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1. インハウス就活の特殊性

今回は,インハウス就活の特殊性について書きます。
この記事でインハウス就活に対するざっくりとしたイメージを持ってもらえたらと思います。

質問・要望等はコメント欄Twitterの質問箱にお願いします。

1.1 情報の少なさ

0. はじめにでも触れたように,インハウス就活では情報が不足しています。
弁護士就活全般に妥当する話かもしれませんが,①全体的な流れについての情報(一般的にいつどのような就活をするか)と,②個々の企業・事務所についての情報(特定の企業・事務所においてどのような流れで選考が進み,どのようなことを面接で聞かれるのか)のいずれも十分とは言えません。
通常の民間就活であれば,ONE CAREERのような就活サイトで,選考ステップやES・体験談などを見ることができますが,インハウス就活ではそうしたサイトはありません。

この連載では,①全体的な流れについての情報を中心に扱う予定ですので,参考になれば幸いです。
②個々の企業・事務所についての情報のうち,選考ステップについては,個々の企業の採用ページや,0.4 参考情報に書いたアットリーガルひまわり求人で一応確認することができます。
今後,新卒インハウスという選択肢がメジャーになれば,経験談などを投稿するサイトができるのでしょうか・・・

1.2 採用人数の少なさ

インハウス就活では,採用人数が少ないということも重要な点です。
募集要項では,「若干名」と書かれていることも多いですが,私の見聞きした範囲では,1年間の採用人数は,1社あたり0〜3人であることが多いと思います。特に,1〜2人が多い印象です。

そのため,新卒インハウスがメジャーとは言えない現在であっても,人気のある企業では,それなりに倍率は高いと思います。ただし,「インハウスであればどこでも良い」というスタンスであれば,よほどのことがない限り,就職できるのではないかと思います。

また,企業側からすれば,採用人数が少ないということは,内定を辞退されたくないということでもあります。「この2人に内定を出そう!」と決めて他の就活生を断ったにもかかわらず,その合格者から「他社に就職するので内定を辞退します」と言われると,採用人数が1人や0人になってしまい,人材確保が困難になります。これを避けるため,企業側は,面接で任官志望の有無を聞くのに加え,内定を出す際に,その就活生に対して,内定を受諾するか(他社の内定を辞退するか)ということを確認することが多いと思われます*1。
たとえば,2人を採用する予定の企業が,最終面接に進んだ6人の就活生全員を最終面接した上で,上位2人に対して先に内々定の連絡をして(残りの4人には合否連絡をせず),その2人から内定受諾の連絡があれば,残りの4人には不採用の連絡をし,その2人から内定辞退の連絡があれば,不足人数に合わせて残りの4人の中の上位の就活生に連絡して,内定を受諾するか確認し・・・というような手法をとるようなことがあるようです。
実際,私も,最終面接で「2週間以内に連絡します」と言われてその日の夕方に内々定の電話がかかってきたこともありましたし,「3週間以内に連絡します」と言われて3週間くらい経ってからようやくお祈りメールをもらったこともありました。
このように,選考が進んでいくと,1人1人について個別に採用プロセスが進むことが多いように思います。

採用人数が少ないことの弊害としては,インハウス就活経験者が,特定を恐れて,具体的な体験談を発信しづらいことが挙げられると思います。普通の民間就活であれば,大企業は何百人に内定を出すので,ONE CAREERのような就活サイトに情報を提供しやすいですが,インハウス就活はそもそも就活生の数が少なく,特定の企業から内定が出る就活生はもっと少ないため,簡単に特定されてしまうおそれがあるからです。

1.3 採用企業の少なさ

当たり前のことですが,新卒インハウスを募集している企業は,通常の新卒採用をしている企業に比べて非常に少ないです。興味のある業界がある場合であっても,その業界で新卒インハウスを募集している企業はほとんどないということもよくあると思います。ただし,逆に,新卒インハウスしか採用していない(=中途採用していない企業や業界もあるので注意してください。

したがって,「絶対に進みたい業界があり,その業界では新卒採用が盛んである」という場合を除き,業界は絞りすぎない方が良いと思います。しかし,そうは言っても,面接で他社の選考状況は聞かれるので,脈絡なく受けるのは好ましくないと思われるので,ある程度の一貫性は必要かと思います。

では,インハウス一本で就活に臨む場合,何社受けるのが普通なのでしょうか。
前回書いたとおり,私は4社を受けましたが,これは少ない方だと思います。
ある企業の説明会では,新卒インハウスで入社された弁護士の先生が,インハウス一本で,6社くらい受けていたとおっしゃっていました。特に多いとも少ないともおっしゃっていなかったので,これくらいが平均的な数なのでしょうか。
これを聞いて,「少なくない?」と思われた方も多いかと思いますが,インハウス就活の時期は,司法修習の時期と被るため*2,たくさん受けすぎると,非常にハードな時期を過ごすことになると思います。就活の時期については,2. インハウス就活の流れで触れる予定です。

1.4 民間就活と事務所就活の間

インハウス就活は,民間就活でありながら,弁護士の就活でもあるという特徴があります。弁護士として入社するということが就活の時点でも大きく意味を持ちます。

まずは,初期配属が決まっているという点です。多くの企業では,新卒インハウスとして入社する場合,入社後数年は法務関連の部署(法務部*3など)に配属されることが内定の時点で決まっています。それゆえ,企業としては,単に「うちに馴染むか」ということだけでなく,「うちの法務部に馴染むか」ということを確認しようとします。
こうした事情から,人事部主導の面接だけでなく,法務部主導の面接も行われることが多いです。具体的には,法務部が相応しいと思う就活生を人事部に推薦し,人事部が更に選考するという流れなどがあります。私の受けた4社中3社は,最初からインハウスの先生方と面接しました。こういった具体的な流れは,2. インハウス就活の流れでも触れようと思います。

次は,年収がよく分からないという点です。事務所就活と同様に,月収や年収を説明会時点で明らかにしているところは少ないです。説明会の質疑応答で聞けば教えてくれるのかもしれませんが,なかなか聞きにくいと思います。
それなら,ネットで調べれば良いじゃないかと思うかもしれませんが,インハウスの給与体系は新卒と異なることが多いため,新卒何年目の年収を見ればいいのかよく分かりません。もちろん,企業ごとのインハウスの年収を明示したサイトは(ほとんど*4)ありませんし,仮にあったとしても,中途採用のインハウスも含まれていると思うので,あまり参考にならない気がします。

他方,インハウス就活も民間就活であるため,通常の民間就活のように,WEBテストがあるのが普通です。したがって,一般の就活生と同様にWEBテストの勉強をする必要があります。ただし,そうは言っても,司法試験合格者なので,基準点を割り込むことはほとんどないと聞いたことがあります。

1.5 今回の情報の確認方法

今回紹介した情報のうち,採用人数については,企業の採用ページや,ひまわり求人で確認できます。ただ,「若干名」と書かれていることも多いので,説明会で具体的な人数を聞くのも良いと思います。
採用企業の数についても,ひまわり求人で確認できます。ただ,企業の採用ページでのみ募集要項を載せている企業もあるので,興味がある企業が新卒インハウスを採用しているかについては,ひまわり求人だけでなく企業の採用ページも見てみると良いと思います。

エントリー数については,三会合同説明会で弁護士の先生に聞いて確認するのがおすすめです三会合同説明会では,1回の説明会に参加する就活生が数人であることも多く,その企業の話だけでなく,インハウス就活全般の話も聞くことができるため,色々な方に「就活していた時に何社受けたか」を聞くと,より正確な平均数が分かると思います。
初期配属やWEBテストの有無についても,説明会で確認できます。年収とは違い,多くの企業が説明会で説明すると思います。


*1 私は通常の民間就活を知らないので,民間就活一般で用いられる手法なのかもしれません。
*2 今後,司法修習の時期が変われば,エントリー数も変わってくるのかもしれません。
*3 企業によっては,「法務部」ではなく「法務部門」や「法務室」などの名前であることも多いようです。この連載では,最も一般的であると思われる「法務部」を法務関連の部署の総称として用います。
*4 少なくとも私は,個々の企業ごとのインハウスの年収に関するサイトを見たことはありません(見つけたらぜひ教えてください)。インハウス全体であればいくつかありますが,業界や企業によるところが大きいと思うので,これもあまり参考にはならない気がします。


〔更新履歴〕
2021.12.31 投稿

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