日々を、淡々と生きる
1ヶ月住んだ福井を離れて2日。鹿児島に帰ってきて2日。夏休みもあっという間に終わり、昨日から後期が始まった。
もともと、あまり大学内で人間関係を築けていない私にとって、キャンパスライフは息苦しさを感じてしまうことが多い。
だが、そんなことを言っていたって時間は無情にも進んでしまうし、やらなきゃいけないこともたくさんある。だから、そんな日々が少しだけ辛くなってしまったときに見返せるように、ここに私が過ごしてきた1ヶ月強の移住生活と気持ちを残しておこうと思う。
不安と期待の県外インターン
細かい情報は省略するが、私は8月の2週目くらいから10月の初旬くらいまで、あるインターンで福井県鯖江市に住んでいた。
きっかけは普段お世話になっている先輩が、去年インターン(というかその会社がしているイベント)を紹介してくれたことだった。今年はお客さんで行くつもりだったが、ちょうどいいタイミングでインターンの募集が出たため、
「どうせ行くなら関わってみたほうが色々楽しそう」
と思い、募集が出た日に即応募。書類審査と面接を経て、無事合格した。
インターンの合格通知メールがきたときは本当に嬉しかったし、福井県はどんな土地で、会社にはどんな人たちがいるんだろう思うと、とてもワクワクした。だが、それと同時に、22年間ずっと鹿児島で生きてきた私が、見ず知らずの土地で生きていけるのだろうかと少しだけ不安にも思った。
そんなこんなで、不安と期待を胸に飛び込んだ福井県鯖江市という土地とインターン。ここから私の怒涛の県外生活が始まった。
初めての会社と初めての仕事と初めての共同生活
まず、鯖江に着いて一番最初に抱いた印象は、
「こじんまりした、のどかな街だな」
だった。(あと、鹿児島より圧倒的に涼しかった)
駅もコンパクトで、人通りもそんなに多くないが、地元チェーンのスーパーや薬局はあって、車がないと生活できなさそうな土地。よくある地方の街だなという感じだった。
でも、これまで訪れた地と違うなと思ったのは、街の至るところにメーカーや工房があること。工業っぽい油の匂いや漆の匂い、木の匂いが色んなところからした。
(今思えば、これからの生活の変化を本格的に感じたのは、街の匂いを感じた瞬間からだったような気もする。)
そんなことを感じながら始まった鯖江での生活は、会社の人が経営?運営?しているシェアハウスに住みながら、インターンをするというもので、私は鯖江についたその日から初の共同生活を送ることになった。
会社の人に駅まで迎えにきてもらってシェアハウスについた夜。シェアハウスの住人たちは、毎年インターン生を受け入れていることもあってか、「あぁ、今年の子達ね。」といった具合だった。
住人たちの構成は、インターン先の社員、デザイナー、転職活動中の人、鯖江のショップ店員、中学校の先生というなんともカオスな感じで、てっきり、シェアハウスの人は全員会社の人だと思っていた私は、まずここでびっくりした。そして、
「何をどうしたらこの人たちはここに流れ着くんだろう。」
と思った。
でもシェアハウスの皆さんは、こんな私を初日から温かく迎えてくれて、お部屋や布団も用意してくれていて、その日はぐっすり眠ることができた。
そして次の日。早速インターンが始まった。インターンは私を含めて全員で3人。その中で私は、会社が行うイベント全体の広報を一任されることになった。内容は主にホームページの更新とSNS発信で、ミッションはそのイベントの魅力を伝えて、当日の来場者数に貢献すること。
初めて広報面を一任されて緊張はしたものの、これまで、わりかし広報的な経験をしてきたこともあって、このときは、
「いっちょ頑張るか。」
くらいにしか思っていなかった。だが、この後の1ヶ月、私は怒涛の広報活動と苦しい日々を送ることになる。
強烈なホームシックと仕事への焦り
インターンが始まって3日くらいたったころ、強烈なホームシックに襲われた。(襲われるの早すぎるけど笑)
鯖江が嫌とか仕事が嫌とかそういうわけでは全くなくて、ただ純粋に鹿児島の空気と友達とご飯が恋しかった。鯖江での生活が始まって、仕事でも家でもずっと気を張っていたのもあると思う。
気持ちに限界がきた夜、思わず泣きながら友達に連絡した。(優しい言葉をくれてありがとう)
また、広報の仕事も思っていたより大変で、投稿しなければいけない事項をまず整理して、投稿スケジュールを引くところから始まった。
見たことも体験したこともないイベントを、お客様が来場したくなるように伝えるのは難しく、これまでのサイトやSNSから文言をコピーアンドペーストするしかない悔しさと作業量の多さには心も体もだいぶやられた。
でも、そんなことを言っていたってスケジュールには追われるし、他のみんなもそれぞれの仕事で本当に忙しいし、私は広報として仕事を任されているのでやるしかない。
この頃の私は、毎日鹿児島に帰るまでのカウントダウンをしては、その日数の多さに凹み、夜まで仕事をして、シェアハウスに帰ったら適当にご飯を食べて、お風呂に入って、死んだように眠るという生活を送っていた。
この頃は、心にも体にも余裕がなかった生活をしていたように思う。
一瞬の帰鹿と少しの逃避行
こんな具合で全体的に余裕がない生活を送っているとき、どうしても外せない用事があって一瞬だけ鹿児島に帰った。いつも仲良くしてくれる友達や先輩とたくさん会うことができて本当に楽しかったし、何よりみんなが、
「おかえり。」
と言ってくれたのが嬉しかった。
BBQしたり、ドライブしたり、語り合ったり本当に充実してたなぁ…。
改めて、鹿児島と、こんな私と仲良くしてくれるみんなを愛おしく感じた。
いつも付き合ってくれる人たち、ありがとう。
鯖江の愛おしさ
鹿児島に後ろ髪を引かれながら、鯖江に戻った夜、シェアハウスの住人が駅まで迎えにきてくれた。そして、シェアハウスの皆さんも
「おかえり。」
と言ってくれた。今思えば、この瞬間からだんだんと「鹿児島に帰りたい」が「ここでやることやって思いきり楽しんで終わろう」に切り替わった気がする。(遅いけど)
次の日からは、鹿児島に帰っている間に溜まった仕事を片付けつつ、イベント本番に向けて、どんなコンテンツの届け方や見せ方をすれば、よりお客様にイベント、ひいては鯖江の魅力が伝わるかを考えるようになった。
作業量は増える一方ではあったが、会社や地域の人みんなが本番に向けて本腰を入れて頑張っているのを見ると、自分も頑張らなければと思えたし、一つの目標に向かってみんなで走っている感じがやっぱり好きだなと感じた。
そんなこんなで迎えた、イベント前日。会場の設営も無事に終わり、あとは本番を迎えるだけという状態で、会社の人や参加企業の皆さん、ボランティアの人などなど、イベントに関わる人たちで懇親会をした。
集まったのは総勢60名ほど。それでも全体としては約半分くらいの参加率だったそうで、私はイベントに関わる人間の多さに衝撃を受けた。
みんなで卓を囲みながら、
「今年も始まるなぁ」
「お、久しぶりだね」
「初めまして」
といろんなところで交差する会話についていくのは少し大変だったけれど、こうやって一つのイベントにたくさんの人や想いが織り混ざって、大きなエネルギーになって、それが人を呼び込むのだなと、身を持って感じた。
人生の交点を創ること
イベントに関わる全員が満を辞して迎えたイベント当日の朝。関係者みんなで円陣を作って朝礼をした。そのときに会社の人が、
「日々、淡々と準備していたことが今日始まる」
と言っていて、それが本当に心に刺さった。
私は1ヶ月前からしかこのイベントに関われていなかったけれど、会社の人や参加企業の人、地域の人たちはこのイベントのずっと前から、なんならイベントがイベントとして確立するずっと前から、日々、淡々と自分のやるべきことをしてきている。
それを広報を任せてもらっている身として、絶対に伝えなければいけないと改めて心に刻んだ。
そして、なだらかに、でも確かな熱を帯びて始まったイベント。
RENEW/2023。
この3日間、私は私ができる精一杯の手を尽くして、1人でも多くの人にイベントそのものや、それに関わる人たちの熱が伝わるように努めた。
その中で、もう2人のインターン生と協力して、会場の雰囲気やコンテンツが伝わるよう、インスタライブをたくさんしたのだが、それをみてくださったお客様や企業の人が喜んでくれたのが嬉しかった。
また、実際に現場にいて、お客様がパンフレットを片手に、旅の計画を立てていたり、久しぶりの再会に喜んでいたり、子供達が駆け回っていたりするのを見て、本当に「場」や「人の繋がり」が持つパワーはすごいと思った。
そして、多くの人生の交点が生まれていく瞬間を創る側にいれて、本当に幸せだなと感じた。
受け入れてくれてありがとう
私は諸事情あって、イベントを最後まで見届けることができず、イベントの最終日の午前中にはイベント会場を離れた。
そのときに、同じインターン生は泣いてくれて、シェアハウスの皆さんは「ここに住みなよ。帰らなくていいよ。」と言ってくれて、会社の皆さんは「いつでも帰っておいでね。」と言ってくれて、寄せ書きと素敵なポストカードをくれた。
会場、そして鯖江から離れるときは本当に涙が止まらなくて、シェアハウスの住人が駅に送ってくれるまでの間も、車内でずっとズビズビ子供みたいに泣いていた。(見てくれてるか分かんないけど本当にごめん笑)
でも最後は、その人に
「笑って帰れ。」
と言われて、涙で顔をぐしょぐしょにしながら笑顔で、鯖江を去った。
日々を、淡々と生きる
そして、鹿児島に帰ってきて始まった日常。正直気持ちは全然日常に戻れていなくて、鯖江にいた頃の写真や動画を見返しては感傷に浸っている。
でも、大学は普通にあるし、就職活動もしなきゃいけないし、バイトもあるしで、身体と生活は日常に戻らざるを得ない。
だから私は私のフィールドで、今できる精一杯のことをして、日々、淡々と生きようと思う。
いつかまた鯖江に戻ったときに、「おかえり。」って言ってもらえるように。
追記
最後はちょっと青くさく締めましたが、改めて私に関わってくれた全ての方、本当にありがとうございました。こんな私を受け入れてくださった会社の方、一緒に走ってくれたインターンの2人、生活を共に送ってくれたシェアハウスの住人の皆さん、その他諸々出会ってくれた皆さん。本当に本当に大好きです。
大切で愛おしくて尊いこの出来事は、今後私の人生において大きなピースになると思います。一生の思い出をありがとうございました。
次は、冬に行こうと思っているので、そのときは一緒にお鍋でも囲めたら嬉しいです。また会う日まで。
もなん