彼女の意思
魔王の指が女勇者の髪を梳き、彼女の耳元で低く囁いた。
「あなたの剣は鋭いが、私の言葉はもっと鋭い。ここに来た理由は何だ?」
女勇者は魔王の目を真っ直ぐに見据え答えた。
「あなたの支配を終わらせるため。それ以外に何があるのでしょうか?」
魔王は笑い、彼女の肩を軽く押さえつけた。
「ほぅ?そうか... しかし、どんなに勇敢でも、一人では私に勝てないだろう。仲間はどこにいる?」
「彼らは私の戦いに手出しはさせない」
と、女勇者は言い返した。
「これは私とあなたの戦い。戦士としてのプライドをかけて」
魔王は一歩後ろに下がり、彼女の姿を眺めた。
「プライド…か。だが、私はあなたのその目から別の何かを見る。恐怖や...もしかすると…欲情?」
「それはあなたの思い上がりでしょう」
と女勇者は声を上げずに反撃した。
「私はこの世の平和を望むだけ。今のあなたはその障害だ」
「平和、ね...」
魔王は再び近づき、彼女の頬に手を当てた。
「平和は弱者の夢。強者には弱者を支配する権限がある。あなたもその一員になれるやもしれないぞ...」
女勇者はその手を払いのけるように首を振った。
「私はあなたの支配の一部にはならない。私はみなの自由を得るためにここに来た。」
魔王はその決意を感じ、笑みを浮かべながらも、彼女の言葉に挑戦するように言った。
「自由か... しかし、自由は時に孤独であることを忘れるな。では、その無関係な人間たちの自由のために、あなたはどこまで戦う気だ?」
「必要ならどこまでも」
と女勇者は言ったが、彼女の心の奥底では別の感情が揺れ動いていた。
世界の平和のためには、勇者である自分との間に子を成すことで、今の魔王を変えることができるかもしれないという考えが彼女の内面にあった。
しかし、その考えの裏には、彼女自身が気付いていない好奇心や、魔王との禁断の関係への期待があった。
それを自覚することなく、彼女は魔王と対峙していた。
「私の剣だけでなく、私の体も戦う道具だ」
と言いながらも、彼女の声には微かな震えがあった。
「もし、あなたが父になることで、少しでもこの世界の平和に貢献できるなら...」
魔王は彼女の言葉を聞き、その奥にある真意を読み取ろうと目を細めた。
「そうか... それは面白い提案だ。だが、私がそのゲームに乗るかどうかは、まだ決めていない。」
彼の手が再び彼女の頬に触れ、彼女の体を引き寄せた。
女勇者は抵抗するかのように身構えたが、それが思ったよりも弱々しく、彼女自身もその理由を明確には理解していなかった。
魔王の唇が彼女の唇を強く塞ぐと、彼女の心の中でその戦いが別の次元に移行した。
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