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title『嗚呼大衆酒場、ハイボール。』
文章版『ねーちゃんの日常』その2
四コマでも何度も触れているが、私は酒が好きである。
酒、それ自体も好きだが、気の置けない友人と大衆酒場で飲むメガジョッキハイボールが好きなタイプである。
二十歳のころは青りんごチューハイを好んでいた味覚も、レモンサワー(シロップ)から生レモンサワーに進化し、焼酎そのもののうまさに目覚め、芋の湯割りを経て、そこからハイボールとの出会いを超えた先に日本酒とワインが待っていたという、いわゆる呑兵衛であるのだが、少しお高めな店はいつ行ってもどうにも尻の据わりが悪い気がして、はしご酒の終わりは大衆酒場が最高だ。バーなんて、行きつけの店が一度爆発してから行かなくなった。(行きつけの店が爆発した話はまた今度お話したいと思う)
大衆酒場のなにがいいって、年齢も性別も雑多な人間たちが群れ集まり、おもむろに安い酒を飲み、安いつまみを喰らっているというその空間そのものだ。
しかし、ただ安ければいいというものでもない。安さのみを求めている若い方やおじさんもおられるとは思うのだが、『安くてうまい』を探すのが大衆酒場の楽しみ方のひとつであるというのは誰も否定出来はしないところであろう。
インターネットでなんでも探せるこの時代、私も大衆酒場を選別するときにいつもネットを使う。気が弱いのでぶらぶら歩いていきなり見つけた店に入ることが出来ないからだが、事前にその店の価格をある程度把握するのは、ちょうどいい大衆酒場を探すのにとても大事なのだ。
ここ10年ほど私はハイボールに生かされているので、ハイボールの銘柄やジョッキ一杯の値段からでもその店について考察することが可能だ。どういったフードがあるかや、その値段も合わせて考えれば概ねその店がアタリかハズレかもわかってくる。
ビールの銘柄や価格でこれが可能な御仁もおられることと思う。もしまだそこまで達していないという方々がこれを読んでおいでなら、私から伝えることはただひとつ。
『肉寿司食べ放題』の店は全部ハズレ。
それだけだ。
私の住んでいるあたりの感覚だが、角ハイがだいたい390円~500円する。この値段を下回るときは「安いな」と思うし、上回れば「高いな」と思う。それはそのまま店のランクに繋がってくる。
上回る場合によくあることで注意したいのは、その角ハイがジョッキで出るかグラスで出るかである。
もし500円の角ハイがシャレオツなグラスに上品に出て来たら、私的には正直ハズレだ。めちゃくちゃ高い。飲み放題でもなければグラスで角ハイを飲みたくない。角ハイ専用ジョッキがなんのためにあると思っているのだ、もはや角ハイへの侮辱である。
しかし、それは実際に来店しないと秘匿事項になっていることも多いのが悩みの種ではある。ネット予約が出来る店にわざわざ電話で「ハイボールはジョッキですか……?」なんて問い合わせするのは半分ハイボール変質者だろう。
だが、ハイボールの値段やグラスかジョッキかでこれだけおしゃべり出来る人間は、半分どころか骨の髄までハイボール変質者であることは間違いない。
日々ハイボール道に精進すればあなたもこうなれるが、あまりオススメはしない。