「もの喜び」というコトバを知って、母の教えに輪郭ができた話
ずっと以前、読んだ雑誌の中で
西加奈子さんという作家さんが話していたこと。
”祖母と母は普段から「ありがとう」ってよく言う人なんです。私はあんまり言い過ぎると真実味がなくなるんちゃうか、と思っていたけど、本当に「有り難い」事なんだから、言いすぎることはないと言われて。例えば、財布を落とした時に「これくらいで済ましてもらって有り難い」と考える。人によっては共感しづらい人もいるかもしれないけど、私は救われる。”
というくだりがあって、驚いた。
うちの母も、こんなことを言う人だった。
まさに財布を無くしたことがあって、
それは母が韓国旅行で買ってきてくれた
まだ真新しい財布だったんだけど、
予備校に泥棒が入って
廊下に置いてあった鞄の中から
財布ごと盗まれてしまってた。
使いやすかったし、
まだもらったばっかりだったのに・・・と
すごくショックで申し訳なくて
落ち込んで母に報告したら
「そんなことくらいで済んでよかったよ。
もしかしたら
あんたが事故に遭うかもしれなかったのを
身代わりになってくれたのかもしれないよ」
と言ってくれた。
思い返せばいつも母は、
「これくらいで済んでよかった」
「お金で済むことで済んでよかった」
「家族がケガしなくてよかった」などと
ネガティブなように思えることも
ポジティブに変換する能力がめちゃ高い。
ああ、そう考えればいいのか、と
私もいつも救われてた。
この考え方に
名前があるとは知らなかった。
「もの喜び」っていうんだ。
西加奈子さんのインタビュー記事で
うちの母と同じような価値観の人が
他の家族にもいるんだ
と言うことに気がついて嬉しかったし、
名前がついた途端、
私の中にその価値観が輪郭を持って存在した。
忘れてる、当たり前のように感じている
価値観が意外と、
自分の核を為しているのかもね。
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