00年代にD3P乙女ゲームに傾倒していたアラフォーが「DesperaDrops」を語る
※「DesperaDrops」公式ガイドラインに基づいて記事を作成しております。
Nintendo Switchで発売中のD3P乙女部最新作「DesperaDrops(以下、デスペラ)」があまりにも傑作だったので、居ても立ってもいられずに久々にゲームの感想を書きます。
11月末に発売されたタイトルなのですが、なかなか時間が取れず、12月に自分へのクリスマスプレゼントとして購入し、この年末年始に一気にクリアしました。
一旦、物語が走り出すと面白すぎて途中でやめられないので、一気にクリアするしかなかったとも言います。
実はフルプライスの乙女ゲープレイすること自体が2年半ぶり、そしてD3Pの乙女ゲーをプレイするのはなんと「維新恋華 龍馬外伝」以来の13年ぶりです。自分で調べてびっくりしました。
それこそ00年代は、D3Pの乙女ゲーに次々とハマり、こちら「D3Pオトメ部」の前身「こちら胸キュン乙女」のモバイルサイトにも日参してせっせと課金していましたし、私の人生ベスト乙女ゲームは今も変わらず「VitaminX」です。
乙女ゲーを手に取らなくなった理由は、ざっくり言って「ライフステージの変化」「スマホゲーの手軽さ」「(あまりアンテナを伸ばしていないが故に)興味を惹かれるタイトルになかなか出会えない」あたりだと思います。
「デスペラ」とは発売直前にXのおすすめTLにぴょこん、と出てきたD3Pオトメ部の公式ポストで出会いました。
なぜXが私に「デスペラ」をおすすめして来たのかは謎ですが、結果的に自分の好みにぴったりのゲームを紹介して貰えたことになりますよね。
これは偶然……いや、何か大きな力が動いているのか……?? とついつい考えてしまう程度には「デスペラ」の世界に染まっています。
■デスペラのここが好き!!
1)キャラクター
乙女ゲーといえば、まずは魅力的なキャラクターがいないと始まりませんよね。
ヒロインは手に触れると感情や記憶を読み取ることが出来る異能持ちの女子大生・ミカ。
友菱商事の令嬢探偵を彷彿とさせる黒髪ボブの清楚な雰囲気で、初めて立ち絵を見たときは未成年かと思いました(イベントCGではいくらか大人っぽく見えますね)。
異能持ちとはいえ普通の学生生活を送り、荒事とは縁遠かったミカが、殺人の濡れ衣を着せられて追われる者となり、愛すべき無法者たちと同行する内にどんどん逞しくなっていくところが、一つの見どころになっていると思います。
そうして変わっていく一方で、真っ当な倫理観を持ち続けてるところも好きです。
生きるために人様のものをしょっちゅう拝借する羽目になっても、すりは絶対に許さない、みたいな矛盾を抱えている(それに自分でも葛藤してる)のが人間らしくて愛おしいんですよね。
しいて言えば、すぐ自分が犠牲になることで丸く収めようとするのがダメなところではあるんですが、物語上、それを良しとして描いているわけではない(ちゃんと怒られたり、悪い結果になる)ので、安心して見てられました。
私はデフォルトネーム+ボイス有で楽しみましたが、可愛らしいけど甘過ぎない、優等生然とした話し方や声音で、初々しい雰囲気もあって、ミカにはぴったりだったと思います。
基本的にミカの一人称視点なので、スマホを確認する時に、すっとスライドしながらカットインする演出が好きです。
そしてそんなミカの運命共同体となる逃亡者たちももちろん最高です。
色々なスキルを持った犯罪者たちがチームになる、「オーシャンズシリーズ」のような(あと個人的には90年代のともさかりえ主演ドラマ「FiVE」を思い出しました)感じで、その設定の時点でもうわくわくしますよね。
ぱっと見、逃亡者のわりには派手な見た目のキャラが多く、モチーフカラーがはっきりしてて戦隊ヒーローみたいですよね(国際色豊かなので「帝国華撃団みたいだな」のほうが適当かも?)。
息をするように不法行為を行う物騒な兄貴たちですが、全員根は優しく面倒見のよい熱いやつらでした。
最初は、全員犯罪者ならひとりくらいめちゃくちゃサイコなキャラが混ざってるんじゃないかと疑っていて、十中八九カミュだと思ってたんですがそんなことはなかった……カミュごめんなさい、昔廃校に閉じ込められたトラウマで疑心暗鬼だったんです。
個々のキャラクターたちも魅力的なんですが(詳しくは後半のネタバレパートで書きます)、チームとして見ると本当に最高で、力を合わせてミッションに挑むときのかっこよさは勿論、日常パート(日常ではない)の7人のどうでもいい掛け合いもめちゃくちゃ面白くて大好きです。
掛け合いでは、私的にハミエルとカミュが特に楽しかったですね。
「デスペラ」は海外ドラマのような雰囲気や構成を意識しているのかと思うんですが、全員便宜上日本語で喋ってますよね(実際には英語で喋ってるという設定なのだと思います)。
でもハミエルのキザで皮肉っぽい台詞回しがいかにもソレっぽくて、一気に海外ドラマ感がマシマシになるんですよ。
カミュのほうは仲間の誰もついてこれないオタトークで笑わせてくれるのですが、わたしはそっち側の人間なので、たまに一緒にダメージを食らったり、共感して泣き笑いになったり、同じオタクから見てもそれはあかん……と引いてみたりと、とにかく楽しいです。
時に協力したり敵対したりするサブキャラたちも印象的です。
公式サイトに載っているキャラ以外は基本キャストさんも公開されてないので、専グラ名ありモブ扱いなのかもしれないですが、そんな彼らでさえも物語を彩ってくれます。
私はサリィルートと真相ルートにだけ出てくる、あのカッコイイご婦人がめちゃくちゃ好きです。
「デスペラ」のキャラは、みんな個々の思惑で生きているため、味方キャラと敵キャラ、とはっきり区切ることができないのが面白いんですよね。
一応、秘密結社『C.R.O.W.N.』の手先たちははっきりヴィランではありますが、その彼らでさえ一枚岩ってわけではないですからね。
この『C.R.O.W.N.』という連中、ちょっと不自然なほど何かと理由をつけては人妻(事実婚を含む)を殺そうとするので、勝手に「世界一人妻に厳しい組織」と呼んでいたのですが、このあたり
真相ルートを踏まえると、いろいろ考察したくなるんですよね……。
2)シナリオ
「デスペラ」ファンの間で特に評価が高いな、と感じているのがシナリオですね。
私もとにかくシナリオが面白過ぎて、前述通りエンディングを見るまで中断することができないので、睡眠時間を犠牲にしようとも、いつも一気に読み進めてました。
乙女ゲームであること以前に、クライムサスペンスとしての完成度が高すぎますよね。あれもこれも伏線だし、びっくりするような仕掛けがたくさんあって、しかもそれを一切中弛みなく魅せてくれました。
舞台が欧州であることにも意味がちゃんとある……というか、全てのものに意味があって配置されているんですよね。
周回してると、冒頭の護送車のシーンから初めてサイドカー乗る辺りまですっ飛ばしがちなんですが、全クリ後に改めてその辺を読むと「この人どんな気持ちでこの台詞を?」とか、「あ、これそういう意味だったのか」とかいろいろ楽しいんですよね。
共通ルートが長いというマイナスレビューもよく見かけたのですが、それは確かにそうでした。
とはいえ共通ルートに関しては、同じシチュエーションでも相手が違うとこうなるのかー、という楽しみ方や、一周目ではスルーした伏線を見つける喜びがあるので私は気にならなかったですね。
個別ルートに入って恋愛パートになると意外とみんな純情で、恋愛コミュ下手くそ選手権なので、もどかしかったり、せつなかったりで、甘酸っぱかったり……からのバッドエンドに突入したときのしんどさよ。
しかし良作ADVはえてしてバッドエンドまでこだわって作られているもので、「デスペラ」ももちろん例外ではありません。どのエンディングもしっかり噛み締めました。
DLCではもっとラブラブな様子が見られるんですかね。とっても楽しみです。
3)音楽
「デスペラ」は音楽も最高です。
特にOPの「Escape from this world」はお気に入りで、サブスク配信してくださっていたので毎日聞いています。
OPムービーもいいんですよね、私は疾走感のある曲に合わせてチャカチャカ動くOPが大好きなのです……。
3曲あるEDもどれも印象的ですが、実はバッドエンドの曲が結構好きだったりします。
最初に聞いたときは物語の余韻や、エンドロールの演出と(あと聞いたのが深夜0時だったの)で、「怖っっっっっっ」となったのですが、そのくらいインパクトがあったのと、慣れたら普通にかっこよかったので。
ドラマを彩るBGMもどれも良いんですが、特にお気に入りはラミーのテーマ曲ですね。
メインキャラクターのテーマ曲は、そのキャラの出身国のイメージも取り入れて作られてると思うのですが、アコーディオンが使われているのがいかにもおフランスで、自称大怪盗のラミーに相応しく華やかでミステリアス、そしてちょっと背伸びした曲になってるところがいいです。
■少しだけ気になったところ(重箱の隅をつつくやつです)
・基本的には快適な操作性なんですが、親の顔よりよく見る「CHART」が、ワンボタンで表示できないのが少しだけ面倒でした。
「WORD」が更新された時に「New」などのマークをつけたり、更新順ソートができたら確認しやすかったかなと思います。
なにしろシナリオが面白いので(何度でも言います)、途中で止めたくないから後でまとめてチェックしようなどと思ってると、どれが更新されたかわからなくなりますからね。
・立ち絵や背景絵とテキストが合ってないところがあって、少し没入感が損なわれることがありました(例:上着を脱いだ、と書いてあるけど立ち絵では着ている など)。
細かい部分ですが、ぜひ差分を……それが難しければあえてテキストだけ表示するとか、不自然にならないような演出でシルエットにするなどで上手にごまかしてほしいです。
・欲を言えばオールクリア後のお楽しみがほしかったです(特別なCGや、資料が閲覧できるなど)。わざわざエンドリストがあるので、何かあるのかな……と思ったらそういうわけでもなかったので。
・ミッションパートが個人的に楽しかったのでもっとやりたかったです。ルート分岐後も1回ずつくらいあったら嬉しかったですね。
これに関しては周回でスキップできないのであまり多いと嫌な人もいるかもしれないですが……。
※※以下、大きなネタバレを含む感想※※
■ここからルート別に感想を語ります。
「デスペラ」はルート毎に謎が明かされたり、伏線回収したりするので、どんな順番でクリアしたかで結構、シナリオの印象が変わったりすると思うんですよね。
ここでは、私がクリアした順番で感想を書いていきます。
・ジブルート
一番最初にクリアしたのは不器用な元警察官・ジブルートでした。
ジブにした理由は、公式サイトのキャラクターページを見たとき、もしかして執行人《エンフォーサー》と繋がりがあるのでは……と思ったので、まずはその答え合わせをしたかったからです。
どちらかというと可愛らしいキャラクターや、小柄で線の細いキャラクターを演じているイメージの強い鈴木さんの、長身ヴィラン役(それもだいぶやばいやつ)もめちゃくちゃ気になっていたのです。
結果としては予想通りでしたが、執行人との因縁以上に警察内部の腐りっぷりがしんどいエピソードでした。
最初から『C.R.O.W.N.』が警察に対して強い影響力を持っていることは示唆されていましたが、良し悪しはともかく強い思想を持って暗躍している『C.R.O.W.N.』とも違い、ただただ私欲で悪事に手を染めてる悪徳警官どもがすごく嫌な感じでした。
カスパールのカスっぷりに比べたら、執行人のピュアな狂気のほうがはるかに可愛気があるというものですよ。
そして可愛いといえばジブですね、最年長なのに不器用すぎるがゆえに、テンパってシャンプーを飲む男。
このようにジブがポンコツになってしまったので、いろいろな意味でレベッカが頼もしかったです。
最終話での仲間たちと挙げる結婚式のシーン、めちゃくちゃ好きでした。
ベタではありますが、私はみんなに祝福されたり冷やかされたりする結婚式描写が超好きなんですよー(ストラバのタクミの家族になろうエンディングとか)。
そこに執行人が突っ込んできた時には、オマエェェエエ工となりましたが、バッドエンドを見るとちょっとここは印象が変わるんですよね。見ようによっては執行人が助けてくれたようにも見えるので。
ドアを開けるとそこから狙撃されるから硝子をぶち破って突入し、ミカを外に連れ出た上で、カスパールをぶちのめし、ジブに真実を伝えた上で過去を乗り越えさせて、そして法悦の内に死んだ──という。
バッドエンドのCGを見る限り、このシーンのミカはグローブつけてるから執行人の心は見てなくて主観の情報しかないため、ここは深読みができてしまうんですよね。
まあ執行人的には、ジブを殺して(愛して)もいいし、ジブに殺されて(愛されて)もよかったんだろうな……。
・ハミエルルート
2人目はハミエルのルートを選択しました。
ここは単純に、攻略対象として一番気になっていたからですね。
頭の回転の早い皮肉屋で嘘つきな色男みたいなキャラは大好きだし、なにより件の海外ドラマムーブが癖になって、すっかりハミエルがいないと物足りない身体になってしまいました。
こちらのルートでは、ハミエルの秘密に加えてカルロスとハミエルの意外な繋がりが明かされましたが、かといってカルロスの正体までは語られないので、多くの謎が残る終わり方ですね。
ハミエルは日本人に当たりが強いところが、「サクラ大戦2」のソレッタ・織姫に似てるな……と思ってたんですが、そうなった理由も通じるところがあってちょっとニヤッとしてしまいました。
まあ真相は重すぎてぜんぜん笑えないんですけど、おのれ人妻キラー(物理)『C.R.O.W.N.』め……。
ハミエル自体は好きだけどエンディングはハッピーエンド、バッドエンドともにあんまり私の好みではなかったです。
仲間たちには死んだと思われてるからもう会えないし……あと、追われる側だったミカたちが逆襲の一手に出るカタルシスみたいなものはあんまり感じなかったです。なによりカルロスかハミエルのどっちかが死にますからね。
その運命を分けるのが、またしても執行人が襲ってくるかどうか……となると、本当にこの人は天の遣いなのでは?? と思ってしまいます(そして本人はもれなく死ぬ)。
細かいところですが、執行人が登場した時にちょうどジブが席を外してたりしてエンカウントしないのが面白かったです。
まあ、これ以後、どのルートにも登場しないことが一番びっくりなんですけどね……えっ……野放し??
ただ、ハッピーエンドの最後に、和食は嫌いじゃないのか、と昔の言葉を蒸し返されて「食わず嫌いだ」って答えるハミエルはよかったですね。
乙女ゲーの序盤でヒロインに辛く当たったり、逆にチャラついた態度とってたキャラが、ヒロインにマジ惚れするも身から出た錆で信じて貰えなかったり、後悔したりする展開大好きなんですよね……まあ、ミカは心を読めるからすれ違いは起きないのでイージーモードですけど。
・サリィルート
三人目はサリィです。そろそろサリィの性別をはっきりさせたいなー、というところで選びました。
はっきりさせたいとは言いましたが、パルマのお家での鎖カットと寝姿の筋肉描写が結構露骨な伏線だったので、間違いなく男だと思ってはいました。
個人的には同性キャラとの百合エンドや、友情エンドも好きなので、ちょっと複雑ではありましたが、それならそれでどうして女の子として暮らしているのかは知りたいですからね。
最初は多重人格かな、と思ったんですが……結果、多重人格は別の人でしたね。
過去の話が思った以上にきつかった。
真サリィの死亡描写が、本作の全死亡シーンで一番エグいし辛かったですね。
軽い気持ちで行ったハッキングが原因で、大切な妹が死んでしまったなんて……っていうのもそうだし、『C.R.O.W.N.』が直接手をかけたわけではなくて、パニックになった一般人によって圧死ってことですよね……。
くしくも現実世界で年明けから自然災害や大きな事故、火災が立て続けに発生していたので、もし自分が巻き込まれた時に冷静に行動できるか、と思わず自問自答してしまいました。
共通ルートのクリステルと遊ぶイベントは、サリィ編が一番好きだったんですが(へアアレンジのCG見たかった……強欲ですが、このイベントは全ルートCGが欲しい)、そのクリステルを助けられなかったことをミカに責められる格好になって、爆発するシーンは印象的でした。
じゃあ二人でクリステルを奪還しよう、という話になるかと思ったんですが、それはまた別のルートでしたね。
まさかのEUについての政治的、社会的な問題がここから表出してきてびっくりしました。
EUについて自分は薄くしか知識がなく、日頃それほど関心を持っていなかったので後で、二階堂先生の補習を受けてこようと思います……。
サリィ編のラスボスはもちろん同じハッカーである指揮官《コンサートマスター》でしたが、サリィと同じ轍を踏みそうなクソガキにわからせてあげる、という展開や、コンマスくん自体がいい負けっぷりを見せてくれる点が爽快でした。
ハッピーエンドはもちろんバッドエンドでもちゃんとわからせてますからね。流石サリィ。
それにバッドエンドと言ってもサリィもミカも生存していて希望もある終わり方で、バッドエンドの中では一番好きです。
エンドロールの、本名と並列表記になったり、バッドエンドでは色が抜けたりっていう演出もよかったですね。
余談ですが本作プレイ中にちょうど中の人の結婚報告があったのも嬉しかったです。おめでとうございます……!!
・カミュルート
4人目のカミュは、初手のツーリングで既にだいぶやらかしてて笑っちゃいました。
相方は誰を選んでもそれなりに危険なツーリングにはなるんですけど、追われてるからとかそういう問題じゃなくて普通に危険運転なので……CGではミカがめちゃくちゃ冷静な表情なのがシュールで面白かったですね。
でも当たりも柔らかくて紳士的だし、趣向が独特ではあるけど親日家であることは間違いないので私もミカの立場ならカミュを当てにしてしまうかな……と思いました。
しかも私はミカと違ってオタクなのでそこそこ話も聞けるし、アラフォーゆえ緊張感も与えないため仲良くなれるかもしれない……。
カミュの父親が、人妻絶対殺す団こと『C.R.O.W.N.』の関係者で、母親が犠牲になっていたことは衝撃的でした。なんならカミュも危なかったという(泳げなくなった理由たぶんこれだし)……確かにそんな湖なくなっちまえ、と思うパパの気持ちもわからんではないです……大自然への八つ当たりですけど……。
お金持ちのお坊ちゃんが何かとお父さんに反発しがちなことは、かつてセン高で学び、聖帝で教壇に立ったことがある人なら誰もが知るところだと思いますが、すれ違ったまま死に別れることなく和解できてよかったです。
その分バッドエンド後、一人残されるパパのことがとても心配ですが……。
ストーリー終盤、革命へと加速していく狂気の描写がすごく怖かったですね。
昔見た「光の雨」という連合赤軍の映画を思い出したのと、学生たちの地下組織というところで、古屋兎丸先生の「ライチ☆光クラブ」を連想しました。
カミュはじめ革命に傾倒する若者たちの純粋さは幼稚さでもあって、視野の狭さや未来に対する想像力の欠如から暴走して、本来の思想からどんどん逸脱していってしまう……でもハッピーエンドのカミュは本当の仲間を手に入れたことでその渦から離れられたんだな、と思ってほっとしました。
幼稚な革命を、本気のヒーローごっこで迎え撃つカミュたちの大活劇──これに一人残らず付き合ってくれてるって、本当にいい仲間ですよね。レベッカもよく笑わずに報道出来るな……と感心しました。
バッドエンドはある意味綺麗に終わりそうなところで、めちゃくちゃ後味の悪い描写があるのが最高でした。
バッドエンドの二人の、追い詰められつつもちょっと悲劇に酔ってる感じが気持ち悪かったので、あれでよかったと思います。
ヒーローは絶対に最後まで諦めず戦わなくてはいけない、という教訓ですね。
・ラミールート
5人目は、手配写真の小慣れ感がめちゃくちゃ好きなラミー君。
共通ルートの孤児院のエピソードは初回かなり抉られたので、個別ルートで救済があるといいなーと願っていたらがっつりその辺描かれていたのでよかったですね……そればかりか、今までどのルートでも救出に至らなかったクリステルを連れ出して孤児院に預けることができたのは嬉しかったです。
院長先生は騙されたことに気付かずに終わっているので(幸せなことではありますが)、いずれまた悪知恵の働く誰かにカモにされるのではないかと不安が残ります。
まあクリステルは意外としっかりしてるところもあるので、いずれ院長先生を支えてくれることに期待しますか……。
清貧に生きるだけでは悪いやつの食い物にされてしまう、生きるためには罪を犯さなければいけない、という現実だけでもハードなのに、そこに「ウルズの雫」なる激ヤバアイテムが関わり、ラミーくんの二重三重に重い過去が徐々に明かされていくのがきつかったです。
ハッピーエンドでは、家令《ハウス・スチュワード》を防犯システムを逆手に取って撃退する流れがとても痛快でしたね。
そこからラミーが脱出できないという流れになった時は、これハッピーエンドで合ってるよね?? と思わずステータスを確認してしまいましたが、そこは流石、大怪盗ですね。
ラミー君は「共同生活」という言葉を結構印象的に使っていて、鈴をつけられたことで野良猫が家猫になった、というような表現もありましたが、結局ラストは二人で仲間たちのいる家から旅立っていくエンディングなんですよね。
どういうことなのかな……と思ったんですが、もしかしたらこのつかの間の共同生活が、ラミー君にとっての「学校」で、これは二人で卒業したよ、ということなのだと解釈することにしました。
バッドエンドはジブと反対で、先にラミーが倒れて、ラミーに託されたミカも救われない、というキツイ終わり方でした。
ウルズの雫を飲んで傀儡になってしまったのか、それより先に自害できたのか、自分でもわからないまま意識が途切れてしまう、というもやっとした結末がとてもよかったんですが、エンドロールではミカの名前が血染めになったので後者ということなんでしょうか。
このあたりは、シナリオとしてはどちらの可能性も残したいが、エンディングの演出としては他のルートと同じように生死を確定しなければいけない、という難しさがあったのでは……と勝手に思いました。
1/8 追記
ラミー君のめちゃ好きポイント、誕生日の話をするのを忘れてました!!
私は自分の誕生日がわからないキャラクターが、自分で誕生日を決めるシチュエーションが好き、という細かすぎて伝わらないヘキがあるのですが、公式サイトでラミー君の誕生日を確認して、うわああっとなりましたよ。
せっかく決めた誕生日を迎える前に亡くなってしまうバッドエンドはやっぱり辛すぎる……。
・アッシュルート
乙女ゲーでは基本、メインっぽいキャラクターを一番最後にすることにしているので、個別ルートのトリはアッシュの兄貴です。
護送車ではネクライダーと呼ばれ、ガレージでバイクを見つけるなり滔々と語り出すなど、ライダー属性全開の兄貴をシカトして、延々と他の人に運転を頼むのが心から申し訳なかったです(とはあえ、どうあっても強制イベントで一回はバイクに乗るのが、面白かったですが)。
アッシュの兄貴は無口だからあんまり掛け合いに積極的に参加しないものの、ぽろっと言った言葉が変におもしろかったり、読書家・画伯などちょくちょく意外な一面を見せたりするのが可愛いですよね。一行の癒やし枠だと思っています。
エピソードとしても逃げ込んだ村での老人との触れ合いだったり、子守《チャイルド・ナース》の過去と想い、アッシュの亡き父の遺言、そして残された母との絆……などなど、感傷的な出来事の多いルートとなっていました。
特に「カッターナイフ女」とか学校の七不思議きいそうな名前で呼ばれたり、「チャイナス」と勝手に訳されたりしてネタ化していた彼女の最期は心に残りました。
終盤はミカの冤罪を晴らすために行動していくため、ハートフィールド氏の正体や死についての謎が明かされる王道のルートだと思いますが、バッドエンドがすごくあっさりしてて、どちらかというとゲームオーバーという印象だったのが少しだけ残念でした。
アッシュを最初にクリアしていたら気にならないけど、他の人が結構濃かったので……。
ハッピーエンドもムショ上がりの恋人を迎えに行く、っていう真っ当に晴れやかなエンディングでよかったです。幸せであれ。
・真相ルート
そしてこれですよ、これ。私の一番好きなルートは間違いなくこの真相ルートです。
乙女ゲームなのに誰とも恋人にならないルートが一番好き、ってどうなんだ……という感じもありますが、分岐した時点で生きているネームドのキャラは誰も犠牲にならないし、ど畜生だと思っていた黒幕にさえ、一片の救いがもたらされる完璧なハッピーエンドですよね(でもど畜生であることも確かだと思う)。
フラグ管理的には、他のエンディングを全て見ると開放なのかな、と思っていたのですが実はアッシュルートを進めている時に既にルートが開いていて、間違えて一度真相ルートに進んで引き返した経緯があったため、何か他の条件があるのかもしれません。開放されてしまった今では検証しようがないため謎です。
ミカのステータス上昇に関わる黒い羽についても分岐に関わっていると思われますが、白がモチーフカラーであるミカの羽が黒く染まる、というのは何を意味しているのか。
殺人の冤罪をかけられただけの無実の少女が生き抜くため、仲間を守るために自ら手を汚し、法を犯していくことで黒く染まっていく、ということなのか、あるいは何物にも染まらない黒という色がミカ覚悟や意志の強さを表している……という解釈もあるかもしれませんし、彼女の中ではそれはイコールなのでしょう。
始まりの家で、他人の食べ物を漁る行為を躊躇っていたミカが「食べる」という決断をした時、アッシュからそれすらも「流されているだけ」と言われた時には「どうしろっていうんだよ」と私はキレそうになりましたが、ミカは真摯に向き合ってきましたからね。
真相ルートでついに覚醒したミカが、みんなを引っ張っていく頼もしさに涙を禁じえません。
真相ルートで新たにわかるのはミカの家系と、組織との関わり、そして宰相《チャンセラー》の過去とビショップの正体、アイーダの秘密、そしてカルロスの本当の肩書きあたりですね。
わざわざ公式サイトに載ってるわりにほとんど出て来なかったアイーダが駆け付けるシーンは本当にびっくりしました(びっくりしながら、アッシュルートへ戻っていき、しばらく冷静さを欠いた人)。
とにかくアイーダが頑張ってくれたお陰で道が拓けて、始まりのパルマのお家で仲間たちと再会するシーンは本当に胸熱でした。
バチカンの地下でのシーンや、船上のラストミッション……どれも物語のクライマックスと言っていい盛り上がりで、そんな中でも滑稽な会話を繰り広げて、キメる時は全員ビシッとキメる。この七人が一緒でよかった、と心から感動しました。
ラスト、一応カルロスの下でお仕事をすることになったらしい七人が、そんなことはどうでもいいとばかりに、隠れ家でわいわいパーティーの支度をしているシーンで終わるのですが、私はずっとこんなエンディングをこそ見たくてこのゲームを遊んでたような気がしました。
なんとなく「ブレーメンの音楽隊」のようだな、とも。社会からはじかれて行き場のない者たちが導かれるように集まって、新しい家を見つける物語ですよね。
どのキャラクターも魅力的だから個別ルートも素敵だったけれど、全員揃うとその魅力が1兆倍くらい膨れ上がるし、ずーっとみんなでいてほしいし、このチームの活躍をもっと見たいです。
ぜひぜひ真相ルート後を描いた続編をよろしくお願いします……!!
■最後に
これでもかなりかいつまんだつもりなのですが、余裕で10000文字を超えてしまいました……最後まで読んで下さった方は本当にありがとうございます。
どう考えても度を超えたデスペラ大好きっ子か、もしくは関係者しか読まないと思うので、心の中で握手をさせてください。
素晴らしいゲームとともに2024年を迎えられてとても幸せでした。
「デスペラ」がもっともっと多くの人に届くことを願っています。ありがとうございました。
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