『天使なんかじゃない』矢沢あい
傑作すぎる
冴島翠は新設の聖学園に通う元気な女の子。第一期生徒会の副会長になったが、会長はなんと気になっていた須藤晃に。生徒会の初仕事が学園祭に決まり楽しい毎日を送っていたが、晃にヒロコという彼女がいることを知り…?
天使なんかじゃない 完全版 1 (愛蔵版コミックス)
人生で一番ハマった少女漫画かもしれない。新設校の1期生の生徒会グループを中心に話が進んでいく恋愛漫画。
とにかく傑作すぎる。
単純に漫画として面白い。最初の方はちょっと古くさい感じの描き方だったけど2巻くらいから一気に覚醒する。世界のYAZAWA。画力の成長がとまらない。ギャグとシリアスの緩急も絶妙で一度読み出すと絶対に最後まで読んでしまう。
もちろん絵が超上手くて話も面白いんだけど、それだけだったらここまで思い入れのある作品にならなかったと思う。25歳の男が全巻読んで、次の日全く仕事が手につかなくなるような作品には。
キャラクターが素晴らしい。
副会長の女の子が主人公で生徒会長と付き合うのがストーリーの主軸になるんだけど、その2人の話は「普通にいい話だな」くらいの感じだった。
主役カップルに魅力がないのかと言われるとそうではなくて、それを差し置いて脇役に目がいってしまうからである。主役カップルを完全に食うくらい「マミリン」が奇跡的なミラクルなキャラなんだよということを言いたい。
マミリンていうのは生徒会で書記をやってる女の子なんだけど、とにかくこの子がいい子過ぎて、マジで昨日「天使なんかじゃない」読んだせいで、今日一日中マミリンのことしか考えられなくて全然仕事がはかどらなかった。おそろしい。
どうマミリンがいいキャラクターなのか解説していきたいと思う。
ギャップ萌えの極致
突き放してるようで思いやっていたり、気が強いようで誰よりも繊細だったり矛盾した性格を合わせ持っているのが人間味があって良い。しっかり者のようで、実は怖いものが苦手だったり、ピーマンとにんじんが嫌いだったりする一面も愛おしい。
かわいい
かわいい。泣きぼくろとウェーブのかかった髪型が特徴のお嬢様な感じの華やかな見た目。最初は基本的に無愛想なクールビューティだったが、ふとした瞬間に見せる笑顔や困惑した顔の破壊力がすごい。1巻(完全版)で本屋に行くところが、特になんてことないシーンだったがかわいくて良かった。
ハードボイルド
絶対に妥協しない姿勢は、『WATCHMEN』のロールシャッハを思わせる。NOと言える日本人。好きな男が侮辱されていたら躊躇なくビンタを張りに行く。作品内で主人公が異常なくらいよく泣くけどマミリンは、狙いすましたような絶妙なタイミングでしか泣かないのが良い。マミリンが泣くときはどれも名シーン。「自分に誠実であれば胸を張っていられるものなのね」といった台詞の中にマミリンという人物のハートの強さがよく表れていると思った。
だれよりもやさしい
歯に衣着せない言葉で周りと衝突していたが、主人公と出会い、いつの間にかマイメンに。好きな男とダチは絶対に裏切らない。まるでギャングスタのような情の厚さ。ビンタした相手にも自分から歩み寄って謝りに行く。自分の芯は通すけど、それだけでなく状況によって素直に自分の非を認められる高潔さが半端無い。
気がつくと読みながらマミリンの恋の行方ばかり追っていた。このマミリンと男をめぐって争う「志乃ちゃん」という女の子も今読むと単なる恋愛漫画の敵って感じじゃなくて血の通った人間臭さを感じた。
結局みんないいやつ。