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名前も知らないあなたへ

最近、悲しいことやトラブルが重なって、本当に心がすさんでしまった。

世の中のニュースには、思いやりのかけらもない悲しい事実ばかりで、ますます落ち込んでしまった。

心が千切れそうで

何のために生きているのか、わからなくなりそうで

必死に前を向いて、光を目印に歩いてきたこの道も

とうとう光がかすかになってしまった、と思った。


もうだめかな、と思った時

私の目に映ったのは、名前も知らない人たちが向けてくれた笑顔だった。

電話越しに聞こえて来る、見知らぬおじさんの心がこもった言葉だった。

見知らぬ誰かの、あたたかい心だった。


みんな、それぞれの場所で

一生懸命仕事をしていた。

真摯に向き合っていた。

その、まっすぐな心が、本当に、あったたかった。


世の中には、悲しいことも、惨めな気持ちになることも

絶望も

山ほどある。

思いやりのかけらもない人も、山ほどいる。

鬼より怖いのは、人間だ。


でも、

あたたかい心を持った人も無数にいて

みんな、自分の場所で、精一杯生きている。


生きていくことがつらくて

もうだめかもしれない、と思った時

ほんとにささいな思いやりが

誰かが自分に向けてくれる親切が

最後の一歩手前

手を掴んで

引き戻してくれることが

確かにある


ありがとう

ありがとう


私もそんなふうに

誰かの心に届く

思いやりを

あたたかさを


あの人に会えてよかった、と思う

そんな人になれたなら。




photo by Takayuki Sasagawa


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