自分の居場所を模索中の彼女
気の置けぬ 友と語らう 席ゆえに
ついつい選ぶ ベリーニの味
まだ、屋外でノースリーブや半袖を着ている人が多く見られる頃、昨冬から訪ねると言っては、約束を果たせていなかった友人家族と会う約束をした。
黒地に葡萄色や青緑の細かい点描のようなデザインのノースリーブワンピースは、フランスのメーカーのものだが、ややもすると着物の柄のようにも見える。わたしはほとんど外出時にノースリーブでは出かけないので、薄手の白地にフラワーモチーフのブラウスを羽織った。
出かける準備で急いでいたら、間際に友人から電話が来て、遅れぎみとのこと。それはちょうどよかった!わたしもその方が助かる。元の約束の時間の十五分後にと。
待ち合わせ場所はジェラテリアの前だった。
あ、ジェラートを食べるのか!と、ジェラテリアのジェラートはしばらくぶりなので、こころもち小躍り。
先に着いたようで、もしかして店内にいるかも?と見てみるが、出て来たのは別の人たちだった。
すると、再度、着信あり。
車を駐車しているところだと。
こちらが移動した方がいいかと尋ねると、じゃあ、そうしてくれる?と、公園前の指定。
うーん、もしかして、〈ジェラテリアでジェラートを食べる〉から〈公園で子どもを遊ばせる〉に変更かな?と思ったものの、よく考えると子どもはまだ赤ちゃんなので、遊具で遊べないか。
わたしが公園前に着く方が先だったが、ほどなくして友人家族がやって来た。
友人妻は、白地に細かな模様の入ったストラップ付きのオフショルダーの軽やかなワンピース姿。
実は実際に顔を合わせたのは、結婚式に次いで二回目。その時と電話でちらっと話したぐらいだったので、彼女の方から色々話し出してくれた。相手について大まかにしか知らない場合、その人について知るためにはたくさん尋ねることがあるものだ。
彼女はヴェローナ近郊出身なので、まずは、ジェノヴァ/リグーリア州とヴェローナ/ヴェネト州での違いや状況について。そして、日本のことや、彼女の姉家族が在住していて、彼女も大学時代を過ごしたというミラノのこと。次いで、こちらに来る前に生活していたロンドンのことなど。
そういった話題を歩きながら話していたが、最初に約束していたジェラテリアの前まで来て、さあ、どうするか?となり、甘いものよりしょっぱい系がよいというので、アペルティーヴォをすることに。
まあ、それが順当な選択だろうなぁと、ジェラテリア案が出る前は思っていた。なぜなら、たいてい、時間帯的にはそうだから。ジェラテリアで待ち合わせなのは、子どもに合わせてかと思っていたけれど、もう、ジェラートを食べられるのかどうか?
友人夫妻はスプリッツを、わたしは少し考えた後、ベリーニに。サングリアや他のカクテル名もウェイターさんの口からはあがっていたが。
アルコールでなくてもよかったのだけれど、つい雰囲気で。
前から耳にはしていたけれど、彼女はロンドンからこちらに移住して来てから二年弱ぐらいになるものの、なかなか馴染めないでいると言う。
もともとの地元は別として、その後、ミラノやロンドン暮らしだったので、その都会の環境が未だに恋しくてツラいようだ。
自分のしたい仕事ができ、自分のコミュニティーがここでも形成されて来ると、同じ場所でも居心地はきっと変わって来るのだろうけれど。そこにたどり着く前で足踏みしていて、きっと歯がゆくて仕方がないのだろうな、と。
また、会って話をする機会があればいいなと思う。