『子供はわかってあげない』田島列島

読んでてホッとする作風

水泳×書道×アニオタ×新興宗教×超能力×父探し×夏休み=青春(?)。モーニング誌上で思わぬ超大好評を博した甘酸っぱすぎる新感覚ボーイミーツガール。センシティブでモラトリアム、マイペースな超新星・田島列島の初単行本。出会ったばかりの二人はお互いのことをまだ何も知らない。ああ、夏休み。
子供はわかってあげない(上) (モーニングコミックス)


初単行本でこの完成度はすごい。
ものすごく売れた。
書道部の男子と水泳部の女子の二人が主人公。夏と高校生と超能力者と新興宗教と探偵。いろいろ詰め込んでるようで、かわいらしいのんびりした絵柄で淡々と進んでいく。
全連載ネームを先に用意してから描き始めたせいか、構成がガチガチに練り上げられていて無駄な展開が一切なく綺麗にまとまっている。
屋上に自由に出入りできるとか、部活の合宿をサボって実の父親に会いにいくとか高校生というルールから少しずつはみ出したところに二人がいるので、独特の抜け感が感じられる。部活や学校を気軽にサボる学生漫画は名作だと思う。
男子主人公の「もじくん」は書道部(幽霊部員)でアニメ好きというおよそ漫画の主人公に似つかわしくない設定だけど、マイペースに自分の道を歩んでるところがかっこいい。部活をサボっては屋上で自分の好きなアニメキャラの絵を描くというとんでもないアナーキーなことをしている。
女子主人公のサクタさんは、水泳部のエースで天真爛漫なタイプだけどアニメ好きな一面もある。小さいときから会っていない実の父親を探すために、探偵であるもじくんの兄に依頼をする。アニメ好きになったのおそらく義理の父親の影響。
学生のときのゆったりした夏の空気。高校2年生の夏休みという青春すぎるシチュエーションで描かれていくささやかな冒険。それと、もじくんの兄が新興宗教の消えたお金を探るミステリー要素も少しあり。全体的に家族をめぐる話に収束していきつつ、その後に直球の甘酸っぱい展開で〆る。
主人公男女が一夏の冒険を乗り越えて少しだけ大人になっていく話。どちらかというとサクタさんのが大人になってると思う。もじくんも年に似合わずけっこう落ち着いてるけど、シャカリキになって走り出す瞬間はやはりキュンとしてしまった。少年が男になる瞬間ってたまらない。
力の抜けたかわいらしい絵だなと思ってたけど、あとがき漫画を見ると作者はかなり命を削って描いていたようだ。
どうか長生きしてください。
あと実写映画が今年公開予定。漫画ならではの良さがあると思うのでちょっと複雑だが見にいってみたい気もする。

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