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食品の規制基準値が10倍に!市民団体「みんなのデータサイト」が反対署名を集めています

■「復興」のために食品の放射性セシウム規制値を10倍に

 全国30を超える市民測定所のネットワーク「みんなのデータサイト」が3月9日、衆議院議員会館で記者会見を開き、食品に含まれる放射性セシウムの規制基準値を、現在の100ベクレル/㎏から1000ベクレル/㎏に引き上げようとしている自民党のプロジェクトチームの動きに対し、強い危機感を露わにした。現在、反対する署名を呼びかけている。

 「山の恵みである山菜やきのこが、規制基準値に引っかかるために出荷できない。これを出荷できるようにしたいから規制基準値を緩めよう、と。それが、この自民党のプロジェクトの趣旨なんです。規制基準値をどうにか緩めて、出荷できるようにするのが福島の“復興”につながるのだ、ということなんですが、その論理自体がおかしい」
 そう訴えたのは、「みんなのデータサイト」事務局長の小山貴弓さん。
 このプロジェクトチームとは、「食品等の出荷制限の合理的なあり方検討プロジェクトチーム」のこと。福島選出で元復興大臣の根本匠氏が座長を務めている。

河北新報の報道によると、同プロジェクトチームは今年1月27日に発足。3月中に提言をまとめ、「原発事故から10年を迎える節目に、解決への道筋を付けたい」(根本氏談)という考えだ。
 
■100ベクレルだって“がまん値”

 そもそも、現在の食品に含まれる放射性セシウムの規制値100ベクレル/㎏はどのように決まったのか。
 福島第一原発事故の直後、厚生労働省では、放射性物質を含む食品からの被ばく線量の上限を暫定的に年間5ミリシーベルトに設定。国内生産の農林水産物が100%汚染されているという前提で算出し、商品に含まれる放射性セシウムの暫定規制値を500ベクレル/㎏に定めた。(牛乳・乳製品や飲料水は200ベクレル/㎏)。

 しかし、食品の国際規格を作成しているコーデックス委員会は、食品からの被ばく線量が年間1ミリシーベルトを超えないよう設定しているため、日本でもそれに合わせる形で2012年4月1日から100ベクレル/㎏(乳児用品・牛乳は50ベクレル/㎏、飲料水は10ベクレル/㎏)に引き下げたという経緯がある。

 しかし、「みんなのデータサイト」が入手した『復興を妨げる日本の線量基準』と題した同プロジェクトチームの資料には、以下のようなことが書かれている。

『国内の農林水産物の汚染は十分低くなっているのに、100%汚染されているという前提で算出された100ベクレル/㎏の基準値は高すぎる』
『摂取量が少ないきのこ・山菜、ジビエ(野生肉)などの食品は、摂取量を踏まえて規制値を変える必要があるのではないか』

つまり、上記のような理由から、コーデックス基準の1000ベクレル/㎏への引き上げを目指していることが読み取れる。
 この資料は、同プロジェクトの「講師」として招かれた、原子力規制委員会の初代委員長・田中俊一氏が作成したものだ。(「みんなのデータサイト」が、同プロジェクトのメンバーである衆議院議員かんけ一郎氏のブログを引用して以下のようにツイートしている)

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 2020年10月19日の読売新聞によると、飯舘村に移住した田中氏は、「7万6千ベクレル/㎏のセシウムを摂取しないと年間1ミリシーベルトには達しない」として、1000ベクレル/㎏もあるイノハナの炊き込みご飯を食べているという。
 とはいえ、原発事故前の2003年の食品中の放射性セシウム137の濃度は、0.1〜1ベクレル/㎏であったことを考えると、よけいな被ばくは避けたいと思ってしまうのは当然だ。

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 「みんなのデータサイト」のメンバーは、「100ベクレルは、原発事故前であれば(今も原子力施設内では)、放射能マークのついた黄色いドラム缶に密封し、厳重保管しなくてはいけないと定められている値」であり、「100ベクレルであっても、“がまん値”だ」として、規制値を引き上げることの問題点を、以下のように指摘している。

「コーデックス基準の1000ベクレル/㎏は、(原発事故など起こしていない国内で)汚染された食品の流通が10%以下という前提で設定された数字です。しかし日本は、事故を起こした当事国なのに、汚染された食品が10%以下という前提で設定された1000ベクレル基準を導入するというのはおかしい」

「政府は現在、帰還困難区域を除染しないで解除する方向で進めているので外部被ばくも大きくなる。そのうえ、食品の規制基準まで上げてしまうと、内部・外部被ばく合わせて大きな被ばく線量になる可能性もある」

 ■まだまだ安心できない山菜やきのこ類

 実際に、「みんなのデータサイト」が2020年春と秋に、メルカリやヤフオクなどのネット通販および、道の駅などで販売されている山菜のコシアブラや、きのこ類を購入して測定するプロジェクトを行ったところ、コシアブラでは全22検体中6件(27%)で基準値100ベクレル/㎏を超えていた。
 きのこ類では、109件中、基準値を超えたのは23件。もっとも高かったのはコウタケの1833ベクレル/㎏だった。

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■給食に使用されることで子どもたちにしわ寄せが

 さらに小山さんは、最後にこうした懸念を付け加えた。
「たとえばコシアブラは、東北の山形県などでは“山菜の女王”と呼ばれて、多く食されています。だいたいは天ぷらで食べるそうですが、塩漬けにして保存食として食べる文化もあるようです。そうなると、一年中通してかなりの量を食べることになる。つまり一部の地域の方だけ、内部被ばく量が高くなる可能性もあるのです」

さらに、地産地消になっている給食も心配だ。

「ジビエを学校給食に導入しようとする動きが出ています。すでに西のほうでは始まっていて、東日本も同様に行われる可能性がある。森林は人が住んでいないからという理由で除染されていませんから、その森林で汚染されたきのこや木の実を食べている野生動物からは、高濃度の放射性セシウムが検出されています。まだまだ長期にわたって監視し、測定する必要があるのです。私たちデータサイトは、100ベクレル/㎏という基準を容認しているわけではないが、せめてこれ以上緩めないでほしい」と締めくくった。

「みんなのデータサイト」では現在、規制値を上げることへの反対署名を集めている。署名が集まり次第、プロジェクトチームにも働きかけを行っていくという。

内部被ばくについては、こんな証言もあります。合わせてお読みいただければと思います。


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和田秀子/hideko wada
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