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絶対に笑ってはいけない戦慄遊園地

いま、ふと思いだしたのだが。

小学生生活が終わりに向かい、中学に入学する前のたぶんこの時期に、富士急ハイランドにアイススケートをしに行く、みたいなツアー企画があって、それに参加した。
大型バスで40人くらいはいただろうか。
到着したら、一面、真っ白い雪の世界で、園内は10センチくらい雪が積もっていた。

屋外のアイススケートをしばらく楽しんだ後で、自由時間になった。

すべての乗り物は軽い吹雪のため、中止になっていたが、当時オープンしたばかりの戦慄病棟だけは、やっていた。

10人くらいのグループ行動をしていた私たちは、せっかく来たから、入ろう!となり、みなが当たり前のように戦慄病棟に向かう。

もちろん私は入る気がサラサラ無かったので、「わたしは入らないから、行ってらっしゃい!ゲームしたいからゲームセンターの中で待ってるね!」と当然の如く、輪から離れようとした。

すると、謎の猛反発が始まってしまい、グループ行動から単独で離れることは規則に反する!というような流れになり、かなり混乱が生じた。

私はそこで妥協するのだが、それは、そのグループが学校の友達のグループではなく、習い事の繋がりのグループだったので、親密度はまぁそこまで深いものでは無かったからかもしれない。
よくよく皆の話を聞くと、「グループから離れることがよくない →万が一の時に引率の大人に怒られる。」という流れだったので、私はみんなが納得する妥協ポイントを探し、提案した。

戦慄病棟に入ることは拒絶を押し通したかったので、私は入り口まで一緒にいて、「出口」で皆が出てくるのを待ってるよ。それならば、文句は無いだろう?と。

皆がまぁそれならば、と納得してくれたので、入り口までついていって、皆にお別れをいい、それからひとりで裏の出口に回った。

あたりには、誰一人いなかった。

静寂と白銀と遊園地。

まるで幻想ファンタジーの世界にたったひとりで転送されたような解放感だった。

そうこうしてても、出待ち開始1分で飽き始めた小学生の小さいわたし。

「……あきた、飽きたアキタアキタ!!」

と、ぶつぶつ言いながら、そこらへんを散策しようと歩き出す。

入り口で、戦慄病棟の所要時間が記載されていたことを思い出す。
大人で早くて10分。子どもで15分。そんな記載だったような気がする。

私は、まぁ大人数で入ったし、駆け抜けてくれば、20分あればまた合流できるだろうと、自分の腕時計を眺めていた。

サクサク軽い雪が積もった広い地面を歩きながら、なんて美しいのだろうと、無駄に足跡をつけまくる遊びにしばらく没頭していた。

それから、向かいに大きなジェットコースターがあったので、近くまでいって、繁々と見上げていた。

人間が非日常感の中で、普段味わえない絶叫と解放感を味わうためだけに造られた巨大建造物を前に、私は、これを造るのも人間。それを選択するのも人間。うねうね曲がった宙に浮く太いレールに、雪が積もっていて、しかし、これを溶かすのは、自然のちから…。人間は自然には勝てない…それにしてもでかいなぁ…。などと思っていた。

腕時計を見たら、もう15分くらい経っていた。私は、出口に引き返した。出口の手前5メートルで足をとめた。

私は、ぽっかり開いた真っ暗な闇がどこまでも続いているかのような出口の前で、ぼーーーっと待っていた。しかし、相変わらずの静寂が私を包んでいた。

その時、ふと、視線を感じた。

何気なく左の方に視線をうつす。

建物には窓がたくさんあって、出口から数えて、2~3枚横の窓ガラスの内側に誰かが立っていた。
それは、こちらを見ていた。

私は、ジーーーッとその人を見つめた。

それは、真っ赤な顔で、目はどろんとしていて、頭髪はベタベタとこびりついているようだった。
唇は無いのかどうかわからないが、歯がむき出しになっていた。

……特殊メイクってやべぇな…

無言の見つめ合いの中で、私は、そんなことを思っていた。

そして私は、右手をスッと静かにあげて、ひらひらひらと、手を振ってみた。

しかし、反応がない。手を振り替えしてくれない、まるで動かないそいつに、

……徹底したプロ意識だな……

そう関心した、その時、キャーーーー!っと沢山の悲鳴とバタバタとした足音が聞こえてきた。

出口に目をやると、みんなが泣いてるのか笑ってるのかよくわからない表情で走りながら出てきた。

よく見ると、左の方から出てきていた。

銘々に感想を述べあっていて、さぞ楽しかったのだろう、よかったよかった、そう思って、先程の窓にいたヤツを見たか?みんなが最後、通ってきた道にいたヤツだよ!あれは確かにヤバイと思った!とみんなに言うと、

…えっ?

……そんなの

いなかったけど…。

私は、急いで窓を見たが、もうさっきのヤツは、どこにもいなかった。

すると、みなが、私の顔を見て、

ねぇ…顔、真っ青だよ…唇、紫色だよ…てゆうか、すごい震えてるじゃん!!やばいよっ!!早く!!早くゲームセンターに連れて行かなくちゃッッ!!!

どうやら、

私は、死にかけていたらしい…。

そのままゲームセンターの建物の中に入り、無事、一命をとりとめた。自販機で買った暖かい缶のミルクティーを飲んだら、ミルクティー作ったやつと、自動販売機作ったやつは、医者よりも天才かもしれんな、と感動したのを覚えてる。

それにしても、アイツは一体なんだったのだろうか…

今日が、凍てつくように寒いから、その寒さで、かつて忘れていた幼き日の記憶が甦った、そんな冬の日だったのかな。

しかし、本当の意味で、いろいろな戦慄を体験することになった楽しい楽しい遊園地のお話でした。

おしまい。笑。

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