WE DON'T HAVE TO CONTRIBUTE:私たちは貢献する必要はない
家族の回復というテーマに入る前に「アルコホリズムという家族の病気」に関する記事をもう一つ。四つ目のCと呼ばれる「WE DON'T HAVE TO CONTRIBUTE(私たちは貢献する必要はない)」について考えます。
これまで、アルコホリズムの特徴と家族が受ける影響、アクトする側とリアクトする側がその関係性の中で家族の病気を共に形成していくプロセスを追ってきました。家族の考え方や行動が(直接的あるいは間接的に)病気が持ち堪えられるよう貢献する。これは多くの家族にとって、受け入れがたい事実であるでしょう。どの家庭にもまっとうな言い分や長く複雑なストーリーがあるからです。けれど、ここではそれをあまり重要視しません。いま知るべきことは一つ。私たちが家族の病気の中で果たす役割は、その役回りがどんな種類のものであろうと、アルコホリズムというコントロールできない病気をコントロールしようとする試みに過ぎないということです。そしてこの試みに勝ち目はありません。
それでは、八方塞がりの家族は一体どうしたらよいのでしょうか?「WE DON'T HAVE TO CONTRIBUTE(私たちは貢献する必要はない)」のDON'T HAVE TO(~しなくてもよい)というフレーズは、そこに選択肢があることを示しています。けれど家族が「アルコホリズムに貢献しない方」を選択し、実行するのはとても難しい。家族の一人がその役割を降りるとそれまで保たれてきた家族の病気はバランスを失い、自ずと不快な抵抗や衝突が起こります。アクティブ・アルコホリズムの渦中であれば、これは大きな脅威になり得ます。家族の全員が戸惑いを感じ、新しい展開に対して恐れや疑念を抱くのは当然であると言えます。それでもなお、アルコホリズムに加担するまいと自力で頑張るならば、それは単に別のコントロール戦略になりかねません。そもそも私たちには、アルコホーリクにとって何がベストであるのかを知ることさえできないのです。
だからこそ、アラノンでは唯一「自分自身の回復を求めること」を提案します。「私たちは貢献する必要はない」で示唆されている家族のもう一方の選択肢は、「なんとか貢献しないようにすること」ではなく、私たちが「自分自身の解決を探し求めること」であるからです。「Sometimes no choice is a great choice.(選択肢がないことは時に偉大な選択である)」とは、AAメンバーであった義理の父がよく口にしていた言葉だそうです。これは私たちアラノンにとっても真理でありますね。