オルガン部はどこですか #書もつ
いつのまにか、街中の雰囲気はクリスマスに。今日からは、クリスマスどころか年末ムードなんて言葉も聞かれるようになりました。まだまだ今年を過ごしたい・・。
クリスマスの音楽といえば教会音楽がその発祥でもあるのではないでしょうか。クリスマス自体がキリストの生誕を示した日であり、教会で奏でられる音楽はクリスマスのための音楽でもありそうです。
教会といえば、オルガン。
ピアノとは違う、重厚で伸びのある音が魅力です。足踏み式のオルガンが小学校の教室にあった、という方も多いかもしれません。
聖夜
佐藤多佳子
キリスト教系の学校で、オルガンを弾く、それは名誉なことであるのかもしれません。青春、なんて簡単に言い切れない日々を過ごす彼らの物語・・なんとなく体育会系なイメージのある作家さんの、音楽を題材にした小説。
オルガン部なんて部活があること、そしてそこで活動することの意義のようなものを読みました。英才教育だなんて聞こえはいいけれど、本人の思いってどこにあるのかな・・と親として心配になるような面も感じられました。
ミッション系の学校での過ごし方もよく知らないし、まして、家が教会だなんてもっと珍しい存在であるように思います。小説で、そういう知らない世界を見ることは興味深い体験ができます。
知りたいと思うことではないけれど、それぞれの家に事情ってあるんだなと思いました。子どもたちは、それを踏まえて学校で過ごしているのだとしたら、普通の家庭ってなんだろう・・なんて考えてしまうのでした。
読み手の年齢によって、受け取り方が違うであろう作品。またいつか読み返してみたいです。
何を選ぶのか、何が残るのか、それはその時にしかわからないものですが、彼らがオルガンにかける情熱のようなものが、例えば短距離出会ったり、落語であったり、この作家さんの眼差しにハッとするのでした。
決して想像だけでは描ききれない世界を、瑞々しく読ませてくれたことは、同じ年頃の自分を重ねて懐かしい気持ちになりました。クリスマス・コンサートというこの物語の結末が、読者に委ねられているような終わり方には、作家が羨ましいと思うのでした。