[Avacusアーカイブ] 暗号通貨でクラウドソーシング
Avacus.ioの先見性と早すぎた革命の歴史を振り返り再編集・再投稿していくAvacusアーカイブ、今回は2018年10月にリリースされた「AvacusAsk」についてまとめていこうと思います。
AvacusAskは、Avacus.ioを構成するメインサービスのひとつでした。Avacus.ioとしてはサービス終了しましたが、その仕組みはAvacusの土台ともいえる基礎的な仕組みであり、新しいAvacusでも基本的には応用されるものと思われます。
Avacusの基礎的なサービス
AvacusAskは、仕事の対価を暗号通貨で支払い・請負できるクラウドソーシングプラットフォームです。
比較的単価の大きなフリーランス向けのアウトソーシングから、誰にでもできる小さなタスクでお小遣い程度の報酬のものまでが並び、仕事と定義してしまえばなんでもできる自由度の高さも特徴的でした。
<仕事の実例>
● 代理購入や相対取引
● ロゴ・キャラクター、楽曲などクリエイティブ制作
● 翻訳・ローカライズ
● 資料制作
● 業務補助
● 記事執筆
● TOEICなど資格受験のコーチングや税金の相談
● ちょっとした頼みごと
Avacusといえば、Amazonのお買い物ができるShoppingがもっとも有名で人気のあるサービスでしたが、この機能はAskの仕組みを応用してAmazonの代理購入に特化させたものであり、Avacusの基本的な構図は「①暗号通貨を使いたい人と暗号通貨を入手したい人をマッチングさせる、②暗号通貨の受け渡しをエスクローで安全・公平におこなう」 というAskの仕組みそのものです。
AvacusAsk、自由度高すぎた説
しかし実際のところ、Askの取引件数は伸び悩みという問題を抱えていました。Shoppingが1日500件以上の成立があったのに、Amazonの買い物のみに限定されたShoppingよりも自由度が高くなんでもできるAskが伸びなかったのはなぜなのでしょう──。
これにはいくつかの理由が考えられます。海外ユーザーの一部からは「もともと日本のサービスだからオファーリストは基本的に日本語の羅列が並んでおり、そこに英語でのオファーを並べにくい、ハードルが高い」という意見もありました。確かにそれもあるでしょう。それでもみなさん、Shoppingは大好きで使っていたわけですよね? つまり、根本にあるものは言語の問題ではないということです。どう使っていいのかわからない、そしてわからないものに対して頭をつかってユースケースやその条件を考える気がない、そして自分が第一号になる気はもっとない「受け身の」ユーザーが多かったそれだけのことだと個人的には思っています。実際、英語でのオファーがいくつか並び始めるとそれに続く似たようなオファーが徐々に増えはじめました。
たとえば、真っ白でだだっ広い紙に「自由に絵を描いてください」と言われても日ごろ絵を描いていない人には何を、どの程度の絵を、どう描いたらいいかわからず戸惑うことでしょう。でもそれが塗り絵であれば、色を塗るだけなら(選択できる色が少なければ少ないほど)誰にでもでき、上から順番に塗ればなんとかなります。
一人一人が創造性を開放しみんなで新しい世界をつくろうというAvacusの思想はロマン主義的で 「暗号通貨のユースケースを創造しよう・開拓しよう」といったクリエイティブ思考あるいは革命思考のユーザーよりも「便利で安全に暗号通貨の取引をできればそれでいい」と考えるユーザーのほうが圧倒的に多かったと思います。現実として暗号通貨は2021年でも未だに投機目的として使用されることが一般的で、まして2018年の時点でAvacusは異質すぎて、その思想は一部のコアユーザー以外ほとんどには理解されなかったことは否めないのではないでしょうか。
業界最安値手数料5%
一般受けこそしなかったAvacusAskですが、その活用法に気づいた一部のユーザーからは必要不可欠とされるほどコアな人気を獲得しました。手数料の安さもその理由のひとつです。
AvacusAskの手数料は支払金額の5%、これは既存のクラウドソーシングと比較しても破格といえる安さです。しかも仕事が完了すればビットコインなどの暗号通貨で即時払いされ、日本円に換金することなく消費することができます。そのメリットに気づくことができた人にとって、Askの自由度の高さは勝手がいいものでしかありませんでした。
それだけでなく、既存のクラウドソーシングサービスは以下の理由から世界中の人に一斉に仕事を依頼することはおそらく不可能です。
● ワーカーは先ず報酬を受けるために日本の銀行口座を持っている必要がある
● 報酬残高が一定額を超えないと支払いされない
● 仕事が完了しても支払日まで待たないと報酬が振り込まれない
● 報酬は日本円のみ
当初は一般受けしなかったAvacusAskに可能性があり続けるのはそれが暗号通貨をつかったクラウドソーシングであるからです。
マイクロタスク事業とインクルージョンの実現
「マイクロタスク」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。超細分化された・超少額の単純労働のことをさし、発展途上国の若者たちの新しい稼ぎ口としていま急激に伸びている市場です。たとえばAIが判断しにくい「特定の物体を含む画像の選別」「美しさの評価」「文章の翻訳」などといった、人間のほうが効率的に処理できる作業を1解決あたり1-100円程度の報酬でタスクを発注できるシステムです。
その代表的なものがAmazon Mechanical Turk(アマゾンメカニカルターク)です。ワーカーはアメリカ在住であればドルで報酬を受け取り可能ですが、ワーカーの多くはブラジルやナイジェリアなど途上国の若者で、彼らは有効期限つきのAmazonギフト残高で支払いを受けています。もうお分かりですね、報酬で得たギフト残高を現金化するためにAvacusを日常的に使っていたのが、何を隠そうこのメカニカルタークユーザーでした。
この背景にあるのは「マイクロタスクと海外送金の相性の悪さ」です。先述の通りマイクロタスクの1件当たりの報酬は超少額で、ちょっとだけ仕事をしてお金をもらうといった働き方をするにはあまりにもコストが高く、釣り合わない構造になっています。極端な話、報酬よりも送金手数料の方が高いということも珍しくなく、その解決策としてAmazonではAmazonギフト券を使って支払いを行っているというわけです。
Avacusではそれを暗号通貨の利点を活かすことで解決します。暗号通貨は法定通貨に比べ圧倒的に少ない手間と手数料で素早く送金できるという長所がありますが、クラウドソーシングサービスは、その暗号通貨の長所を最大に生かし得るものです。ワーカーが直接仕事を受注できて、報酬がはじめからビットコインやドルと同等の価値を持つステーブルコインで支払われるならどうでしょうか。
日本人はほとんどの人が当たり前に銀行口座を持っていますが、その当たり前が最初から奪われている、経済的に排除され貧しい暮らしを強いられている人達が世界にはたくさんいるということに私たちのほとんどはリアリティを持つことができません。
しかし確実に、暗号通貨やブロックチェーンの登場はそのような人たちを格差から開放する突破口として認識されはじめています。あらゆる人が人種や国籍、性別、性格、学歴や立場にとらわれず対等に経済活動に参加し、就業機会を得ることができ、豊かさを得るチャンスが暗号通貨以降の世界では誰にでも平等に与えられます。
マイクロタスク市場は毎年前年比50%のペースとブロックチェーン市場にも負けない成長率を見せており、大手だけでも1000億円規模の手数料売上があります。そこからわずか5%取れるだけで手数料収入だけでも50億円規模となり、このことからもAvacusがこの市場を狙わない理由がありません。日本企業のマイクロタスク発注先としても展開の見込みがあり、可能性が期待されています。
さいごに
個人的な話になりますが、筆者はAvacusAskを活用して「AVACUS TRADERS SHOP」という企画を実験的にやってみました。どちらかというとこれはAvacusをPRしたいという趣旨のボランティア企画で、私自身にはほとんどメリットはないものでした。
この企画はAmazon残高でプライム会員権をギフトとして贈ることができる、そしてそのプライム会員権はAmazon残高に交換できるというAmazon.comでのサービスを利用したものでした。これだと物品の代理購入よりも早く暗号通貨を交換できるということで大変喜ばれたのですが、結果としてこの実験は失敗でした。
海外ユーザーの生活時間=日本では真夜中にじゃんじゃんオファーがくる、会員権がメール届くまでにタイムラグが2~3時間あるなどいくつか理由があるのですが、最大の要因は人気すぎて用意したビットコインの在庫がすぐなくなってしまうことと、宣伝効果が割りに合わなかったことです。同じ人が何度も申込んできて、ビットコインを広く分け与えられないまま在庫切れになってしまう。メリットがあって人に知られたくない「おいしい」サービスであったがゆえに身内でそのメリットを丸取りしようとして、宣伝もしてくれなかった(厳密にいうと身内だけにはこっそり教えたでしょうが、私が期待していた宣伝とは記事を書いたり動画をつくったり、広くオープンにAvacusを露出させてくれる効果でした)そんなこともありましたが、それも実験してみなければわからなかったことです。
しかし、見ず知らずの世界中の人と、信用を必要とせずに安全公平に安心して取引ができるということはこれまでになかった革命的なものであると感動しました。
2018年という黎明期中のさらに初期のほうに、どこよりも早くそしてどこよりも多く、実証実験をすでに行っていてどこよりも成功も失敗も経験しているということこそが、後に活かせる貴重な経験値でありAvacusの輝かしい実績だと思います。.ioを経てこれからどんな形になっていくのでしょうか、ユーザーとしてもまたAvacusをつかってたくさんの失敗をできることを楽しみにしています!Avacusアーカイブはまだまだ続きます!