悪意がなくても差別は広がる話
George Floydさんが警官に殺害されてから、世界的にBlack Lives Matterの運動が爆発的に広まっています。これを気に差別について色々考えてみたので、共有してみようと思います。
差別というと、アメリカでの黒人差別などの人種差別、医大の入試において女性が不当に不利に評価されていたなどの性差別、障害者やLGBTなどのマイノリティに対する差別などが挙げられます。これらの差別の元になっているのが偏見です。科学的根拠なく、黒人は頭が悪いとか、LGBTは気持ち悪いなどの潜在意識が差別的な行動やシステムを作り上げていくと考えられています。しかし、こうした偏見が全く無くても、マイノリティの人たちは差別被害を被ることがあります。
利き手を例に考えてみると、右利きがマジョリティで左利きがマイノリティになります。もちろん、右利きのほうが偉いわけでも、左利きのほうがすごいわけでもありません。ここで、右利き用のハサミと左利き用のハサミのどちらをどれだけ生産するかを投票で決めたいとします。右利き用のハサミだけを生産する案1と、人口比に合わせて右利きと左利き用のハサミの生産量を決める案2が出たとします。みなさんどちらに投票するでしょう?
右利きの人の視点から見ると、右利き用のハサミが大量生産されれば、その値段が下がりますから、右利き用だけが生産されるのが理想です。なので案1に投票するでしょう。左利きの人はもちろん案2に投票しますが、マイノリティなので投票の結果、右利き用だけが生産されることになります。結果、左利きの人は使いづらい右利き用ハサミを使い続けることになります。
この中で右利きの人は決して左利きに対して「偏見」持っていたわけでも、「悪意」があったわけでもありません。ただ、与えられた選択肢から最も理想的なものを選んだだけです。しかしそれでも、「差別」は発生してしまうのです。
こんな、物語は現実的じゃないと思われるかもしれませんが、現実世界を見てみても、駅の改札など明らかに左利きを「差別」した仕組みは存在しているし、実際左利きの事故率は右利きに比べて高くなっています。
このような構造の問題点は、差別に気が付きにくいことです。例えば、10万円給付の話を思い出してみると、最初は「本当に困っている人」に30万円という話だったのが、国民からの反対を受けて全員に10万円と変わりました。これはマジョリティの人々から見ると何ももらえなかったのが10万円になりましたが、「本当に困っている人」から見ると30万円が10万円に下がってしまったわけです。これは「本当に困っている人」がマイノリティで合ったから起きた「差別」だったのかもしれません。
もちろん、最初の政府案でいう「本当に困っている人」をどうやって決まるのかとか、迅速に普及することができるのかなど、問題はたくさんあったし、経済を回すという意味で考えても全員一律で10万円が良かったのではとも思いますが。
重要なことは、「何もしないと差別は起こる」ということです。私は中流階級に生まれた男性です。社会的にはマジョリティで特権階級になります。私が普通に生活することで、なんの悪意がなくとも差別が起きて苦しむ人がいるわけです。