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大人にナイショで一世一代の大勝負
小さい頃「ガチャガチャ」は特別なものでした。
プールの進級テストで合格した時に。
親のおでかけに付き合って、いい子にしていた時に。
こういった、ご褒美にやらせてもらえるもので、好きな時にホイホイできるようなものではなかったんです。
ガチャガチャができる状況そのものが、SSR(スーパースペシャルレア)。当時のわたしにとって最上級の体験でした。
小学校4年生くらいの頃、わたしは電車で塾に通うようになりました。そこで初めて自分の財布を持つことに。電車賃と、何かあった時の電話用に、ちょっとの小銭を入れてもらっていたんです。
当時まだお小遣いをもらえていなかったので、このお金は本当に必要な時に使うもの…のはずでした。
でも、見つけちゃったんです。
塾の近くの本屋さんに、ガチャガチャが置いてあるのを。
しかも、当時大好きだった「ファイナルファンタジー」のキーホルダー!とっても素敵。これは欲しい。
「1回だけなら…」
今、わたしは悪いことをしている。まわりに大人が見ていないか…完全に挙動不審だったと思います。ふるえる手で100円玉を投入。
ガチャガチャ…
「うそでしょ…ジィさんキャラじゃん…(思い入れ皆無)」
ファイナルファンタジー、なんとキャラクターが10人以上いるんです。もうお察しかと思いますが、これはガチャガチャ。お目当てのキャラクターにたどり着くには1回じゃ済みません。
ただ…何回もできるお金が、今ここに、ある。
「あと1回なら、いいよね…」
さっきよりも、いくらか滑らかな手つきで100円玉を投入。
フーッ……ガチャガチャ…
「…同じの出た…」
絶望です。悪いことをしているから、欲しいやつが出ないんだ。でも、このままでは帰れない…
「もう1回だけ…あ、100円玉が足りない!」
ここで、わたしは何をしたと思いますか?
財布に残っていた10円玉と50円玉を近くの自動販売機に突っ込んで、おつりレバーをガチャっと。100円玉を錬成したんです!
「おおっ!ちゃんと100円玉が出てきた!」
感動です。まさか本当に出てくるとは思わなかった。やってみるもんだ。これはいい流れ。
「オネガイシマス!!」
ガチャガチャ…
「うん…まあこんなもんか」
ようやく本命ではないものの、さっきよりもだいぶ主役級のキャラクターが出ました。財布の中は、ほぼカラッポ。
冷静になってから、ジワジワとやってくる居心地の悪さ。家に帰る足取りが重たくなります。
「バレたら絶対に怒られる…」
手に入れたキーホルダーは机の引き出しにしまって。財布にもそのままカバンの中で息をひそめていただいて。しばらく何事もなかったかのように過ごしました。
その後、親に財布の中身について何か言われることはありませんでした。しっかり補充されてたから、絶対バレてたと思うけど。
今でも、あのナイショで3回もやってしまったガチャガチャのことはよく覚えていて。子どもの頃の一世一代の大勝負…と、ちょっぴり心がチクチクする思い出です。
2月17日は「ガチャの日」だそうですよ!
#書く部のお題で書いてみた
「ガチャをテーマにエッセイを1本」
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