【読了】「まいまいつぶろ」村木 嵐
新聞の広告で気になって求めました。
3件目の書店でようやく出会えた。
偉大な八代将軍吉宗公の嫡男として生まれた、家重公の話です。
面白くて一気に読みました。
読み進めるうちに、真実もこの様であったら良いのに…‼と何度も思いました。
想えば、大河ドラマ「八代将軍吉宗」で中村梅雀さん演じる家重公を見たのが、私の最初の家重公でした。
当時子供だったのですが、印象は強烈。
家重公のお尻をまだ記憶している程です…
次は、よしながふみ「大奥」の家重公。
男女逆転の漫画という色眼鏡を外すと、事実こうだったのでは?としっくり思えます。
ただし、真実の家重公は発掘調査によると、整った高貴でお顔立ちでいらっしゃったようです。
イラついて眉間にしわを寄せ、口を突き出している御姿の絵は、正直「…整っている?」と首をかしげたくなる顔。
身体に障害があり、趣味・特技が将棋だったことを考えると、色白でシミなどもなかったに違いなく、それで「高貴で整っている」という話と、残された絵の印象にギャップがあるのはなぜなのか。
要は、常に自分の意志が伝えられない、伝わりにくい、誤解されている、さげすまれていると感じる環境だったのだと思います。
それは、とてもつらく、もどかしく、どれだけのストレスだったことか。
本では、少年時代から影のように付き添う、控えめで賢く有能な忠光と出会うことが出来ます。
父・吉宗公は2人の関係をこの様に言います。
確かに理解者であり、完全な味方であり、相思相愛で親友なのは間違いないのですが、忠光の素晴らしいところは自分の立場をわきまえているところでした。
分身のようでありながら、真の忠義者でした。
そこが良かった。
そして、事実そうであってほしいと心底思いました。
そうであったなら、絵に残されたあの表情ではなく、もっと穏やかな表情をされていたかもしれません。
実際の忠光も、穏やかな性格の理知的な人で、家重の意志を理解し助けたといいます。
でも、本の内容ほどではなかったのだろうと思いました。
著者が女性だからか、あっという間に亡くなってしまう正室の比宮の心理描写も細かくて良かったです。
若くして亡くなってしまうため、あまり資料のない女性ですが、京都時代から始まって、のちのお幸の方となる幸との仲良しの様子や、おっとりと優しい人柄が分かるような描写など。
輿入れの際に驚きのあまり気鬱になってしまったのは事実とのことなのですが、そこから心を通わせ、仲睦まじくなる様子が良かった。
死の間際に幸に使命を託す様子に、もともと高貴なお姫様で、優しく思いやりのある女性の、鬼気迫るものを感じました。
そうきたか…‼と。
この本で初めて知った作家さんでしたが、とても良かったので他の本も読んでみようと思いました。
とても美しく、ひきこまれました。