令和のアンジェリーク『アンジェリークルミナライズ』体験版をプレイして感じたこと
※どちらかというと「アンジェリーク」シリーズの過去作プレイ済の方向け。ゲーム中の専門用語、固有名詞、人名が特に説明もなく出てくるのでご了承下さい。
2021年5月20日、コーエーテクモゲームスの老舗乙女ゲームブランド「ルビーパーティー」より「アンジェリークルミナライズ」が発売されます。
「アンジェリーク」シリーズの第一作は乙女ゲームというカテゴリが生まれる以前、1994年にスーパーファミコンソフトとして誕生しました。
その後続編や派生作品、メディアミックスにリアルライブと展開し、特に2000年代は爆発的な勢いのあったシリーズですが、リメイクや移植こそあれど、長らくの間、完全新作が発売されることはありませんでした。
しかし25周年の節目に「アンジェリーク」シリーズは、ついに動き出し、圧倒的に攻めたコンセプトの作品を令和日本に打ち出して、こう呼びかけました。
「急募、女王候補――」
■読み飛ばしても問題ない私のアンジェリーク歴
私自身が本シリーズに初めて触れたのはもう少し後でした。スーパーファミコンは持っていましたが、まだ子どもだったこともあってゲーム情報に明るくなく、存在自体を知らなかったのです。
数年後、購読していたアニメ雑誌の「アニメディア」にPC-FX版「アンジェリークSpecial」の特集連載が載ったことと、同誌に投稿されていたファンアートがきっかけで本作の存在を知りました。
どうしてもプレイしたくて、PC-FXをお小遣いとお年玉を一年貯めて買う、というレアな経験をした小学生となり、同じくPC-FXで「ふしぎの国のアンジェリーク」「アンジェリークSpecial2」「アンジェリーク天空の鎮魂歌」をプレイ(「鎮魂歌」は後に大幅に改修されたPS版もプレイ済)、その後SS「アンジェリークデュエット」、GBC「スウィートアンジェ」、PS2「アンジェリークトロワ」……ここまでは大体リアルタイムでプレイしてきました。
そこからしばらく飛んで第一作のリメイク「アンジェリークルトゥール」もプレイ済み。
全タイトル完走ではないものの、青春時代を「アンジェリーク」と過ごし、「アンジェリーク」の新作に合わせてゲームハードを買ってきた私にとっては、机の引き出しにしまって時々は眺めていたい、そんな宝物のような存在です。
「アンジェリークルミナライズ」、略して「アンミナ」発売の一報を聞いて、「アンジェリーク」の新作、それも新たな宇宙の女王試験を体験できるという喜びと、「アンジェリーク」の新作を私は楽しめるだろうかという不安が同時に襲ってきたのは、それだけこのシリーズへの思い入れがあったからだと思います。
■旧来のシリーズとはあまりにも違いすぎる「アンミナ」
長寿シリーズをメインで支えているのは長年のファンですが、同時に新規ファンを獲得出来なければいずれ立ち行かなくなると思います。
「アンミナ」は令和の時代にチューンナップした世界観をもって、新規ファンを「急募」しました。「なろう系」小説の愛読者が興味を持ちそうな物語の導入、キャッチーなキャラクターデザイン、無駄を省いたスマホゲーのようなサクサク遊び易いUI、更にTwitterやLINEを活用したさまざまなプロモーション、サブスクでのキャラクターソング配信などなど……多数の挑戦を行っています。
これが実際に新規ファンに刺さっているのかどうかはまだわかりませんが、どうにか成功していてほしいと願うばかりです。
「アンミナ」は新規獲得のために旧来のファンを切り捨てるつもりはもちろんない筈で、第一作に登場した神鳥の守護聖と絡めたりと、こちらへのアピールも行っていました。
ただどこを切ってもあまりにもこれまでと作風が違うので、新しい情報が出るたびに戸惑ったり、ついつい懐古して「昔のほうがよかった」とか年寄り臭いことを言いそうになってしまうのも本音でした。
それでも発売が近づくに連れて期待は膨らみ、ステラワースでBOXの予約をしてからは待ち遠しくて仕方なくなり、体験版が配信されるとすぐにダウンロードしてプレイしました。
体験版の最終日までを一通り終えて、ようやく過去作ファンの立場で「アンミナ」をどう向かい合い、どう楽しんでいくのかがはっきりわかった気がしました。
■過去作の常識が通用しない「アンジュ」というヒロインと、彼女を受け止めた彼ら
過去作で女王候補に選ばれたヒロインたちは「主星」という星で育った「女子高生」でした。
「主星」は女王陛下のお膝元で、そこの住民にとってみれば女王や守護聖は神のような存在ではあるが確かに実在していて、代々女王を排出している「スモルニィ女学院」なる施設があります。
女王の加護を知らぬ者や、守護聖の力を疑う者などおらず、いちいち説明する必要すらなく、ヒロインは女王候補という立場を(自分が選ばれたことに驚きはしつつも)すんなり受け入れます。
しかし「アンミナ」のヒロイン「アンジュ」は違います。彼女が生まれ育った辺境の惑星「バース」では、女王と守護聖の存在は伝承としてごく僅かに伝わるのみで、到底実在感のないお伽噺に過ぎないのです。しかもすでに25歳の社会人という立場で、お伽噺に夢を見るお年頃でもないんですね。
過去作ヒロインにとっての「常識」はアンジュにとっての「非常識」で、過去作ヒロインにとって「神秘」であることは、アンジュにとっては「不条理」に過ぎないわけです。
そんな彼女に如何にして女王候補の立場を受け入れて貰うのか、彼女が不自由なく暮らすにはどうすればいいのか――守護聖やサイラス、タイラーらが一生懸命考えた結果が、この「アンミナ」という作品の過去作からの様々な変化なのだと思います。みんなで彼女の側に最大限歩み寄ったわけです。
守護聖たちは、強ばった顔をしたアンジュに、タメ口呼び捨てで気楽に話すように言い、まるで同じ会社の同僚のように接します。
サイラスはタブレット端末のようなツールを渡し、ネット通販やポイントなど、アンジュにとってなじみのあるものを積極的に生活に取り入れようとしているように見えます。
辺境で生まれ、辺境の文化の中で成人まで暮らしてきた女性が故郷を離れて中央で暮らさなければならなくなったという状況において、彼女に異なる文化を押し付けることをけしてせず、尊重しているんですね。
物言いが尊大だったりキツめな人もいますが、基本的に守護聖は皆女王候補に優しく、会話の中で価値観が違っても頭ごなしに否定したりせず、そういう考え方もあるのか、と受け入れてくれます。
そうした優しさの中で、アンジュ自身も女王候補として自覚が芽生えて成長していく――そんなドラマがこの先も描かれるのではないかと思いました。
「アンジェリーク」の令和に対応したチューンナップとは、作品世界においても必然的な、意味のある変化であったことに私は深く納得しました。
そして一シリーズファンとしても、排他的になったり懐古的になり過ぎたりせずに、変化を柔軟に受け止めていきたいと感じました。
過去作とのギャップで笑ったり、過去作との繋がりに感動できるのは昔からのファンの特権なので製品版でも思いっきり楽しもうと思います。
■その他、体験版で感じたことを細々と箇条書きで(若干ネタバレあり)
●レイナがかわいい。完璧超人と見せかけて友達がいなかったので、アンジュと仲良くなれてめっちゃ嬉しそうにしてくれるのでこっちも嬉しい。アンミナデュエット待ってます。
●初回だからチュートリアルを履修したこともあるが、体験版の半分くらいはサイラスと喋っていた気がする。サイラスの主張が強い。異常にテンポがよくシュールな会話が多いが、たまにいい声で意味深なことを言って来るのでゾクッとする。
●過去作では♡1つ増えてもできる事が少なくて持て余しがちだったが、かなりできることが増えた。デート内容で♡の減少数が違い、デート後に活動できるのもよい。♡をエナドリで回復できるというのも現代的バース的で面白いが、しっかり翌日に副作用もあるのがリアルでよい。
●デートの翌日に執務室に行くと「昨日は楽しかったね」的なことを言ってくれるのが結構嬉しい。この守護聖たちマジでめっちゃ気を遣ってくる……。
●タブレット端末みたいなものもホログラム的な技術も登場しているのに、通信手段はアナログのお手紙(封蝋つき。ただし妖精に頼まないし、山羊にも食べられない。多分)。女王候補たちのスマホも没収されて返ってこない。スマホは圏外だとしても、飛空都市は通信機器の使用禁止なのか?? これが何かの伏線だったらすごい。
●令和の現実社会が、異常気象、災害、ウイルス蔓延と、大変な状態なのでバース(というか宇宙)の危機の説得力があり過ぎる。メーカーもそんなリアリティは求めてないし予定していなかっただろう。
●オープニングやコミックの印象で、ちょっと甘ちゃんで人として迂闊な印象だったアンジュだが、本編ではどちらかというとツッコミ役で、それなりにしっかりしている。契約書の件も、酔った状態でサインした書類は無効だと一応きっぱり主張しているので、シラフなら判断力に問題はない。カナタの年を聞いて、高校生を部屋に上げてしまったことにショックを受けるなど、倫理観もちゃんとしている。
実際、未熟な面もあるが本人も自覚していて「ただ流されてちゃいけない」と変わろうとしているのでこれからどんどん成長するのは間違いない。
●育成が少し過去作より複雑になって、民の望みとはべつに力のバランスも取らなければまずいらしい。まだ序盤なので問題ないが、後半贈り物ラッシュになったらどうバランスを取っていくのか気になるところ。
何か思いついたらまた追記します。
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