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Zilvermeercross 2024 | エッセイ
私はサイクリング、それもロードレースが大好きです。が、哀しい哉なんともオフシーズンの長い競技で、10月以降は翌2月まで主だったレースがありません(と書いてしまうとオーストラリアに怒られそうですが…)。
応援しているサッカーチームは負けが込んでいるし、年末で息つく暇もないほど忙しいのに風邪をひいてしまうしで、身体ともに落ち込んでいたところ、我らがWout van AertがZilvermeercrossに出場することを知りました。
ロードレースはオフシーズンなのですが、どうやらそれと入れ替わりでサイクロクロスがシーズンらしいのです。でもサイクロクロスってなに? というのが正直な最初の感想でした。
調べてみれば、サイクリングのクロスカントリのようなもので、泥や砂のコースを時に自転車を担いで走ったり、マウンテンバイクの要素もあったりする、かなりアスレチックな競技であることがわかりました。
指折り楽しみにして、いざライブで観てみると、van Aertは出ておらず、知っている選手はMathieu van der Poelだけ(略してMVDP)。とはいっても彼も突出した選手で、ロードレースではスプリンタとして活躍しています(最近はリードアウトが多いけど)。
サイクロクロスもやっていることは知っていましたが、少し調べてみればそっちの方が戦績は華々しいのですね。20年のプロ競技中、世界・欧州・国内併せて、15回のチャンピオン歴を誇っているではありませんか。これは期待大です。
Zilvermeercrossは、ベルギの北部、オランダとの国境近くのMolという町で開催されます。アントウェルペンの東部で、Zilvermeer (直訳でSilver Lake) の周囲1周3kmのコースを10ラップします。
レース開始直後、先頭集団は10人ほど。天候はあいにくの雨。
MVDPは4位につけて、目立った動きはありません。
後続ではクラッシュがあったり、砂や急斜面でスローダウンを余儀なくされたりと、どんどん差がついていきます。周回遅れになった選手はフィニッシュライン手前でコース外に捌かされて、レースが進むにつれて人が減っていきます。なんとも容赦ないレースです。
動きがあったのは、4周目。
MVDPがペースを上げて、ついて来れたのはSweeckひとりだけ。しかし、あと6周もあるのにこのペースをキープできるのか? 観ているだけで疲れるコースに私はやきもきしたのですが、そんな心配は無用でした。
MVDPはその後も5:50台(もしくはそれ以上)のペースを維持しつづけて、2位に1分以上の差をつけて悠々とゴールしたのです。そう、悠々と。フィニッシュラインを通過したとき、疲れた様子なんて微塵も見せませんでした。最終ラップは流していた気さえします。
彼の強さは、なんといっても脚力です。
他の選手が遅くなったり歩いてしまうような場面でも、漕ぎつづけていけるのです。Zilvermeerの湖岸の白砂を単独疾走するMVDPは風神のようでした。
今回はMVDPの圧倒的な強さを見せつけられたわけですが、レース中にひとり日本人の選手も見かけました。Tetsuki Kajiという選手です。UCIのレースではアジア人自体見かけることが少なく、ましてやサイクロクロスとなるとさらに少ない気がします。次回は、26日のUCIワールドカップに他2選手とともに出場するようなので、ぜひがんばっていただきたいです。
それでは、テンションが上がった勢いをキープして、このまま風邪を治してしまいたいと思います。趣味の話につき合ってくださってほんとうにありがとうございました。
皆さま、良いクリスマスをお過ごしください。