尖り

 自分で言うのも何だが、俺という個人の能力値は、凄く尖っているのだと思う。
 人の心とか、社会の問題とか、そういう概念的な事を考え分析し説明する能力には秀でている反面、それ以外何にも出来ない。
 絵も音楽も作れないしサムネやチラシ、動画編集のセンスも無い。ゲームが上手い訳で無ければ小気味良いトークも出来ない。書類仕事なんて最悪で、手続きとか面倒ですぐ放置する。日常の生活能力も無ければ、自己管理も駄目駄目。
 ホント、一人の社会人としてはヘッポコが過ぎると言っていい。

 まぁ、そんなのが言い訳だというのは分かっている。言われずともね。
 なんであれ、面倒くさがってやらないだけ。何かを始めるなら、まずは自分でなんでもやっていくしかない。役割分担、自分の得意な事だけやるなんて我が儘は、今俺がやろうとしてることを思えば贅沢が過ぎる。自分の強みを活かしたいなら既存の組織に入れ、誰かの言うことを聞け。それですら、下積みの間は全部やれ。
 ぐうの音も出ない正論で、何も言い返す事なんて出来ないさ。
 何の後ろ盾も実績もリソースも無いニートが、誰かに自分のエゴを支えてもらおうなんて、虫が良すぎる話だ。
 でもなぁ、無理なんだよ。
 やりたい方向が明白過ぎて、それ以外のことをやるのが我慢ならないんだ。何度それじゃ駄目だって自分を抑え込もうとしても、結果ぶっ壊れただけだった。反発を抑えられず何もやらないを選び続けてきた。

 あの日の圭一のように、運命の袋小路を打ち破って希望を見せる活動をしたい。とことん捻くれた屁理屈を語りながら、最後には青臭い願いを語る人間でありたい。今一瞬の快楽のためではなく、未来の、人類のためにパイを増やせる人間でありたい。
 どれだけ真っ当な手順を取ろうと言い聞かせても、結局概念的な思考に終始して、具体的な現実問題に一つ一つ取り組むのが性に合わなかった。我慢ならなかった。

 タラレバの妄言でしかないという前提で思うけど、もしかしたら昔の貴族の子弟として生まれたら、結構大成した能力値なんじゃないかなと思う。
 物語でも結構貴族政治的な駆け引きは面白いと思う(からちゃんと積極的に勉強するだろう)し、人読みや時勢読みした上での舵取りとかも、結構出来るんじゃないかなぁ。
 勿論リアルではそんな訓練受けてないから全然出来ないけどね。

 人を頼るって難しいよ。なんで皆そんな当たり前にやってるのかわけ分んないくらい難しい。
 結構俺の考えは良い線行ってるし、時と場合によっては必要な言葉を出せるだけの積み重ねをしてきてると思う。というか、本音を言うとなんでそんなことも分からずに生きていけるのバカじゃないのとか、当たり前のことドヤ顔で語るなよとか思うことが殆どだ。その程度の人間だよ俺は。
 でもその裏返しで、え、その程度のことでドヤ顔して語ってんの恥っずwってなるんじゃないかという疑念が一切振り払えない。
 参考になった、新しい視点を貰えたって言葉を貰ったこともあるし、逆によく分からん、噛み砕くのに時間かかるとか言われたこともある。
 自分で言うのもなんだけど、人とか社会という領域においては、トップレベルの知見を持った人と比較出来る程度の領域まで来てるというのが、事実なんじゃないかなと判断しつつある。単なる自惚れじゃないんじゃないかなと納得しつつある。
 ただまぁ、自信は無い。何自惚れてんの恥っずって羞恥心が圧倒的に自分を袋叩きにする。
 もう今回はそういう回なので言っちゃうと、これもまた境界知性的な奴なのかなと思うこともある。実はIQが120くらいあるせいで話が噛み合わず、「あれ、俺が間違ってるのかな」って刷り込みが働いているとか。
 まぁでもこれこそ自惚れなんだろうと思うけど。阪大言ってた時も別に話が合う!って大きな違いは無かったし。でも阪大は凡人が努力していく所だからなぁ(失礼)
 まぁ実際にIQが高かったところでメンサに入って凡人を見下すような奴らにはなりたくないし(メンサがそういう集まりというのではなく、単に俺がそうなりそうだからと言う意味で)、もし普通だったら淡い希望さえ消えてしまうからIQテストとか受けようとは思わんけど。金無いし。

 なんだっけ。
 まぁ突き詰めると俺という人間の一番の生きづらさはここにあると言っていいだろう。正論も正道も分かる。けど能力値が偏り過ぎてて一人じゃそれをこなせない。今は燻っててもうまくハマれば何事か成せそうな気がするけど、単にそんなアホな希望を捨てきれない、プライドだけのドクズの可能性も全く否めない。
 他人からのお世辞も信じられないし、度の過ぎた自己謙遜も信じられない。自己顕示欲でもあるはあるんだが、一番切実なのはこの自分はただの勘違い野郎なんじゃないかという不安だ。もし本当にただの勘違い野郎だったのならマジで恥ずかしすぎて死にたい。いやマジで。それなら生きてる意味無いし。

 ないものねだりでしか無いんだろうけど、ホントむしろ色々過不足なく出来る人間が羨ましい。手札が多くて色んな人に力を貸せる人間が羨ましい。
 多分、だから俺はTRPGやらゲームやらで器用貧乏なキャラ組をやりがちなんだろうな。バランス良く対応できて弱みの少ないキャラばっかりやってる気がする。少なくとも、他の人のサポートありきのロマン砲みたいな尖ったキャラ(めぐみん的なキャラ)はマジでやったことない。一人になったら何も出来ないじゃん、それが活きる場面来なきゃお荷物じゃんってのが先に来る。そんなのは現実だけで十分だ。
 ゲームでも現実でも、強みを押し付けるのは勝つために重要な事だ。分かっていてもどうも俺は弱みをいなす事の方に気が行ってしまう。強みを活かして主導権を取って攻め切るより、弱点をあの手この手でいなし続けて判定勝ちを狙う方が性にあってる。現実には強みを活かせず弱みを晒しまくってるだけなんだけど。

 ホントもう卵が先か鶏が先かだよ。
 自分の人生論がそれなりのもので、それさえ示せれば俺は凄い人間なんだってプライドが邪魔をしてそれ以外の「些事」「俗事」に関心を持てない。
 でもそれを示すことが出来るポジションに行くには、その些事俗事をこなして地道に上り詰めなければならない。
 でも些事俗事をこなすためにはプライドが邪魔で、そのプライドは実際に挑戦して挫折、鼻っ柱を折られない限り捨てられない。デッドロックって奴だよ。
 自分は勘違い野郎だったって認めようともしてきたけど、むしろ勘違いじゃないんじゃね?って思うことの方が多くなってきた。
 事実がどうかは置いといて、まずは目の前の事をやろうと30年繰り返してきたけど、まぁ常にすぐ逃げた。逃げ癖がついただけだった。
 どうしたらいいんだろうねぇ……
 謙虚になってみようってのも、取り合えずやってみたらってのも、もう何度も試して失敗してきてるのさ…… 色々手は尽くしてみたけれど、今の所今になって出来るようになるような要素は無いね……

 だからまぁ、正攻法が無理だからなんとかズルして一足飛びをするしかないんだけど、そう簡単にズルなんて出来るわけない訳で。
 ズルというか、人の助けを借りなくちゃいけないんだけど、それが難しい。
 今やっと言語化出来たけど、これは自分がやれることをやりきってないのに助けを求めることへの嫌悪感だな。
 物理的に不可能なわけじゃない。でも嫌すぎて、受け付けな過ぎてやりたくない。アレルギーが出るわけじゃないけどピーマン嫌いだから食べたくない、みたいなもんか? 実際の所はやりたくなさすぎてアレルギー反応出るレベルなんだけど。
 物理的に出来ない訳じゃない。明確に苦手なわけでもない。得意とは言わずともやれるのにやりたくないなんて理由で人に頼むのが、あまりにも我が儘が過ぎる。
 というか別にそれでもいいんだよ。金さえ払えば。或いは何かでお返し出来るなら。でもそれだけのリソースも無い。出せるものが無い。いや、あるにはあるが限定的過ぎて提供出来ない。だから頼めない。

 もう少し傍若無人なくらいで丁度いいのかな。
 加減が分からんよ。そも、そんな権利俺にあるのか?

 分からん。

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