そこに自転車があった
雨が降っている・・あの自転車は大丈夫かなぁ。
放置自転車と聞くと、つい思い出してしまうのは、昔の地元の駅前の風景です。もちろん駅によって違いはあるでしょうけれど、駅前に夥しい数の自転車が停められていたのを記憶している方もいるはずです。
正しい駐輪場ではないと知りつつ、”みんな停めているから”・・と並べて停めていくと、いつしかそれはとんでもない長さになり台数になっているものです。そこには、果たしてこの自転車は本当に駐輪されていて、持ち主がいるのだろうかと不安になるような、放置自転車だらけの駅前が出来上がっていました。
いまは、駐輪場が整備されていて、嘘のように自転車の姿が見えなくなりました。時代的にも自転車を所有する意識は薄れていることもあります。
ある日、近所の公園のそばに自転車が停められていました。ちょっと目を引く、やや明るい緑色のフレームと、ストレートハンドル。その時は、公園にいる人が停めているんだろう、くらいの認識でした。
しかし、夕方にも同じ場所にありました。そして次の日も、また次の日も。
気がつけば1週間もの間、そこに置いてあるのです。乗っていた誰かが、ちょっとだけ停めているような、すごく軽い雰囲気をまとって。停めている場所が、やや人目に付かないというのと、停め方がとても綺麗なのです。地面以外はどこにも触っていない。普通、乗り捨てられている自転車なら、柵や壁などに寄りかかっていたり、どこかが壊れていたりするものですが、きちんとそこにある、感じでした。
SNSにある地域の掲示板に、放置自転車の情報を掲載しようと、その自転車の写真を撮って、書き込みました。防犯登録がしてあったので、警察に聞いてみては・・とアドバイスされたものの、僕の家の前に停められているわけでもないので、おそらく住んでいる家の管理会社と思われるシールに書いてあった社名をググって、その会社に直接問い合わせました。
すると、メールした翌日には所有者に連絡していただき、その自転車が数日前に盗まれていた事が判明したのでした。近日中に引き取りに行きます、とお話されていましたよ、と伝えてもらいました。思ったよりも素早い対応に驚くとともに、動いてよかった・・と思いました。
そのメールが来たのは、今週の月曜日のこと。
自転車は、まだ、きちんとそこにあり、ます。
変わった部分としては、市の「違法駐輪ですから、すぐに移動してください」といった通知分が貼り付けられていることくらい。そこに書かれた締め切りは、6月9日でした。
雨の金曜日・・持ち主は、現れてくれるでしょうか。