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音楽: Ballad #1 | Taylor Dayne - Love Will Lead You Back

ふとある時 街角や喫茶店で無限リピートされている 未詳の古い楽曲が 耳から忍び寄ってきて 妙に気になることがある というお話です。


ひと月ほど前の飲食店で流れていたBGM。
80年代後半頃の とあるバラード。
薔薇色の将来をお気楽に夢想していたような泡沫経済ニッポンの一角に MTVを経由して現れるアメリカの女性シンガー達の歌唱があった。

小説の内容ではなく「存在の耐えられない軽さ」という二つ名が似合う あの時代。
こういった曲を聴くと 条件反射的にあの頃の浮かれすぎた世相が蘇ってくるけれど 無論 音楽自体に罪はなし。

その当時は似たような曲が多くて 食傷気味で特に気に留めていなかったが その幾つかを紐解く時期が今になって巡ってきたのは 長い時間の経過で変化した自分の内面の働きでもあるのだろう。


、、、、、この曲って、、、誰が歌ってたっけ? 
曲の感じだと Whitney Houston(以後WH)なんだけど。。。。

Google検索で曲と持ち主がわかったけど -- Taylor Dayne?

ああ、、、居た、かな? こういう人。
例えば WH のような女性シンガーは あの時代 巷に溢れまくってて食傷気味だったし このジャンルのアメリカの音には興味なかったんで ピンと来ない。

視覚的情報すら記憶になし


うーん 遠い昔に このMusicVideo 観たのかなあ。。。。

でも ああ なるほど。
これはいい。

30年も経って 自分が曲に追いついた。

80年代のこのカテゴリは単純なメロディラインの曲で飽和しているのかもしれないけれど ストレートな歌詞とシンプルなリフレインに力点を集中させているのが潔い。

検索したサイトやYouTubeのコメント欄には " underrated " (過小評価された) の言葉が目立つ。
WHの露出度や知名度に比べれば 存在感がないと思えるし 所属する音楽会社のプロモーション度や持ち歌も彼女への評価に影響しているだろうけれど そのように好意的な声が多いのは 音楽産業の仕掛けに依存しない彼女の素の実力の故だろう。


[Verse 1]
Saying goodbye is never an easy thing
But you never said, that you'd stay forever
So if you must go
Well, darling, I'll set you free
But I know in time that we'll be together

[Pre-Chorus]
I won't try to stop you now from leaving
'Cause in my heart, I know

[Chorus]
Love will lead you back
Someday, I just know that
Love will lead you back to my arms
Where you belong
I'm sure, sure as stars are shining
One day, you will find me again
It won't be long
One of these days
Our love will lead you back

[Verse 2]
One of these nights
Well, I'll hear your voice again
You're gonna say how much you miss me
You walked out this door
But someday you'll walk back in
But darling, I know, I know this will be

[Pre-Chorus]
Sometimes it takes
Some time out on your own now
To find your way back home

[Chorus]
Love will lead you back
Someday, I just know that
Love will lead you back to my arms
Where you belong
I'm sure, sure as stars are shining
One day you will find me again
It won't be long
One of these days
Our love will lead you back

https://genius.com/Taylor-dayne-love-will-lead-you-back-lyrics

<DeepL翻訳+修正>

[Verse 1]
別れを告げるのは決して簡単なことではない。
でも あなたはいつまでも居るとは言わなかった。
そう、行かなければならないなら
ダーリン、あなたを自由にするわね。
でも そのうちに私達は一緒になれるわ。

[プレコーラス]
私はもうあなたが行くのを止めない。
心の中で 私は知っているの:

[コーラス]
愛があなたを私に導くことを。
いつか -- 私は知っているの
愛があなたを私に導くことを。
あなたが居るはずの私の腕の中に。

きっと、星たちが輝いているようにきっと、
あなたは再び 私を見つけるの。
そう遠くないいつか
いつの日か 私たちの愛があなたを連れ戻す。

[Verse 2]
いつの夜にか
私はまたあなたの声を聞くだろう。
私が居なくてどれだけ寂しかったか と。
あなたはこのドアを出て行った。
でも いつかまた歩み入ってくる。
でも ダーリン、わかってる、わかってるの:

[プレコーラス]
時には あなた自身の時間が
家に帰る道を見つける時間が必要だと。

[コーラス]
愛があなたを私に導くことを。
いつか -- 私は知っているの。
愛があなたを私に導くことを。
あなたが居るはずの私の腕の中に。

確かに、星たちが輝いているようにきっと、
あなたは再び 私を見つけるの。
そう遠くないいつか。
いつの日か 私たちの愛があなたを連れ戻す。

* * * * *

待っても戻って来るはずがない相手 そう感じていながらも 挫けず自分を鼓舞し 再び会えると自分を信じさせる独白。
そうせざるを得ない凛々しい姿と 悲哀とのコントラストに 聴衆は自分の記憶や共感を重ねてしまう。


、、、どう聴いてもこの音の雰囲気はWHなんだよなぁ、、、 と疑問が残ったのだが あるネット記事で 当時のヒットソングメーカー Diane Eve Warren が手掛けたこの曲 元々WHに提供予定だったと知り 納得。

彼女が歌えば アドリブなどで表現される音の帯域は更に増えていたかもしれないが この曲は既にこの人のものだ。


よくある お気に入り曲の紹介 はここまで。

そして
この記事を投稿したくなった理由はここから。

1962年生まれの彼女が
今もなお 往時の声量をほぼ失わず 当時の外観をもあまり逸脱しないよう
シンガーという職業の中に堂々とあり続けている様子が 幾つかの動画から伝わってきた。

たとえば 約十年前の動画がこちら:

オリジナルからぐっとソウルフルな誂えになった曲をしっかり聴かせ 聴衆を湧かせ 手を差し出すファンに壇上でしゃがみ 触れながら接する様子が
実戦経験の豊富さを代弁している。
所属の音楽会社が ぱっと見だけで売り込むようなアイドル歌手の三十年後とは違う エンターテイナーの経験と迫力がステージにある。

自分のような市井の人間の仕事や生活態度も 長い時間の波をくぐる。
自身の価値を模索しながら 日々移り変わる現状に身を委ねつつ 自己肯定感や承認欲求と折り合いをつけ どうにかこうにかその時々の課題や困惑を凌いでいく。
年齢に比例して憔悴や諦念は増すが 職業や所属する社会を問わないその営みは 誰にとっても覚えのある いまどきの社会の副産物だろう。

浮沈激しいアメリカのショウビズ界にも 同じような思いで過ごす彼女のような人が当然存在していておかしくはないが ショウビズやスポーツの世界では一般の仕事よりも 直に 能力と経験が持つ凄みが伝わり易い。

しなやかに強く 長く 自身のいくさ場に腰を据え 女性という性が持つ包容力と 内側から輻射してくる陽光のような力強さ 眩しさを目の前にして 長いブロンドのサムライに背筋を正された。


追加で 去年撮影の動画がこちら:

ホール/箱は先の動画より狭そうで場末っぽいが 歌ってナンボの世界では些事だろう。彼女のスタイルとパフォーマンスはここでも変わらない。

(非公式/非合法な動画で手振れが酷いが そこは割引いて)
お客さんを掻き回し湧かせる百戦錬磨の安心感、大きな口(=自分の辞書では褒め言葉)から放射される音のエネルギー、温かな笑顔を観ていると 意識せずとも元気をもらえる。

映像から 10年前よりだいぶ肉体のサイボーグ化が進んでいるようだし(=個人的には肯定しないけどこういう職業だから。。。。)、ハランみたいな付けまつ毛には目を瞑るとして。。。

# それにしてもこの ロングヘアー x ボディコン x 膝上ブーツ の方程式。。。。
# 80年代バブルニッポンに存在したお姉さん方のご元祖様なのか。。。。


彼女に限らず

年齢なんて 価値判断の基準にならない。
日々の面倒に対峙しつつも 笑顔で受け流し
逞しく円熟していく 今のあなたが 最も美しい。



<おまけ>
ドキュメンタリー風の動画も発見。
観た感じ 落ち目のミュージシャンを専門チームが再生させるシリーズもののひとつのようです(VH1のプログラムなんでしょうね。)

FloridaのDisneylandの中で公園に併設されたようなステージに上がり 昼間から時間に追われながら 短い埋め草的ルーティンパフォーマンスを繰り返すシングルマザーのTaylorD。 
怠惰な日常に染まってくたびれたような彼女を再生し 第一線パフォーマーのレベルに引き上げるべく 衣装担当、ダイエタリー/フィットネストレーナー、プロデューサー、美容整形医師、美容師、振付師、等々の夫々の分野で一線級らしき再生チームのメンバーが協力する姿をエンタテインメント化しています。
*ボトックス治療よりも付け毛の交換に驚き。こういうもんなのか。。。

アメリカの娯楽番組なので 関係者は総じてポジティブなコメントに終止するものだとは理解しつつも 彼女の友人が迷いなく 「伴奏のギターでなくTaylorの歌が聴きたい、彼女の歌は昔より良くなっている」 と語るように ヴォーカルの才については誰もが認めているようでした。

そして 歌唱力とは別に この年齢層の多くのアメリカ人がまだ持っているであろう 陽気で他人との垣根が低く人好きのする感じが 彼女のあっけらかんとした魅力だなぁ と感じました。

元気なおばちゃんも 元気なおじちゃんも 可愛いもんです。
♬ 他人に愛されることが あなたを導くでしょう ♬

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