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沙羅双樹の花の色【1:2:0】【女性の友情/兄妹愛/ヒューマンドラマ】

沙羅双樹の花の色
作・monet

所要時間:約20分~25分

陽菜:佐倉陽菜(さくら・ひな)。15歳。高校中退。エンコ―少女。眼鏡っ子で野暮ったい印象。スカートも長い。オドオドしていて大人しいイメージ。

紗良:白沢紗良(しらさわ・さら)。15歳。高校中退。エンコ―少女。15歳とは思えないくらいの超絶美人。サラサラストレートロングヘア。「基本は」ハキハキしていて明るいイメージ。

尚弥:白沢尚弥(しらさわ・しょうや)。24歳。美容師。紗良の兄。面倒見が良く、責任感が強くて優しいお兄ちゃん。(※出番が少ないです。最後に長いモノローグあり)

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0:本編スタート

紗良:ねえ、ウチら18歳になったらさ、一緒にキャバクラで働こーよ!

陽菜:えぇ…。キャバクラぁ?

紗良:歌舞伎町でさぁ、いちばんピカピカしてるあの店!きゃ、きゃりー?ず(シャリーズ)…?あそこにしよう!

陽菜:うーん……。紗良はいけるかもだけど、私はどうかなぁ。

紗良:いけるいける!!陽菜かわいいんだから!それにウチは陽菜と一緒じゃないと嫌だよぉ~~っ

陽菜:もーっ、紗良ったら。

0:(※じゃれる)

紗良:『ね。約束してよ。陽菜。』

陽菜:『うん。分かった。約束するよ。紗良。』

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紗良:(M)高校中退。15歳。うちらは行き場の無い未成年だった。

陽菜:(M)学校は勿論、家にも居場所が無くて、どこにも居場所が無くて。辿り着いたのは新宿歌舞伎町。

紗良:(M)そこで悪い大人達に買って貰って(援助交際)。毎日を過ごしていた。

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紗良:でさぁ、今日のおぢ(=おじさん)ヤバすぎて、5(万円)は高すぎるから1にしろーっって!あり得なくない!?そんな割り引くわけないよね?!

陽菜:うわー、割引交渉めっちゃ萎えるね。

紗良:だからもういいやと思ってさ、ウチ言ってやったのよ!「5くれないなら帰ってください!これ以上しつこいと通報します!」って!

陽菜:さすが紗良だなー強すぎ(※笑う)

紗良:そしたらそのおぢね、「通報されたらお前も困るだろ!」って言うのよ!困るわけないじゃんね!失うものが無いからこんなことしてるのに!

陽菜:(※ずっと笑ってる)

紗良:そしてまたガツンと言ってやったわけよ!そしたら尻尾撒いて逃げてったわ!

陽菜:かっこいいな~紗良は。私もそのくらい言えるようになりたい。

紗良:陽菜は最近大丈夫!?嫌なおぢに当たったりしてない!?

陽菜:私は最近、良(りょう)おぢばっかりだよー。リピーターも増えてきて助かってる。

紗良:そっかぁぁ。良かったよぉぉ。

陽菜:でもこれも全部紗良と出逢ったおかげ。紗良と会って無かったらこんなに強気になれなかったし、もっといろんな被害に会ってたと思う。

紗良:あの時のおぢはほんとクソだったよね~!助けられて良かったぞ~!!(※じゃれる)

陽菜:(※笑う)私も!助けてくれてありがとうだよ~。

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0:過去回想
0:半年前

紗良:(※息が上がっている)

陽菜:(※息が上がっている)

紗良:(※息切れ)な、なんとか、あのクソおぢ追い払えた……大丈夫?

陽菜:(おどおどして)……は、はい……。ありがとう、ございます。

紗良:なんでアンタみたいなのがこの街(歌舞伎町)に居んの?さっさとお家帰りなよ。危ないよ。

陽菜:……あ。えっと。その。(どもる)

紗良:なに!?もっとはっきり喋って!

陽菜:~~っ帰る家!!無い!!……から。その……さっきみたいなおじさんに、お金、貰って、て……

紗良:……はあ?

陽菜:ごめんなさいっ!そのっ、悪いことだって分かってるんですけどっ

紗良:……。

陽菜:えっ、っと……その、

紗良:ウリ(=援助交際)始めてどんくらいなの?

陽菜:えっと、二か月……くらい。

紗良:えぇ!?超初心者じゃん!!

陽菜:!?

紗良:ん?ああ~…。ウチもやってんだ、ウリ。この歌舞伎町で一年くらいかな。

陽菜:そ、うなんですか…?

紗良:そう!ね、この後時間ない?あ。ノルマとか決めてるならアレだけど、

陽菜:いえ。今日は誰か捕まればラッキーと思っていたくらいだったので

紗良:ほんと!?じゃあさ、この辺のこといろいろ教えてあげる!カラオケ行こ!

陽菜:え。い、いいんですか?

紗良:もっちろん!!あ。名乗って無かったね。ウチは紗良っていうの!白沢紗良(しらさわ・さら)!紗良って呼び捨てで呼んで!

陽菜:わ、私!陽菜!佐倉陽菜(さくら・ひな)!よろしく、紗良!

紗良:えへへ。よろしく、陽菜!(嬉しそう)

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0:陽菜モノローグ

陽菜:(M)私の実の親は、未婚の母で。15歳という若さで私を出産した。

陽菜:(M)当然そんな子供に赤ん坊が育てられるはずもなく、私は里子へ出されることになった。

陽菜:(M)幸いにも親戚のツテはあった。高校一年生まではその家で暮らした。いや、暮ら「させて」もらった。

陽菜:(M)しかし、問題はその後だ。重度の起立性調節障害(きりつせい・ちょうせつ・しょうがい)を発症した私は、朝起きることが困難になり、遅刻を繰り返し、単位を落として留年した。

陽菜:(M)そのことが里親にばれ、勘当された。高校も辞めさせられた。だから行き場の無い私は今、ここ(歌舞伎町)にいる。

陽菜:(M)あれから一度も、家へは帰っていない。というか、帰れないのだ。

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0:現在へ戻る

陽菜:私の生きてる意味って、なんなのかな…(ぼそりと)

紗良:ん~?なんか言った?

陽菜:(M)紗良は。どうしてウリなんかしているんだろう。彼女は綺麗で可愛くて、明るい子だけれど、自分の事を一向に話そうとしない。

陽菜:紗良、ってさ……(なんでウリしてるの?)

紗良:うん。なになに?

陽菜:……。いや、やっぱり何でもない。

紗良:なんだよそれーっ!!気になるじゃんか!!気になるじゃんかー!!!

陽菜:(※笑う)なんでもないって!

0:二人でしばらく笑い合う

陽菜:……紗良?ケータイ鳴ってるよ?

紗良:ん?あれ、本当だ。…ぁ、(兄からの着信画面を見て、逡巡する)

陽菜:出なくて大丈夫なの?

紗良:(※少し動揺して)だ、大丈夫大丈夫!!こないだクッソめんどいおぢが居てさー、そいつそいつ。無視でいいよ。

陽菜:そっ、か…。でも本当気をつけなよ?紗良は私と違って可愛いんだから、もし変な事件に巻き込まれたりしたら……

紗良:もーー!!!まーた陽菜はそうやって自分の事卑下するんだから!!知ってた~?陽菜ってめえーっちゃ可愛いんだからね!?自信持ってよ!?

陽菜:え、ええ…?

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0:紗良回想

紗良:(M)私には年の離れた兄貴がいる。失うものが無いなんて本当は嘘だ。――私は陽菜に、嘘をついている。

尚弥:『紗良!メシ出来たぞ~!!今日は兄ちゃんの自信作だ!!』

紗良:(M)両親が事故で亡くなったのは、私が10歳の時。本当に、本当に突然の出来事だった。

尚弥:『大丈夫だ。紗良。兄ちゃんが居る。これでも美容師試験受かったんだ!春からは稼ぎ頭だぜ?』

紗良:(M)当時既に18歳を越えていた兄貴は、私を養う為に美容師として働き始めた。

尚弥:『紗良、すまん。遅くなった。残業でな。ほんと、メシもまだ作れてねぇ。悪ぃ。』

紗良:(M)――私は、それが嫌だった。

尚弥:『紗良。最近学校はどうだ?楽しいか?兄ちゃんにも教えてくれよ~。』

紗良:(M)「よく出来た兄貴」に養ってもらうばかりで、私自身は何も出来ていない。何も出来ていないどころか、私には何もなかった。

尚弥:『高校入学おめでとう!紗良!!受験頑張ったなぁ!!……これ。少ないけど入学祝だ。大事に使うんだぞ~?』

紗良:(M)高校へ入り、段々とグレ始めた。学校へも行かなくなり、夜遅くまで遊び歩く日々。当然兄貴には咎められた。

尚弥:『紗良!!こんな時間までどこほっつき歩いてたんだ!!もう0時回ってんだぞ!?何考えてんだ!?』

紗良:(M)でも仕方がないじゃんか。どこにも居場所が無いんだから。仕方が無いんだよ。兄貴には分からないよ。……そう言って私は、家を出た。

尚弥:『紗良!!おい、どこ行くんだよ。待てよ紗良!!行き先くらい教えろよ!!ちゃんと帰ってくるんだろうなぁ!?』

紗良:(M)ふらふらと辿り着いた歌舞伎町で、ウリをして日銭を稼ぎながらぼんやりと過ごしている。

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0:現在へ戻る

紗良:ねえねえ陽菜!

陽菜:なあに?

紗良:うちらがキャバクラで働いたらさー、どうなると思う?

陽菜:どうなる、って?

紗良:期待の新人!とか言われちゃったりするのかなぁ~!!そんでもって沢山お客さん付いて、シャンパンとか入れて貰っちゃって、あれよあれよという間にナンバーワンに!!!

陽菜:あはは。紗良はなれるだろうね~ナンバーワン。

紗良:ええ!?陽菜もなろうよ~!!

陽菜:私がナンバーワンになったら、紗良はナンバーワンにはなれなくなっちゃうよ?

紗良:むむ。そっか……

陽菜:でも心配ないよ。紗良は美人だし綺麗で可愛いから、絶対ナンバーワンキャバ嬢になれる!!

紗良:(※ぱあっと明るくなって)~~~っっ!!!もう!!!陽菜!!!大好き~~~!!!(※抱き着く)

陽菜:ちょっとぉ~!くっつかないでってば~!

紗良:えぇ~~??いいじゃんかぁ~~!!

陽菜:ふふ。……あ。そういえば、源氏名はもう決めてるの?

紗良:源氏名……ってなに?

陽菜:お店で働くときに使う、偽名のことだよ~。

紗良:うーーーん……。……ヒナノ!!!

陽菜:えぇ!?ほぼ私の名前じゃん!!

紗良:だからだよぉ。大好きな親友の名前で働きたいけど、そのままっていうのはプライバシーがあるからね!!

陽菜:……ほぼそのままなんだけどね。

紗良:陽菜は?!陽菜は源氏名なににするの!?

陽菜:私は~~……

紗良:(じっと見る)

陽菜:まだ決まってない!

紗良:えええ~~!!!うっそだあ!!!絶対決まってるって顔してたのに!!ていうか、陽菜は『サラ』って源氏名で働いてよ!!

陽菜:いやそのまんま!!プライバシーって、紗良が言ってたばっかりじゃん!!

紗良:あ。そういやそうだったね?

0:二人で顔を見合わせて笑う

0:(間)

紗良:は~~~。早く18歳になりたいなぁ。

陽菜:そーだねぇ。私達15歳じゃ、ウリくらいしか出来ないからねえ。

紗良:ね、陽菜。

陽菜:ん?

紗良:ウチらって、どんな18歳になってると思う??

陽菜:…………キラキラキャバ嬢??

紗良:だよね~~~~!!!むしろキラキラキャバ嬢になっててくれないと困る!!

陽菜:ドレスとか着るのかなあ。

紗良:着るでしょ!キラキラキャバ嬢なんだからさ!!

陽菜:そっか(※笑う)

紗良:あ。ウチそろそろアポの時間だ。行ってくるね~陽菜!!終わったらまた語ろ!!

陽菜:うん!!語ろ~!!私は今日はアポ入ってないしテキトーに立ちんぼでもしてようかな。

紗良:くれぐれも、クソおぢには気を付けるんだよ!!

陽菜:はいはい。それは紗良もね!!

紗良:もっちろん!!殴り飛ばしてやるんだから!!

陽菜:相変わらず紗良は強いなあ……。

紗良:じゃ、行ってきまーす!!

陽菜:うん!!行ってらっしゃーい!!また後で!!

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0:次の日

紗良:……ねえ、陽菜。私と一緒に死んでくれない?

0:(間)

陽菜:へ?

紗良:私と一緒に死んでくれない?

0:(間)

陽菜:ど、どしたの?紗良らしくないじゃん。(※笑いながら)あぁ~~なに?クソおぢにでも当たった?

紗良:ううん。そういう訳じゃないけど。私と一緒に死んでくれないかなーって。(※暗い表情)

陽菜:……。(一人称が気になる)

紗良:陽菜……?

陽菜:(M)ほらやっぱり。紗良は私に、何も話してくれない。

陽菜:(M)そんな紗良に、私が何も言えるはずがなかった。だってそうじゃんか。

陽菜:(M)――思えばこの時、紗良に何か言えていれば。「一緒に死ぬよ」って言えていれば、未来は変わっていたのかもしれない。

陽菜:(M)でも私には無理だった。……何にも、本当に何にもできない、クソガキだったんだ。

0:気まずい空気を打ち払うかのように紗良が手を叩く

紗良:よし!それじゃあうち、そろそろ行くね!

陽菜:あ。……アポ?

紗良:うん!新規のおぢ!稼いでくるぞ~

陽菜:くれぐれも無理せずね。頑張って。

紗良:……。陽菜がそんなこと言うなんて、珍しいね。

陽菜:え?……そ、そうかな。

紗良:大丈夫だよ。大丈夫。……紗良はハイパー元気で可愛い女子高生なんだから!!

陽菜:(※クスクス笑って)中退してるけどね。

紗良:こら~~っっ!!それは言わないお約束!!

0;(※二人でじゃれあう)

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陽菜:(M)紗良の声を聞いたのは。姿を見たのは。――それが最期になった。

陽菜:(M)『未成年ラブホテル誘拐殺人』。ニュースにも取り上げられた。

陽菜:(M)密室で執拗に首を絞められた紗良は窒息死。元から紗良をつけ回していたストーカーの犯人は救急車も呼ばず、紗良を放置して逃走。

陽菜:(M)――私のたった一人の親友は、こんなにも簡単に居なくなってしまった。

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0:紗良の葬儀

陽菜:あ、の……。この度は――

尚弥:あぁ。君が佐倉(さくら)さん?……紗良と仲良くしてくれて、ありがとうね。

陽菜:い、いえ…。私は、その、(紗良と一緒に悪い事をしていただけで)

尚弥:(※陽菜の言葉を遮って)何も言わなくていい。

陽菜:え。

尚弥:君は、何も、言わなくて、いい。(※感情を抑えるように)

陽菜:えっと……はい。

尚弥:(※震えながら、静かに感情を出す)……お願いだ、何も言わないでくれ。これ以上君の事を恨みたくは無い。

陽菜:っ~!ご、(ごめんなさいと言おうとするが言えない)

尚弥:……もう行ってくれ。

0:陽菜、去る

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0:(尚弥のモノローグ(回想))※感情込めて読んでいいです。

尚弥:(M)18歳の時に、親父とお袋が死んだ。交通事故で二人まとめて一気にバーン!だ。

尚弥:(M)当然慰謝料なんかは入ったが、当時の俺は無知で馬鹿で馬鹿なクソガキで。親戚の…いや、親戚とも呼びたくない人達に全部取られた。

尚弥:(M)俺は18歳で、美容院への就職も決まっていた。だけど妹はまだ10歳だ。やれうちで引き取らせろだの、やれうちの方が裕福だの、散々揉めた。

尚弥:(M)こんな話、妹の前でしてんじゃねえよ。俺は遺産争いのときに散々大人の汚い部分を見せられたんだ。大事な妹を、お前らなんかにくれてやらない!!

尚弥:(M)気づいたときには、啖呵を切っていた。

尚弥:(M)勿論、大変なのは分かってる。俺は新社会人で、しかも美容師の給料は良くない。「ガキにガキの面倒が見れるはずがない」とかも言われたっけな。

尚弥:(M)……うるせえよ。少なくともお前よりは、お前らよりはなあ!!俺の方が紗良の事を大事に想ってる。俺が紗良を、立派に育ててみせる。

0:(間)

尚弥:(M)それからは紗良との二人暮らしが始まった。

尚弥:(M)できることは何でもやった。きつい美容師の仕事から帰ると、掃除・洗濯・料理なんかの家事は全て完璧にこなしていた。

尚弥:(M)あれだけ軽蔑の目を向けてきた親戚からも、「よくできたお兄さんね」なんて言われるようになっていった。……ハッ、どの口がだよな。

0:(間)

尚弥:(M)転機が訪れたのは、紗良が高校に入った辺りからだ。

尚弥:(M)きっと俺の育て方が悪かったんだろう。素行の悪い生徒達とつるむようになった紗良は、だんだんと荒れていった。

尚弥:(M)今思えば、反抗期や思春期のようなものだったのかもしれない。

尚弥:(M)でも一番許せなかったのは、紗良が俺に何も言わず高校を辞めたことだった。

尚弥:(M)辞めたこと自体を咎めたかったわけじゃない。一言でいいから、俺に相談して欲しかった。……それだけだったのに。

尚弥:(M)俺の気持ちは通じなかった。紗良は家を飛び出し、帰ってこなくなった。何度電話をかけても繋がらなかった。

尚弥:(M)着信拒否にされていないだけ、まだ希望があると思ってしまった俺は馬鹿だった。

尚弥:(M)……本当に、馬鹿だったんだ。

0:(間)

尚弥:(M)いくら後悔したところで、紗良はもう戻らない。

尚弥:(M)……。どれだけ自分の身を削ったって、紗良は、紗良のことだけは……大事にしたかったのに……。

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0:三年後

0:シャリーズの店前に居る陽菜
0:独り言

陽菜:ねえ、紗良。私、18歳になったよ。……18歳。

陽菜:18歳になったら……一緒にキャバクラで働こうね、って……言ってたもんね……。

陽菜:だから私は、紗良との約束、守るよ。

0:深呼吸

陽菜:――今日からは、私が『ヒナノ』として働くからね。……親友。

0:シャリーズの扉を開く陽菜

0:END

◆補足◆
タイトルの意味:平家物語の一部より。
沙羅双樹の花の色は、どんなに勢い盛んな者も必ず衰えるという道理を示しているそうです。
若くして亡くなってしまった紗良と掛けて。

【※援助交際・パパ活と呼ばれる個人売春は非常に危険な違法行為です。事件に巻き込まれる可能性もあります。絶対に辞めましょう。】

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