癸卯水無月 夏至 菖蒲華の間
廿七日
仕事で東京へ。飯田橋や神楽坂が出てくる小説の話を、その近隣のビルで聞く。景色も人気も何もかも違おうが、それでも何やら格別の趣き。
帰途、ふと海が見たくなり、途中下車して横須賀の港を散歩した。海のある街に住む醍醐味だ。
廿八日
夢見が悪く、日中もなにやら心身ともに優れないまま過ごした。
蒸し暑さがこたえたのだろうか。まだ夏の一合目までも行っていないだろうに、こんなことでは先が思いやられる。
蒸す朝は ふた月分の気の疲れ
廿九日
脳がオーバーフローを起こしそうなのを自覚し、急遽休養日にするつもりがスポット依頼が入ったため結局は終日仕事をする。
これで休みは来月半ばまでなくなった。フリーランスの身にはありがたいことだが、五十路に入って疲れがパフォーマンスに直結するようになった。チューニングしつつ、乗り切らねば。
丗日
夏越の祓の日ではあるが、神社に参拝する余裕もなくひたすら仕事に励む。
形代が無聊顔する夏越かな
文月朔日
東京は四谷へ、佐々井秀嶺上人に拝礼しに行く。
コロナの影響で実に四年ぶりの来日となった上、少し前にテレビ番組で取り上がられたことで、今回はいつにも増して面会希望が多かったとの由。
まもなく卒寿のお体にもかかわらず精力的に日本中を旅して周り、多くの支援者や上人を待つ人々とお会いになったそうだ。
久しぶりに拝謁した御尊顔はますます羅漢に近づいておられた。でも、一対一でお話するときは、かぎりない温顔を見せてくださる。
仕事柄、位だけは間違いなく高僧という方々と面会したことは数あるが、自然と合掌し叩頭する気になる方にはめったにお目にかかれない。
この時代に、佐々井秀嶺上人と出会えたのは、まこと幸運なことである。
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