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神様たちのいるところ➂「お不動さま」

「お不動さま」

 お守りの蚊取り線香をぶんぶん振り回しながら、崖を登り、断崖絶壁を綱渡りし、藪をかき分け、ようやくもと来た道へ出る。そのまま車の横を通り過ぎ、昔集落があったところの近くにある、お不動さんへ行くという。少し道を下って行くと、不動明王とかかれた大きな石のところに来た。なにやら、もっと奥らしい。私の不安は的中、また崖を登ることになった。

 細い道、といっても道らしきものはないのだが、を行くと、岩の横から勢いよく水が流れ、滝のように下へと続いている。澄み切った水に手を浸してしばらく喜んでいて、ふと右奥を見ると、なんとその奥に洞穴のようにお不動様の祭られている場所がある。これは失礼しました、と手を合わせた。このお不動様も、やはり穏やかな表情を浮かべていた。

 それにしても、途切れることなく流れてくる水である。手をつけると、澄んだ水がさらさらと手を撫でて、下へ下へと流れ落ちていく。このまま溶けて、水になってしまいたいと思えた。永遠に途切れることなく、巡っていく水とともに旅をしてみたい。


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(④へ続く)

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