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チイキをつなげるケーキ

モンブランのおかげで、こんなに人を感じることになるなんて、意外だった。

僕は、栗好きで、ケーキ好き。つまり、モンブラン(以下、モン)が大好きだ。モンが好き。好きなケーキはモン。モンの季節が来た。モンモン言い続けていたら、妻が呆れて、友人に笑い話として披露してしまった。

すると、あろうことか、市内にあるケーキ屋さんのモンを集めて、地域の方々と食べ比べよう!というイベントが開催されることになってしまった。

当日を迎えて、ひとりの参加者のつもりで向かうと、実は運営側として数えられていて、慌ただしい準備ののち、必死にモンを4等分するという作業に没頭することになった。

企画の発案者でしょ、と言われれば反対はできないし、なにより、このイベントを誰よりも楽しみにしていたという自覚もある。

集めたモンは、市内7店の力作たち。胃袋の都合から、切り分けて食べ比べることになっていた。

集まった方々は、まさに老若男女。口を揃えて「モンが好きなんです」という参加者の皆さんは、お客様ではなく同志たち。年齢関係なく、好きなものを分かち合えるのは、とても幸せなことだ。

それぞれの店のモンを並べると、意外にも、似ている外観のケーキはなかった。ショートケーキには決まったスタイルがあるようだけど、モンは違っていた。

クリームの色、盛り付け方、栗が乗っているか、台は何か。お店の工夫や愛が、すべてのモンから感じられた。メッセージもいただき、読み上げられるたびに、作り手の熱い想いが伝わってきた。

イベントの前半は、モンを4等分する作業に没頭していたけれど、試食しているときの表情を見かけたり、コメントが聞こえるたびに、嬉しくなった。

「それぞれ違いはあるけれど、モンって美味しいケーキなんだ」と、あらためて思いを馳せる時間を過ごせたことは、とても幸せだった。

イベントの帰り道、心地よい疲れを感じながら気がついたことがあった。

モンブランのおかげで、こんなに人を感じることになるなんて意外だった。

地域の皆さん、作り手のお店、企画してくれた妻と友人、さらには消費者としての僕。

イベントの趣旨として1位を決めた。
でも、どの店も食べた人を幸せにできる、また食べたいと思えるケーキだった。

「新たな魅力に気付いた。」

と言ってくださった参加者の嬉しそうな顔を思い出しながら、この話を書いた。

ありがとう、モンブラン。
大好きだよ、モンブラン。


熊木産業株式会社主催
「栗屋大賞 栗のエッセイ部門」応募作品

2019.11.3
@おくりびとのお葬式 稲城

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