シナリオ作成(エモクロアTRPG)講座
追記 ※2022/02/13 17:55
本noteの内容を元に、実際にシナリオを制作する配信を行いました。
参考になるかどうかはわかりませんがもしよろしければご覧ください。
【雑談】エモクロアTRPGのシナリオを作る(実践編)
https://youtu.be/1heJxVSpaDI
はじめに
この講座は「シナリオを書きたいけど、どう手を付けたらいいか全然わからない」「書いている途中で手が止まってしまった」という初心者向けのものです。
既に自分のシナリオがいくつかある方には、その人自身のやり方というものがあると思いますので、あまり参考にならないと思います。
また、あくまでこれは私の作り方です。人それぞれ作りやすい方法は違いますので、これがいまいちピンと来なかった方はまた別の方法を試してみてください。
以上についてご了承いただけますと幸いです。
大まかな流れの解説
この単元ではまず大枠としての流れを解説します。
その後、具体的な例を挙げながら実践的な使い方をご紹介していきます。
①書きたい場面を閃きます
台詞、シーン、シチュエーション、何でもOK
②その場面が何故・どうやって引き起こされるかを考えます
ここに合わせて《怪異》(ギミック)を考えます 伝承とか都市伝説が無ければ「人間の強い想い」としてしまいましょう
③その《怪異》によって世界にどんな影響が起こるかを考えます
世界と書くと大げさですが、共鳴者の周りでどんなことが起こるか、というものです。
④PCがその影響とどう関係するのかを考えます
③と④を合わせて、ここが導入になります。
これはセッション前に事前情報として与えられるものでも、セッション中に発生するものでも構いません。異変が起こらなければ共鳴者はシナリオ(物語)に関わるモチベーションが湧かないので、かなり重要な部分です。
⑤結末に至るための情報を作って箇条書きにします
《怪異》の正体を推測・示唆できるもの
状況解決に必要な機構のパーツ(機構=呪文や儀式(特定の手順)、道具など、なんでもよい)
この2つを用意します。
「それが何者であるか」「どうすれば解決できるのか」について、まずは情報だけを箇条書きで抜き出すと作りやすくなるはずです。
⑥必要な情報を手に入れる方法を考えよう
箇条書きで抜き出した情報について、そこから「どこで手に入れるか」を決めていきましょう。
この時「情報獲得のチャンスは1回だけ」にするのは避けましょう!
例えば、複数回ロール可能、または「判定1ではAとBの情報、判定2ではBとCの情報、判定3ではCとAの情報」のようにどこかを落としてもリカバリー可能にするなど、1回の技能ロールで全てが決まってしまう状況は出来る限り避けましょう。("どうしてもそうしたい"場合はまた別です 自由にやりましょう)
また、次の展開に進むための情報は、最悪の話、判定なしでも獲得できるようにするのがベターです。何故なら判定に失敗した時にGMが困るからです。
判定については「判定に失敗しても情報は出る」けど「成功するとボーナスやより犠牲の少ないエンドに行くヒントが出る」等の処理を取ってもいいかもしれません。
とにかく判定に失敗するとGMが困ってしまう……みたいなのは避けましょう
大事なことなので2回太字にしました。
⑦情報を並べよう
⑤、⑥で作った情報を並べましょう。慣れない内は「1,2個の情報が得られる部屋(※比喩的表現 "シーン"の意味です)を真っすぐに並べる」というのが分かりやすいかもしれません。
また、情報には次の探索場所の示唆も含めておけば、展開が進んでいく感覚をPLに明示することが出来ます。
⑧道中を盛ろう
シナリオ背景を想像させるフレーバー、引き起こされた事象に巻き込まれた人間の末路……など、物語の幅を広げる要素を入れましょう。
エモクロアであればダブル成功以上で出すようにすると"詰み"を防ぎつつも"技能が無駄に成功した感覚"を軽減できます。
だいたいこれで完成します 以下は実践編です
実践編(クローズドシナリオ版)
ここからは先ほどの流れに具体例を当て込んだ実践編です。
ほぼ箇条書きになっています。ご了承ください。
①書きたい場面
「えっちなお姉さん(概念)にだめにされる」シナリオを作ろうとする
②その場面が何故・どうやって引き起こされるか
夢魔が夢の中で誘惑してくる つまり《怪異》は夢魔である
③その《怪異》によって世界にどんな影響が起こるか
「最近寝ても疲れが取れない」と話す友人が居る(もしくは自分がそうである)
④PCがその影響とどう関係するのか
PCは次のターゲットである。眠りについた夜、見知らぬ部屋で目を覚ます
⑤結末に至るための情報を作って箇条書きにする
(怪異に関する情報)
夢魔は夢の中で人と交わり精気を吸収する
理想の相手の姿を取って現れる
悪魔としては低級である など
(解決策)
強い精神力で耐える
夢の主導権を奪い返す
目を覚ます など
⑥必要な情報を手に入れる方法
部屋の中に本棚=自分の記憶ライブラリがある、或いはスマートフォンのみ所持している……など(※スマホの場合は、SNSやGPS機能の利用、現実からの介入等は出来ないものとする)
また「自分の夢を自分で操作できる」示唆として「望んだものがその場で現れる」(共鳴判定アリ)シーンがあっても良いかもしれない
⑦情報を並べる
今回はクローズド仕様なので部屋をまっすぐに並べましょう
夢の中に居る=誘惑されている状況なので、各部屋には美味しい食事やふかふかのベッドなど"出たくなくなる"ものが置かれている(それによって共鳴判定が発生するようにする)
⑥の「本棚」を使うとするなら、贅を凝らした各部屋には似つかわしくないほど"整然とした佇まいの"本棚があり、怪異に関する情報にアクセスできるようにする(これにより部屋の数だけ判定が可能になる=情報獲得のチャンスが複数回得られる)
これは少し飛ばして⑧に関する内容ですが、この「本棚」については〈直感〉技能等によって「これは自分の記憶の一部だろう」とフレーバー的な情報を出してもいいかもしれません
次の部屋に行くためには扉の鍵を見つける必要がある
鍵は食事やベッドの中にあるため、一度はそれを使わなければならない=共鳴判定を引き起こさせるきっかけにする
最後には夢魔が直接現れて誘惑を仕掛けてくる。それに耐える、夢魔を支配する、或いは奥にある扉へと駆けこんで逃げる(目を覚ます)……などで無事に逃げ切ることが出来る。
クライマックスシーンはラウンド進行(not戦闘)にするとPCの失敗をある程度リカバリーできるのでおすすめです
またラウンド進行では
イニシアチブの値を特殊な算出にする
技能を段階的に成功させて展開を進める
といった手法を取るとPLが「おっ」てなります もちろん、解決方法ごとに解決策を用意しておきましょう
この場合のイニシアチブは「【精神】+〈根性〉や〈心理〉の技能レベル」とかが良さそうですね
⑧道中を盛る
盛るというか理由付け
何故夢魔は出口を作ったのか?
→「いつでも出られるんだから」と油断させるため何故本棚が存在するのか?
→共鳴者の防衛本能が無意識に働いているから そもそも夢魔の夢で自由に動けるのは共鳴者が特殊(共鳴者)だから など(ここは⑦でも少し言及した部分です)
この辺りはシナリオに入れても入れなくてもよし
これで1本シナリオが出来ましたね
あとは部屋ごとに入れる共鳴判定を決める(食事なら本能、ベッドなら怠惰、遊び道具があるなら好奇心やスリル など)、ラウンド進行のルールを決める、逸脱した時の処理や描写を入れる……など細かいところを詰めていけば完成です 簡単ですね?
実践編(擬似シティ版)
また、この方法を応用すれば「(一見)シティシナリオ(のように見えるもの)」を作ることも出来ます。(以下「擬似シティ」と記載)
まず一本道のクローズドシナリオを図解するとこうです。
そして擬似シティは例えばこんな感じです。
最終的には全ての部屋の情報を持った上でゴールに辿り着く必要がありますが、「どこに行くかの選択肢が取れる」、そして「それぞれの"部屋"に施設の名前を付ける(図書館、病院、住宅街など)」ことによって、自由度の高いシティシナリオのように見せられます。
つまり、情報を直線ではなく並列に配置し、どこから取得するかの選択権をPLに委ねるわけです。
この形式でシナリオを作る時は、探索開始時点で、PLに対して選択肢を明確に示しておくのがベターでしょう。
例えば
「図書館、病院、住宅街、NPCの家 いずれかに行くことが出来る」と施設名を示したり、
「雑誌やインターネットで情報を集める、事象による被害状況を調べる、被害者やその知り合いに聞き込みをする」と目的を示したりする等の方法があります。
個人的には前者の方がおすすめです。
続く情報を出す――例えば、住宅街での聞き込みによって「NPCが最近よく通っていたイベントホール」を探索箇所としてアンロックする、といった形が取りやすいので。
ということで、先ほどの実践編(クローズド)で挙げた例を取って擬似シティを作ってみます。
①書きたい場面
「えっちなお姉さん(概念)にだめにされる」シナリオを作ろうとする
②その場面が何故・どうやって引き起こされるか
夢魔が夢の中で誘惑してくる つまり《怪異》は夢魔である
①,②までは一緒です
③その《怪異》によって世界にどんな影響が起こるか
「最近寝ても疲れが取れない」と話す友人が居る(もしくは自分がそうである)としていましたが、シティ単位に規模を広げたい場合「そのように訴える人が増えてニュースになっている」或いは「長く昏睡した末に衰弱死してしまう」事例などを出しても良いでしょう。
④PCがその影響とどう関係するのか
③で規模を広げたので「PCの友人が昏睡したまま目覚めない」「調査を依頼された探偵・刑事等である」といった形の導入が取れます
⑤結末に至るための情報を作って箇条書きにする
怪異に関する情報はクローズドの時と恐らく変わらないはずです。
解決の機構については、規模がシティ単位になったので"撃退"も選択肢に取れるでしょう。
悪魔祓いのためによく使われるものである「銀」「十字架」「聖水」などはPLにも受け入れやすい理屈(のはず)です。
また「夢魔は低級の悪魔である」ことを利用して、彼らのテリトリーである夢から引きずり出して弱体化させるといった方法も手段のひとつになるかもしれません。
この時、夢から抜け出すための方法も何らかの神話や都市伝説になぞらえたものを用意しておくとより納得感が与えられるはずです。(例えばイカロスの翼、アリアドネの糸など)
⑥必要な情報を手に入れる方法
擬似シティですので、情報の獲得場所は街中の施設にしましょう。
悪魔に関する書籍を調べる→図書館
症状の進行を詳しく聞く→病院
どういった人間がその症状に陥っているのか確かめる→病院や住宅街
悪魔祓いのための道具を手に入れる→教会
……といった形で結びつけます。
街中を探索しますので、NPCキャラクターも出せるでしょう。
同じように事件を調査している探偵、協力的に見えるが実は夢魔の化けた姿であるシスターなど、キャラクターの主導で物語を動かすのもおすすめです。
ただしNPCが登場するということはそれだけ「GM側が人間的な会話をアドリブで行わなければならない」ことを意味します。
あまりNPCを増やしすぎるとシナリオの清書も大変になるので最初のうちは控えましょう。もちろんNPCがたくさん出てくるシナリオを書きたいならばその限りではありません。
⑦情報を並べる
簡易的な街のマップを作成し、施設を配置しましょう。
と先ほど書きましたが、擬似シティの場合は、特定の情報が出ることで訪問可能になったり、存在が開示されたりする施設を作る形が分かりやすいでしょう。
⑧道中を盛る
⑧についてもおよそクローズド版と同じになるかと思われますので割愛します。
このように、同じ手順を踏むことで擬似シティシナリオの作成も可能です。
クローズド版はほぼソロ想定でしたが、擬似シティ版であれば複数人PLにも対応できそうですね。
あとは擬似シティパートから簡単なクローズドパートに繋げてもいいかもしれません。
(ただしあまり長くし過ぎるとPLが疲れてしまう上に共鳴の上がり方がエグいことになる可能性があります ご利用はほどほどに)
(ex)共鳴表で個性付けをする
オリジナルの共鳴表作成はそんなに難しくなくて「この怪異に影響されると何が起こるんだろう?」と考えれば意外とそれっぽいのが作れます
今回なら例えば「この環境が魅力的だと思う(即座に共鳴判定が発生する)」や「無性に人恋しくなる(夢魔に対抗するロールの判定値減少)」といった内容を入れれば、よりその《怪異》らしさが出せるでしょう。
ただし共鳴表の内容がキツすぎると事故率が上がるのでそこは注意しましょう!
フレーバーテキストだけのものを2つほど組み込むことをおすすめします。
シナリオや共鳴する《怪異》の性質次第ではメリットもある共鳴表を作ってもいいかもしれませんね。
以上がもなかちゃんのシナリオ作成講座です。
少しでも悩めるあなたの参考になりましたら幸いです。
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