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カンチョーは、昭和のギャグじゃないんだよ

ジムと激太りした夫

ことの発端はコロナです。産後15kg太ったのは出産した私だけでなく、何も産んでない夫も同じでした。何でお前まで。

夫は、健康診断で血圧が140を超えていることが判明してダイエットを決意。"男らしいジム"の代名詞(主観です)「ゴールドジム」に入会しました。スポーツウェアとシューズの新調までして意気揚々とジムの門をくぐったのです。

ところが、ゴールドジムには「トレーニング前に血圧を測る」というルールがあることを知らなかった夫。案の定、血圧が高すぎて毎回筋トレNGを食らう。ではいったいそこで何しているのかと思ったら、

ウォーキングしてるんですって。

ゴールドジムで新品のウェアきてウォーキングしてるんですって。

そんな、すべらない話を持つ夫が、コロナ禍のジムでうつされたかどうか定かではありませんが、ジム通い開始と同じタイミングで我が家一家全員コロナに感染してしまいました。

家族全員軽症だったのは不幸中の幸いです。3歳の息子に至っては、感染して2日くらいは食欲が落ちて具合悪そうにしていたものの、3日目くらいからは超元気でした。そして当初具合悪そうだったのを不憫に思った私は、それまで禁止していたチョコレートやグミなど市販のスナック菓子を解禁してしまいました。スナック菓子の味をしめた息子は、以来スナック菓子以外の食事を拒否。

コロナが完治して保育園も再開、そろそろ健康的な食事に戻さなくてはと思った矢先のことです……

我が家に「蒲田くん」あらわる

その夜、リビングで夫と晩酌していると、寝たはずの息子が起きてきました。

寝ぼけてるのか、遠くを見つめながら廊下をすたすた歩いてきます。

ボエーーー!!!

息子は廊下で突然立ち止まったかと思うと、冗談みたいなノリで盛大に嘔吐しました。

私はその光景にデジャブを覚えました。

プレミアムバンダイ「東宝大怪獣シリーズ ゴジラ(2016)第2形態 クリアVer.」
TM&(C)TOHO CO., LTD. 

映画「シン・ゴジラ」のゴジラ第二形態です。血反吐を吐きながら蒲田の街を破壊するゴジラと、無表情で嘔吐する息子がピッタリと重なりました。

ゴジラの第二形態(幼獣)って「蒲田くん」って愛称ついて、キモカワで人気なんだよね。

ボエーーー!!!

2度目の嘔吐。息子を触ると完全に発熱してる熱さでした。

これは…保育園で大流行している、ウィルス性胃腸炎…かな。病み上がりで復帰した保育園でさっそくウィルスをもらってきたようです。コロナの次は胃腸炎か。

翌朝病院に連れて行くと、まあ、想像どおりウィルス性胃腸炎という診断。

看病生活再び…(ガックシ)。医者には「食べられるものを少しずつ食べさせて」と言れていたことも、看病疲れで健康意識がどこかへ行っていたことで、気がつくと嘔吐翌日から3日間、息子はチョコレートとグミしか口にしていませんでした。

マジのカンチョーされる

だいぶ元気を取り戻していたはずの息子が、夜中に突然腹痛を訴えてきました。

トイレに連れて行ったりお腹をさすったりして様子を見ましたが、お腹を抱えて転がるように痛がる様子を見て、ただごとではないとわかりました。

病院の診察時間はとっくに終わっています。夜間救急病院か?いやそれよりも救急車か?

忘れていましたが、その場には夫もいました。

しかし夫は、息子の風邪が回復したと油断して、こともあろうに飲酒していたのです。

車使えねーじゃねぇか……クソが。

結局、近所に住む両親に車を出してもらい、夜間救急病院へ。途中の車内でも身をよじるように痛がっているので、もしかしたら盲腸か何か大きな病気かもしれません。

病院に着くとすぐに小児科の先生が診てくれました。息子のお腹を慎重に探りながらこれまでの経緯をふんふんと聞く先生。

手術か?入院か?

先生は顔を上げて、半泣きの私をまじまじと見つめて言いました。

「お腹にガス溜まってるだけだね。浣腸して様子見で大丈夫ですよ」

浣腸。

あっけに取られる私を置いてテキパキと巨大な注射器のようなものを揃えた看護師さんは、悶絶する息子をベッドに寝かせるや、迷いなき手さばきでパンツをおろしました。

されるがままの息子は、そのまま尻に管を差し込まれ、コントみたいにデカい注射器で勢いよく液体を注入されました。

あああ…

変な声が出たのは私です。息子は再び蒲田くんフェイスになっていました。

オムツをはかされてしばらくその場で待機する息子。しばらくすると顔色が変わって、腹痛がおさまったようです。

出たのです。

お医者さんは「水分取らせて、お菓子だけじゃなくてお腹にやさしいヨーグルトなんかも食べさせて」とおっしゃいました。ごもっともです。お菓子ばかり食べさせて本当にバカでした。

しかし息子はすっかり元気になって、帰宅する車の中では歌まで歌いだすほど。一安心です。

帰宅して着替えて、布団に入って電気を消してしばらくすると、息子は言いました。


「お腹痛い」


ウソだろおい!

タチの悪い嘘なのか本当なのか見極めるべく電気をつけると、息子は本当に苦しそうにしてました。

どうしよう。

また痛くなった時のことを聞いてなかった。処方された整腸剤は飲んだし、いったいどうすれば…

すると息子が顔を歪めながら私を見上げて、こう言いました。


「浣腸して…」


「え?」


「浣腸してーーー!!」


浣腸、するの…?


本人がそういうなら仕方ありません。でも、病院で見たクソデカい注射みたいなやつは家にないし、一体どうすればいいのか。

考えあぐねた私は、いつのまにか無意識でカンチョーのポーズをしていました。

昭和のテッパンギャグ「カンチョー」

そういえば、ずっと前に妹から「いつか絶対使うから」と「イチジク浣腸」を数個もらっていたことを思い出しました。妹、予言者か?

その間にも息子はお腹を丸めて苦しみながら、

「浣腸してー!ママ、浣腸してー!」と泣いています。現実はコントより奇なり。

私は薬箱の奥から「こんなものいつ使うのよ?w」とバカにしてたイチジク浣腸を見つけ出しました。

イチジク浣腸を握りしめて、息子に「あったよ!あった!浣腸しよう!」と励まします。

一個目は失敗…先端にサラダ油かなんか塗らないと痛かったみたいです…二個目でなんとか成功。

イチジク浣腸の効果はテキメンでした。

程なくして便通があり、息子は何時間も苦しんだ腹痛から解放されたのです。

私は安堵で、息子は痛みから解放されて、2人で朝まで死んだように眠りました。起きると息子はケロッとしていて、今度こそ完全に復活したようです。


イチジク浣腸は、すごいです。こんなことがあって以来、我が家はイチジク浣腸を常備するようになりました。

ひとつ気がかりなのは、息子にとって浣腸がこんなに身近で馴染みのあるものであっていいのか、カンチョーとの距離感が間違っていないか、という点ですかね。私ら昭和生まれにとってみたら浣腸はカンチョーであってギャグですからね。

息子と私で浣腸に対する捉え方のギャップがあって、そこはなかなか埋められない気がします。