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アラノンの12ステップに入る前に

「家族の回復」とは言うものの・・・

①私は何から回復するのか?
②私自身の問題とは何か?
③その問題に対する解決とは何か?
④どうしたらその解決を得ることができるのか?

かなり長いこと、私には①と②がまったく分からなかった。その点、アルコホーリクの夫が羨ましい・・・などと呑気なことを考えていました。当時の私には、夫の問題が単純明快なものに思えたからです。それが私の錯覚であったことはさておき。そして問題が分からないのだから、解決が何であるかを教えられてもピンときません。

「スポンサーシップ」というテーマとなると、アラノンの書籍にはあちらこちらに以下のような記述が見られます(太字は筆者)。

After a period of time, Al‑Anon members will want to choose a personal Sponsor with whom they can identify.

The 2022-2025 edition of the Al‑Anon/Alateen Service Manual: 45

引用の太字部分である「identify with someone」は、Cambridge Dictionaryの定義によれば「to feel that you are similar to someone in some way and that you can understand that person or their situation because of this(ある人物に対し、何らかの形でその人が自分と同様であり、それゆえその人自身のことやその人の状況を理解できると感じること)」を意味します。

つまり、自分と同じ問題を抱えていて、自分が抱えている問題を知っている(と思われる)メンバーがスポンサーとして選ばれている、またはそれを良しとすることを示唆していると思われます。

三年半ほど前に私がステップワークを始めた頃、日本ではさまざまな事情からアラノンのスポンサーが見つかりにくい状況にありました※。そのため、私は別の共同体のメンバーにスポンサーシップを申し込み、AAのビッグブックを使って12のステップに取り組みました。

話は少しずれますが、アラノンでは、Conference Approved Literature(以下CAL)以外の文献をミーティングで使用しないという決まりがあります。CALとは「アラノンの会議で承認された文献」という意味であり、そのアイディアは1961年のアラノン世界サービス会議において、創立者のロイス.Wによって取り入れられました。それまでグループが利用していた文献には(宗教的なアプローチやアルコホーリクを治すことに焦点を当てたような)アラノンの伝統や原理から外れたものも含まれ、アラノンの存在意義と目的に混乱を生じさせていたからです。以来、アラノンのメッセージと一体性を維持し続けるための指針として、世界中のグループで引き継がれているものと考えます。

AAのビッグブックについても同様、アラノンのCALではないという理由から、ミーティングの中で使われることはありません。けれどもこれは、ミーティングの外において制限されるものではありません。回復の助けとして何を利用するかは個々のメンバーの自由な選択であり、アラノンはCAL以外の資料について一切の評価も推奨もしないとしています。実際アメリカなどでは、ビッグブックを使って12ステップに取り組むアラノンメンバーが少なからずいるようです。アラノンのCALに対する姿勢については、常にさまざまな議論があるのだろうと想像します。

話を元に戻します。①と②が分からない私にとって、誰かに「identify」できるかどうかは重大な意味を持っていました。一度目のステップワークにおいて、大きく欠けていたところであったと感じています。しかしこれは、同じ共同体の中では得られやすいものであると言えます。一方で、回復を体現化させるためには、問題を認識するだけでは充分ではありません。そこで③と④の問いが重要になりますが、こちらは得られやすいとは言い難いでしょう。原理と方法に経験が何度も重なることによって、ようやく少しずつ分かっていくことであると考えます。

私たちがアラノンの12のステップに取り組むことを決心する理由やタイミングはそれぞれです。そのときに巡り合うスポンサーも、自分の病気への理解も、ステップワークに利用するための資料も、時間も場所も、何もかもが限られているでしょう。それでも私たちはそこから出発することができます。「私は根底から変えられなければならない」と心の底から感じたとき、それが私にとって12ステップに取り組む時機でありました。それではこれを前置きとして、次回からアラノンの12のステップを一つ一つ見ていきます。

※その後、オンラインのアラノングループのエリア(Global Electronic Area)が確立され、地理を問わない電子スポンサーシップの可能性が大きく広がりました。私も現在、アラノンメンバーであるスポンサーとアラノンの書籍を使ってオンラインでのステップワークに取り組んでいます。