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家族の夜明け
これより本格的に「家族の回復」という大きなテーマに入っていきます。現在地を確認しておくと、今回の内容はHow Al-Anon Worksの第7章Breaking Our Isolation(孤立を打破すること)に当たります。
本題に入る前に、ある言葉について前置きを一つ。和製英語には原語とは少し違う意味で使われているものがありますが、ユニーク(unique)もその一つです。日本語でユニークと言えば「風変わり」といった意味を思い浮かべる人が多いかも知れません。片や原語のuniqueは「唯一無二の」という意味であり、他の誰とも・何とも違った(オンリーワンの)存在であることをはっきりと限定します。この記事では、unique「唯一無二の」の意味の方で話を進めていきたいと思います。
私たちを孤独にするもの
アラノンでは、私たちの秘密の大きさがそっくりそのまま私たちの病の大きさであると言います。そして私たちが口を開き、秘密を解き放つことは、私たちを支配する家族の病から抜け出すための鍵であると。第7章には、先ほどのuniqueという単語が4回ほど登場しますが、一つ目の箇所を下に引用してみます(太字は筆者)。
Part of the isolation of this disease is the belief that we are unique, that no one has done or said or felt the terrible things that we have done, said, and felt, and that no one could possibly understand. Therefore, we hide the truth at all cost.
「この病の孤立の一要素は、私たちはuniqueだという信念である」
本章を初めて読んだとき、この節がとりわけ目に留まりました。
私の家は異常だ。このような乱雑で恥ずべき内情を抱えている人間は私しかいない。だれも理解できるわけがないのだから、絶対に本性を知られてはいけない。・・・まさしく、私もそう信じてきたからです。
「自分は唯一無二だ」という信念が孤立を形成し、秘密を生み出す構造は、間違いなく私たちの病の姿であると言えます。さらに私自身のことを顧みると、幼い頃から抱いてきたこの信念は私の自意識となって、いつしか間違った「特別感」に対してプライドを持つようになっていました。
しかし一見すると複雑なこの病の孤立からどうしたら抜け出すことができるのかという問いに対し、アラノンが提案するやり方は至ってシンプルです。それは、アルコホリズムの恥と孤立を知る人々と思いを分かち合うことであります。次回以降、その具体的な実践方法をさらに詳しく見ていきましょう。