美術館=最安最短の海外旅行
タイトルを読まれて違和感を覚えられた方がいたら、申し訳ありません。かなり誇張した表現をしているので、殆どの方が違和感を覚えるはずです。
何故、こんな表現をしたのかお話しをする前に、少しばかり個人的な話をさせていただきます。
私は幼い頃より、美術史が好きであった父親に連れられ家族で美術館に良く行っておりました。数としてはそれこそけっこうの数の美術館を回ったと思いますが、どんな絵を見たかなどは全く覚えていません。とにかく覚えているのは、美術館って本当つまらねえって思っていました。良く館内を走り回って美術館の方に怒られたのは鮮明に覚えています。
ただ、面白いことに幼少期のころ、頻繁に触れていたことっていうのは、大人になった時にもう一度やりたくなるものなんですね。そう考えるといかに父親や母親が子どもに与える影響が大きいことか。恐ろしくなります。
美術館が好きであった父親のおかげで、私は大学生になってから時々美術館巡りをするようになりました。趣味といえるほどの知識や情熱はなく、本当に暇潰し程度に最初は行っていました。何ごとにも共通することですが、初めてのことを趣味にするには、そこそこの努力、言い換えれば苦痛を伴います。美術館に行き始めのころは、正直めんどくさいなと思うことも多々ありました。
ただ、そんなある時、美術館の楽しむ方法に気がついたのです。
またもや私事で大変恐縮なのですが、私は景色を見るのが本当に好きです。絶景を見るために色々なところに旅行へいったり、山や海にも行きます。昨年は日本で二番目に高い北岳にも登りました。景色を見るためです。景色を見るのが好きなのも、小さいころから私たち家族を色々なところに連れて行ってくれた父親のおかげなのですが。
ただいくら景色を見るのが好きでもお金や時間がないと、頻繁には旅行に行けません。沖縄や北海道はおろか、海外なんてまず無理です。
本当はもっと旅行にいって色々な絶景をみたいけど、お金も時間もないし、しょうがないかと諦めていた時です。
美術館に行けば世界の風景が描かれた絵があったのです。
もちろん、旅先で実際に景色を目にするのと、絵で見るのとでは訳が違います。ただとはいっても、
冗談のように聞こえるかもしれませんが、海外の風景が描かれた絵を見ることで、プチ海外旅行気分を味わえたのです。
海外旅行に行けなくても、海外が描かれた絵を見ることで行った気になれるのだと気付いた時から、よりいっそう美術に対して興味を持てるようになりました。西洋美術史入門の本を買って読んだり、日曜美術館などの美術番組を見るようになりました。
ゴッホの「収穫」のような実在する風景も好きですが、シュールレアリスムと呼ばれる、「現実にはあり得ない風景」も好きになりました。
このように、初めは嫌々行っていた美術館が、今では海外旅行に行きたいという欲求を少しは満たしてくれる場所へと変わったのです。
最後にもう一度誤解を怖れずに言います。
美術館は最安最短の海外旅行なのです。