見出し画像

歯医者さんこわい

アラフィフにして歯医者さんがこわい。
なぜなら、嘔吐反射がつよいから。歯科治療で口の中に器具を入れられると舌をどの位置に置いて置けばいいかわからず変な力が入ってしまい、どんどん溜まりゆく自分の唾液に溺れそうになり、それでも唾液を飲み込むこともできず、かといって先生に助けを求めるべく声を発することも叶わず…
1人でパニックになったあげく

「おええっ」

と盛大にえづいてしまう。心のなかはパニックなのだがまあいい大人なので騒いだりはしない。アーンと口を開けておとなしく横たわっていたおばさんがいきなり顔を真っ赤にして涙目になってえづく。

先生たちはそんな患者にも慣れているのか、とてもやさしい。
「少しずつ休憩しながらやろうか」とか
「あともう少しだからね〜がんばって口あけててね〜」とか
嘔吐反射があるものにとってラスボスである型取りも、オエっとなりにくいように椅子を起こした姿勢で「がんばれ〜」と励ましながらやってくれる。

…ほんとにご迷惑かけてごめんなさい。子どもより手がかかるおばさん。

今の歯医者に通いだしたのは約1年前。
歯が痛かったからでもなく、何か自覚症状のある口内のトラブルがあったわけでもないのだがわたしは確信していた。

絶対やばい、と。

なにがやばいかというと、17年ほど歯医者に通っていなかったから。
正確にいうと7〜8年ほど前にハイチュウだったかぷっちょだったかを食べていたら歯が欠けてしまい、あわてて近所の歯科医院に駆け込んだことがあった。
その時は「この欠けた歯だけ治してください!」とお願いして治療していただき1回の通院で終わったのだが、その時の歯科衛生士さんに言われたこと。

「他にも虫歯があるから、時間ができたらちゃんと治したほうがいいですよ」

歯医者さんがこわく大嫌いなわたしは「あ、はい〜」と生返事をして、もうその歯科医院に行くことはなかった。
でもどこかでずっと歯科衛生士さんの言葉が頭の片隅にはあった。
忘れたふりをして考えないようにして過ごしていた。痛みとかもなかったし。
まあ、でも痛くなくても虫歯ってあるんですね…

そんなこんなで40歳も過ぎ、いよいよ自分の体と向き合うことも増えたお年頃。
ついに歯医者へいこう!と思い立った。ネットで調べ、なるべく優しそうなスタッフの居るところ…なんでこんなになるまで放っておいたんですか!と叱られたくない。(中学生の頃通っていた歯医者さんにはよく叱られた)

数年前に開業されたきれいな歯科医院のホームページを見つけた。スタッフの写真も載っている。みんなニコニコやさしそう。よし、ここにしよう。
予約を入れた。自分で決めたことなのに予約日まで嫌で嫌でウジウジ。あ〜なんで予約なんて入れちゃったんだろ。
受診当日は緊張しまくり、勇気を出して受付の女性に打ち明けた。

「あのう…実は歯医者が15年ぶりで…(なぜ人は罪悪感があるとつまらないウソをついてしまうのか。17年ぶりだ!)嘔吐反射も強くて。きっと虫歯がいっぱいあると思うんです。」

言えた。どきどきどき。ドン引かれるだろうか。
悪いことをして怒られる前の子どものようにうつむくおばさんに受付の女性は笑顔でこう言ってくれた。

「そうなんですね!大丈夫ですよ。まず受診しようと思われたことがえらいと思いますよ!」

なんと褒められた。すごくホッとした。
あぁこの歯科医院に決めてよかった。
それから冒頭のようなお手数をおかけしながら無事1年コツコツと通院し、問題のあった親知らずの抜歯も経て(これまた嘔吐反射のせいで大騒ぎでしたが)、先日ついに虫歯完治しました〜。
いやあ、うれしい。気がかりだった口内環境が良くなりスッキリした。次回からは3ヶ月に1回のメンテナンスでいいそうだ。

恐怖の虫歯治療でビクビク通うのではなく、歯のメンテナンスで定期的に歯医者へ行く。
こうなりたかったんだよ〜。もう後ろめたいことはない。
最近のわたしはえらそうに友人に語る。
「歯は大事だよ。定期的に診てもらった方がいいよ。」と。

どの口が言う!って感じです。ごめんなさい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?