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Dialogue in the Dark
2024 年4月16日、Dialogue in the Darkを体験した。せっかくなので、何をどう体験したのか、を書き記しておこうかと(以下、ネタバレ満載となるので、参加してみようと思う方は読まずに参加した方がよいと思う)。
実はコロナ以前に気になっていた「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」、視覚障害者に案内してもらう真の暗闇体験。行ってみようと思っているうちにコロナ流行となり、密室&接触が必須となるこの催しは当然ながら閉鎖となってしまい、そのうち私も忘れていた。
少し前に最相葉月さんのエッセイを読んだら復活したダイアログ・イン・ザ・ダークへ参加した時のことが書いてあり、「ああ、そうだった、行きたいと思ってたんだ」と思い出して予約して参加することにした。
場所は神宮外苑のホテルの中。
1回最大8名。約90分間。受付で本人確認後、音が重要になるので耳の調子が悪くないか、体調は大丈夫か、を聞かれる。ロビーで少し待ち、その後集合。今日は8名フル人数。一緒に暗闇を旅する仲間ですからご挨拶してください、と言われ顔を見つつ「よろしくお願いします」とお互い挨拶。その後、ロッカーへ案内される。ロッカーは個室。キーを渡されて入り、音の出るものなどは置き、靴と靴下も脱いで裸足になり、ロッカーの鍵をかけて横の個室に再集合。壁際にある8脚の椅子に皆座る。床は絨毯、行灯的薄明かりのみでぼんやりした照明。
案内役の女性(アテンド)登場。明るい声で挨拶。言われなければ視覚障害を持っているとはわからない感じ。
参加者8名のうち、男性(自分含めて3名)、女性5名。女性のうち2名はかなり前に一度経験しているらしい。
「ここからはお互いニックネームで呼びたいと思いますので、それぞれニックネームを教えてください」「私(アテンド)のことは"まりっぺ"でお願いします」。
その後、参加者も順に自分のニックネームを発表する。
(9名のニックネームを一度聞いただけで覚えることの難しさ、そして容姿とニックネームを結びつけることの意味のなさ、をすぐに実感することになる)。
更に、まりっぺより簡単な説明。
・話す前に名乗ること
・自分の行動を声に出すこと(「まりっぺ、立ちます」「まりっぺ、右へ2歩動きます」など)
そして、まりっぺが行灯の灯りをゆっくりと落とし、真の闇となる。
まりっぺより、この先についての話。
「チャラチャラ」とした音を聞かされる。「なんの音だと思います?」花火?、なんかが弾ける音?など、いろいろ声が上がるがわからず。
まりっぺから、「私が先頭で進むので前の人の両肩に手を置き、列になって着いてきてください」、と。全員マイムマイム的列となって、ゆっくりすり足で進む。
足裏が絨毯から別の感触を感じる。玉砂利。さっきの「チャラチャラ」はこの音か、とわかる。ちょっと進んで全員停止。
(基本的に全ての行動をまりっぺが的確にこまめに声で指示してくれている)。
しゃがんで手で玉砂利を取ってみる。足の裏で感じる玉砂利と手の平で感じるそれは大きさや温度、質感に違いがある(手に持った方が小さく感じる、というか足の裏では細かな大きさまでは感じ取れていない気がする)。手と足で触覚の感じ方に差があることを知る。
玉砂利を持ち、上から落とす。何度も落とす。その音を皆楽しんでいる様子。(「手で触れてみましょう」「ちょっと落としてみましょう」と、まりっぺの声かけでやってみている)。
次の部屋へ移動することに。
まずは、まりっぺより説明。
ドアの大きさ、高さ、どんな扉か(茶室の入口=「にじり口」を模していて低く小さく、右から左への引き戸)。
まりっぺが一人をドアまで案内し、入り口の様子を(手で)確認してもらった後、まりっぺは先に中へ入る。その人が次の人を指名(ニックネームで)し、同様に入り口まで案内、(手で)確認してもらったあと、中へ。
という感じで8名全員、順に入る。とは言っても、他の人のニックネームよくわかっていないし、皆アタフタそわそわ。手探りでなんとか入る。
中の部屋ではまりっぺより、入った順に杖が渡される(いわゆる白杖)。持ち方、使い方を説明してもらい、それを持ってこの部屋の奥方向へ、それぞれゆっくり進む。
足裏の感触が急に変わる。草っぽかったり、石っぽかったり。突然、杖が何かにコツンと触れる。案外大き目の木が立っていて、木々の間を進んでいる様子。かすかに鳥の鳴き声が聞こえる。
奥がどこまであるのか、どんな場所なのかは全くわからない。
左側、割と先の方から水の音がする。「水があったよー」と参加者の声が案外遠くから聞こえる。「水の方へ行ってみましょう」とまりっぺ。
皆、水の方へ向かう(声が集まり、近くなっている。それぞれが今の様子を声に出しつつ進んでいる)。
大きなカメみたいな物に触れ、中に水がたまっている。
「みんなで水を囲んでみましょう」と。輪になって囲む(声の位置でそう感じる)。全員が水に触れられるところにいることをまりっぺが確認。
まずは手の平でそっと水面を触れる。うん?なんか吸い付く感じ。表面張力?
今度は手の甲でそっと触れる。吸い付かない。水の温度感も手の平と甲で違う。
なるほど。
水がポチャポチャ落ちている音がずっとしている。私の右側に何か硬いものが触れる。その硬いものから水が落ちているようだ。「それはなんですか?教えて〜」とまりっぺ。触れてみる。ツルツルな質感+節。竹だ。壁から出ている竹を通ってカメの中央あたりに水が落ちているようだ。それをなんとか言葉で皆に伝える。これで竹の近くでない人にその様子が伝えられているだろうか。
手が冷えてくる。
「みなさん、ちょっと冷えてきたかもしれませんね、じゃあ温まりましょう!」とまりっぺ。「私の声も方にきてください〜」ゆっくり移動する。
腰掛けられるくらいの横に長い段差があり、そこへ一列に座るよう指示される。
皆の声の位置から自然にある程度等間隔に並んで座っていることがわかる。
杖を右の人へ渡し、まとめて回収される。
「今から足湯をしましょう」とまりっぺ。
「お湯の準備をしてきますから、そのままちょっと待っててくださいね」
まりっぺがちょっと離れる気配。そして物音。
「足湯用の桶とお湯を回します。一人1セットなのでバケツリレーで回してください〜」
声を掛け合いながら順に桶をまわす。桶にはビニールパックにキャップがついた物(非常用やアウトドアで水入れに使うようなやつですね)に結構熱いお湯が入ってるものが置かれている。
全員に渡ったところで、桶にお湯を出す作業へ。
足を先に入れておくと温度がわからなくて危ないので足は後で入れるなど、まりっぺから注意を聞いたあとキャップを取ってお湯を桶に入れる。
まずは指でお湯に触れる。結構熱い。ゆっくり足を入れる。
やはり、指で感じる温度感と足で感じる温度感に差があることがわかる。人間の部位によって触覚に大きな差があることを実感(知識では知ってはいたことではあるかれど)。
最初は熱かった足湯もだんだんちょうど良くなって心地よい。座ったまま、ゆっくり背中側の空間を手でさぐる。平らな木の床で広い。足を湯につけたまま、ゆっくり寝そべってみる。手もゆっくり伸ばせる。(先がわからないため、全ての行動が”ゆっくり”になっている)。手を伸ばし、伸びをしてみる。心地よい。いつの間にか暗闇にも慣れ、不安なくリラックスしている。皆、そんな感じな様子。
まりっぺの声がかかり、タオルが回される。再び座って足を出し、拭く。再びバケツリレーで使った桶など全て片付け。
「ちょっと片付けてきますね」とまりっぺ、再び作業で少し離れる。
その動きの手早さに驚く。が、彼女にはこの空間はいつも暮らす空間と何も変わらないのだ(8名の暗闇初心者を安全に案内するという仕事はあるけれど)。
「今、寝転んでもらったところ、実は能舞台なんです」とまりっぺ。
「結構奥が広いので一度行ってみましょう」
それぞれ、立ち上がり、広がって後ろの方へ。皆、声を出しつつ動くから、広さとかを感じる。木の手すり(触れることで木ってわかっている)まで行く。音の響きから天井も結構高いことも感じる。
「じゃあ、みなさん、一度戻ってきて真ん中で輪になりましょう」とまりっぺ。
まりっぺの声を頼りに動き、他の人の声も確認して輪になった(つもり)で床に座る。
「輪になれましたね〜、ちょっといびつな輪ですけど」をまりっぺが笑う。
全員の声から確かに細長い輪になっているとわかる。
「では、一度両側の人と手を繋いでみましょう」とまりっぺ。
たぶん、見えてたら恥ずかしい気持ちとかあるかもだが、そんなことまったく感じないで皆手を繋ぐ。
「左右の手、どうですか?人によって手って全然違いませんか?」とまりっぺ。
大きさ、柔らかさ、温度、全然違う。
こんなに他人の手に触れ、感触を確かめることなんてなかったな、と思う。
(実は介護業務でお年寄りの手はたくさん触れているわけだけれど、触れて感じることより、目で見た観察情報に頼っていた気がする)。
「では、繋いでいる手を離して、自分の手を触ってみましょう」とまりっぺ。
改めて自分の手を(触覚で)観察する。
まりっぺ、主導で手についておしゃべり。自分の手の好きなところ、嫌いなところなどなど。
「お茶にしましょう」とまりっぺ。
また、「ちょっと用意してきますね」と離れる。
お茶の入った小さな湯のみがまわされる。
香ってみる。いい香り、知っている、ジャスミンティーだ。
飲む。おいしい。
「飲み終わった器も香ってみてください」とまりっぺ。
飲む前に嗅いだ香りとは違う。
中国茶に、香りを嗅ぐ専用の器があったな、そういえば、と思い出し発言してみる。
「そうそう、ありますよね」と同調してくれる参加者の方。
そんな会話しながらの暗闇でのお茶会。みな、リラックスして楽しんでいる声のトーン。
「今からあるものをまわします」「下から上に向かって、そっと触れてみてください」
あるものの回覧が始まる。皆、あえて何か、は言わず順にまわしている。
まわってきた。触れてみる。
茎、葉、花があることがわかる。
「中も触れてみて」「そして嗅いでみて」とまりっぺ。
おしべ&めしべ?に触れる。花の香りも嗅いでとなりへまわす。
花を見ないで鑑賞したのは初めてだな。
全員が花を鑑賞したところで、
「じゃあ、みなさん、移動しますよ。少し進むとさっき、足湯で座った段差がありますので、そこまで来てもう一度並んで座りましょう」とまりっぺ。
ゆっくり進み段差を確認して座る。
全員、
「段差、ありましたー」とか、「〇〇、座りまーす」とか声だして動いているので、周りの様子を感じられる。
全員座ったところで、
「更に移動しますから、立って左の人の肩につかまってください」「私が先頭でドアを開けて進みますね」とまりっぺ。
ゆっくり縦一列になって進み、ドアの中、別の部屋へ。
「壁際に小さな椅子が並んでいますから、それぞれ移動して座ってください」とまりっぺ。
皆座ったところで、
「ここ、どこかわかります?」とまりっぺ。
「あ、この椅子!最初の部屋?」と参加者1名。
「はーい、戻ってきました」
「では、ゆっくり明るくしますよ〜」と。
行灯の光がゆら〜っと周りを照らし出す。
まりっぺ、他8名の顔、姿が見える。不思議な連帯感。
「ちなみにさっきの花、これです。最初からここにあったんですけど」とまりっぺ。この部屋の棚に飾ってあった花だったのか。ここでようやく色を知る。
「いかがでしたか。これで終了になります。ありがとうございました」とまりっぺの挨拶。
一同、自然に拍手し、「ありがとうございました」と。
現実の現在の生活で、見えない世界を想像はできるかもしれない。
頑張って目を閉じていれば似たような感覚になるかもしれない。
が、慣れることのなり真の暗闇を体験するのは難しいし、そこでなければ感じられないこともある。
人間の(視覚以外の)感覚、というものをここまで使い(使わざるを得ない)、それを感じることができたのは本当に興味深い体験だった。
今のプログラムは5月末くらいまでの予定っぽい。内容が変わるのであれば、また体験したいとも思う。
ダイアログ・イン・ザ・サイレンス、も行ってみようかな。