義父と夫の「何とかなる」は冷静に検討すべきと学んだ出国日【香港移住】

前投稿の通り、香港へ移住する。
出国日、私たち夫婦は5年住んだ賃貸を離れ、"大荷物"を義両親のセダンに詰め、空港へ向かっていた。
空港までの車内の時間は、義両親ともしばしの別れで、きっと後ろ髪引かれる気持ちになると思っていた。
しかし、現実は、"大荷物"により、一分でも一秒でも早く空港に着きたくてたまらなかった。



この日、離れて住む義両親に、空港まで大荷物の運搬を車でお願いしていた。
問題の"大荷物"とは、Airマット(マットレス)×2、布団類×2、スーツケース2、貴重品・リチウム電池機器の機内持ち込みバッグ×2、食品類や薬……そして義両親に預かっていただく鉢植えや大物貴重品など
ぎりぎりまで賃貸で住んでいたがために必要だった物と、海運で送れない物がもれなく残ったわけだが、改めて並んだ荷物の量を眺めると、通常、セダンに収まる容量ではない……。

諦めてタクシーを1台捕まえるか…と考えていると、隣にいた義父と夫は、ひょうきんに口を揃えて、
「いや、何とかなるんじゃない?」と。
この親子、正気かと、思わず目を向けてしまった。


スーツケースと機内持ち込みバッグと大物貴重品類で、トランクは一杯になってしまった。
残るは、布団とマットレスと鉢植え、そして、パンパンに詰まったリュックを背負った私ら夫婦。
完全に諦めて、タクシーの配車を提案する私。一方、火がついたように荷物を出し入れし、最適な詰め方を模索しはじめる夫と義父。

後ろの席の足場に、布団を詰め、その上に、リュックとマットレスを抱えた私達夫婦が正座になって乗り込む。
最後の仕上げに、義父がすき間というすき間に、他の荷物を詰めた。
鉢植えは、助手席の義母が抱えて乗った。

この天才的な采配により、晴れて大人4人と"大荷物"が、みっちりセダンに入ったわけだが、バックミラーの視野確保のため、抱えたマットレスを腕で圧迫し続ける必要があった。これが地味にしんどい。腕もだが、腹筋にも利いてくる……。
徐々に荒くなる息。こめかみに流れる汗。痺れてくる足先。
圧縮し続けること30分。羽田国際空港に着いたころには、寒空の下、ぐったりしていた。


車寄せは一時停車しかできないようなので、休む間もなく、"大荷物"を、空港のカートに積まなければならなかった。
痺れを通り越して足先の感覚がない中、産まれたての小鹿の面持ちで歩き、車から荷物を降ろしてはカートの上に積んでいく。
ギリギリ2台で収まったが、積荷に高さがあるため、急に止まったり、曲がったりすると間違いなく崩れてしまうだろうと思った。
汗をぬぐって、リュックを背負い、さあ行くぞと夫婦で意気込んだ矢先、義母が心配そうに、スーベニアバッグを2つ、私達に差し出した。
「餞別で、日本の味をたくさん詰めて、持ってきたんだけども……無理よね?」と。
こうして、もれなく、タワーのてっぺんに、ずっしり愛の詰まったバッグ2つが加わったのだった。


emiry.


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