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title 『君たちはなにをかけるか』
文章版『ねーちゃんの日常』その1
誰でも一度は友達と「目玉焼きになにをかけるか」という論争を繰り広げたことがあるだろう。
主軸は目玉焼きではなくゆで玉子でもいい。ちなみに私は昔から半熟目玉焼きにしょうゆを垂らすのが大好きである。ごはんに合う。
目玉焼き、ゆで玉子、納豆、冷奴などなど、基本的になにか調味料をかけて食べるものについて議論するとき必ず出現するのが、誰かの意見について、
「うえっ、まずそう!!」
と大変にぶさいくな顔で失礼なことを言うやつである。
私などは目玉焼きにしょうゆだろうがソースだろうがいいねと思うし、ケチャップだろうがマヨネーズだろうが悪くないじゃんと思い、スイートチリソースだろうが豆板醤だろうが一度試してみるかと思うのだが、そういう失礼なやつは想像すらせずに反射的にものを言っている。なぜ想像すらしていない、と断言できるかと言えば、彼らは目玉焼きにマヨネーズには「うえっ」と物申すくせに、ゆで玉子にマヨネーズには「うえっ」と言わないことが多いからだ。
少しでも考えればわかるだろう。
目玉焼きもゆで玉子もたまごの変化したものであり、食感の違いこそあれ味のみにおいてそこまで違うものでもないのだ。そこで「うえっ」と言えてしまうやつの考えはやはり浅すぎると言わざるを得ないし、想像力においては欠如している。
そんなやつこそ小中学校では力を持っていたりするのでタチが悪い。しかも彼らはその「うえっ」を面白いリアクションだと思っているから本当に手に負えない。
これはそいつの人生全てにおいてそうなんではないかと、大人になっても「うえっ」に近いことをする人間を見ていると思う。
〇〇大学卒なのにそんな職業に就くなんてもったいない、高収入の仕事だったのにやりたいことを目指して転職するなんて! 「うえっ」はこんなパターンに変わって、やつらの中に根付いているのだ。さらには、前の彼女は美人だったのにあんなブスと結婚して、みたいなところまで「うえっ」は及ぶ。
そして、この「うえっ」は、やつらが目上だと感じている相手には発動しない。そこがまたミソである。
目玉焼きになにをかけるか。
この問いは子供の遊びではない。
その人の本質を知るための大きな問いなのである。