみれちゃん野球部だったわねぇ。」
すみれ  「覚えててくれたんですか!そうです、ペタジーニに秘訣を聞こうと思って!」
典明     「そんな理由で入部してたの?てっきり俺と同じ部活が良いのかと…。」
すみれ  「なんでよ。まぁよくよく考えたら野球選手にならなくてもペタジーニには会えるかなって。」
ゆり     「会えたの?」
すみれ  「はい!昨日道端でばったり!で、その、私も友人の母にプロポーズしますって言ったら頑張れって!で、思い立って今日来ちゃいました。」
ゆり     「わぁーすごいわねえ!」
すみれ  「へへ、はい。」

デレデレするすみれ。

すみれ  「ゆりさんと二人っきりだと緊張しちゃうし、暴走しちゃいそうだったから典明に立会いを頼んだ。」
典明     「大事な話があるから母さんと家で待ってて、とかしか聞いてないんだけど?」
すみれ  「お前口軽いし私が言う前にバラされたら台無しじゃん。」
典明     「俺はてっきり俺との結婚を母さんに報告するのかと。」

盛大な静寂。

すみれ  「え、きもい。」
典明     「え。」
ゆり     「きもいわ。」
典明     「母さんまで!」
すみれ  「え、だって、付き合ってすらいないじゃん?」
ゆり     「そうよねえ。」

動揺しまくる典明。

典明     「えっお前、始終家に来るし、しょっちゅう遊びに行くじゃん!ディズニーとか」
すみれ  「ゆりさん目当てに決まってるだろうが!」
ゆり     「まあ。」
すみれ  「あ!いや、そんな、純粋にあの、ダッフィーに会いたいなあとか、その。」
ゆり     「ふふっ。」
典明     「いやなんかいい感じにならないで?あとダッフィーはランドにいないし。シーだけだから。」
すみれ  「え、嘘。」
ゆり     「うそー。」
典明     「嘘じゃないかないから!」
ゆり     「ディズニーランド行く度にこっそり探しちゃってたわ。黄色いのはイマイチだし。」
すみれ  「そうなんですか!典明なんで言わないんだよ。」
典明     「いや知らなかったし!お前もなんでランドしか行かないんだよ。」
すみれ  「…シーは、付き合う前に行くと付き合えないって鈴木が言ってたから!だからゆりさんと結婚してから改めて行こうと。」
典明     「そんなの噂でも聞いたことないわ。」
すみれ  「まじで?くっそ鈴木、お土産にジンギスカンキャラメル追加してやるわ!」
典明     「パワハラで訴えられるぞそのうち。」

すみれ、典明を睨み付ける。

すみれ  「てかさ、典明はずっと付き合ってるとおもってたわけ?」
典明     「急に話題を蒸し返すな…。」
すみれ  「どうなん?」
典明     「そう…ですね…。」
すみれ  「うわぁ。」

少しずつ椅子を後ろに下げていくすみれとゆり。

ゆり     「デートにお母さん同伴な時点でおかしいと思わない?」
典明     「もう家族ぐるみな付き合いかなって…。」
すみれ  「好きともなんとも言ってないのに?」
ゆり     「典明一度お医者さんに診てもらう?結構、やばいわよ。」
典明     「や、やめて。」
すみれ  「典明には悪いけど、私が生涯愛してるのはゆりさんだけ。」
ゆり     「まあ。」
すみれ  「優しくて可愛らしくて、料理苦手なうちのお母さんの代わりに毎日美味しいお弁当作ってくれて、辛いときには癒してくれて、あとおっぱい大きいところとか。色々もう全てが好きです、」
典明     「めちゃくちゃ下心出てるぞ。」
すみれ  「旦那さんが、エジプトでなんかの調査隊になり音信不通になってからもずっと帰りを待ってる一途なところに、支えになりたいって幼心に思いました。」

カバンから婚姻届を取り出し、賞状を渡すようにゆりに見せるすみれ。

すみれ  「ずっと幸せにします!私と結婚してください!」

少しの静寂。すみれが婚姻届を握り締める音だけが聞こえる。

突如、ドアの開く音と共にあやめの第一声。

あやめ  「断る!」
すみれ  「お母さん⁉︎」
ゆり     「あやめちゃん。」
あやめ  「カレーの良い匂いがすると思って来てみたら。」

ズカズカとテーブルまでやってきて勢いよくテーブルを叩くあやめ。

あやめ  「断ってゆりちゃん。」
すみれ  「お母さんには関係ないでしょ!今時親の意見とかないよ!」
あやめ  「ないわよ。結婚したいなら典明くんとでもカピバラでも勝手にしなさい。」
典明     「カピバラ。」
ゆり     「あやめちゃん!」
あやめ  「ごめん、ゆりちゃんの子なのに。」
ゆり     「ううん、カピバラってすっごくデリケートなの。食事も一日三キロくらい食べるし、広い敷地と水辺も必要になるから大変よ。典明はそこまで大変じゃないと思うの。」
典明     「フォローされてるの?」
あやめ  「(典明の発言は無視)そうね…でもカピバラはめっちゃ可愛いわ。」
すみれ  「確かに。」
ゆり     「確かに。」
あやめ  「すみれ、カピバラと結婚しなさい。」
すみれ  「嫌だ!私はゆりさんと結婚したい!」
あやめ  「ゆりちゃんと結婚するのは私なの!」
すみれ  「お母さん!」
あやめ  「引っ越しでお隣さんになって最初に挨拶した時、一目惚れしたのよ。」
ゆり     「まあ。」
あやめ  「エプロン姿でお玉片手に『これからよろしくお願いしますね。』って。」
ゆり     「懐かしいわねえ。」
あやめ  「天使って存在するんだって思ったわ。」
すみれ  「まって、羨ましい、まって、お父さんはどうするの。」
あやめ  「お父さんはとても良い奴だから一緒に暮らしても苦じゃないけど、残りの人生はゆりちゃんと過ごしたい。お父さんとは離婚するわ。お母さんもそこそこ貯蓄あるから慰謝料とか払っても良いし。」
すみれ  「お父さん…。」

あやめ、ゆりの肩を掴んで自分の方に身体を向けさせる。

ゆり    「あやめちゃん。」
あやめ 「初めて会った時からずっと好きです。料理嫌いなのもあるけど、私もゆりちゃんのお弁当食べたくてすみれのお弁当作りお願いしてました。」
すみれ 「お母さん在宅なのにお弁当作ってもらってたの?」
あやめ 「在宅だって大変なのよ。優しくて可愛らしくて料理が上手くて、健気であとおっぱい大きくて、」
典明    「遺伝なのかな?」
あやめ 「もう全部、ゆりちゃんが好きです。今後の人生、一緒に歩んでください。」

少しの間。ゆり、あやめの手をとり握る。そしてゆっくり離す。

ゆり     「ごめんなさい。私、大事な人がいて。」
典明     「父さんのことが…。」
ゆり     「ううん、父さんのことはもう気持ちの整理ついてる。」
典明     「父さん…。」
ゆり     「私、あやめちゃんのお母さん、つまりすみれちゃんのおばあさんが、好きなの!」
典明     「ええええ。」
ゆり     「言うつもりなんてなかったわ、側にいるだけで良かったの。そのために薬膳コーディネーターの資格とか色々取ったし。」
あやめ  「どうりで…雑がみのゴミにユーキャンの封筒がいっぱい捨てられてたわけだわ。」
ゆり     「あやめちゃんのお母さん、つまりすみれちゃんのおばあさん、そう、かおりさんはお元気ですけど、ずっと永遠に健康でいてほしいから。」
あやめ  「もしかしてゆりちゃんが毎日お弁当持ってきてくれるのって。」
ゆり     「かおりさんに食べてもらいたいから…。」
あやめ  「そう…。」
ゆり     「今日も色々なお肉使ったり試作してみて、美味しいカレーできたし、今度は滋養強壮に
効果あるとされてるヘビを使ったものを作りたいと思ってるわ!」
すみれ  「すごい熱意…そこまでおばあちゃんのこと…。」
典明     「え、まって、オオアナコンダのタケシくん。」
あやめ  「お母さん、ジビエ料理好きだものね…。」
典明     「え、ダッフィー探してたのって熊肉?」
ゆり     「気立が良くって、頼り甲斐があって、あの人が行方不明になってからしばらくして死亡
届け出そうかって言ってくれたのもかおりさんだったわ。『何かあったら私がいるから』って。それから何かある度に相談に乗ってくれて、いつの間にか好きになってた。かおりさんに似てるあやめちゃんとすみれちゃんに言い寄られて満更でもなかったわ。」
典明     「うっかり本音漏れるのなんなの。」
ゆり     「でも今日二人がこうしてはっきり気持ちを伝えてくれた。それで勇気をもらえたの。私、かおりさんに思いを伝えるわ!」

ゆり、立ち上がり玄関から出て行く。

典明     「母さん!」
あやめ  「ゆりちゃん!」
すみれ  「ゆりさん!おばあちゃん死んだら私と結婚してくれますか!」

ゆりを追って出ていくあやめとすみれ。置いていかれる典明。
そういえばカレーの鍋が火にかけっぱなしじゃないかと思いチラッと台所を見るが、少し疲れたので椅子に座りテーブルの上のお茶を飲む。

典明     「ぬるい…。」


おわり

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