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今だから話せる秘密 #50音で紡ぐ私のエッセイ
今だって、誰にも話せない秘密がある。
だけどそれは、本当に秘密なんだろうか?
私が百瀬七海であることは、友人も家族も誰も知らない。これはきっと、今だから話せる秘密なんかじゃなくて、これからも話すことのない秘密なんだと思う。
でも実際は、私が百瀬七海であることを誰も知らないわけじゃない。私が百瀬七海として出会った人たちは、当然ながら私が百瀬七海であることを知っているし、そして私がもうひとりの私であることも知っている。
そもそも、秘密ひとつなく、すべてをオープンにしている人なんて、どのくらいいるんだろう。
秘密の恋。秘密の仕事。秘密の趣味。
誰にも打ち明けられないものは、誰だって抱えているのかもしれない。
私がこうやって書いていることは、誰にでも知られたいことじゃないけれど、もしも私と同じように書くことが大好きな友人がいたら、私はきっとその人には自分が百瀬七海であることを打ち明けていたと思う。
実際に、私が百瀬七海であることを知らない友人から、webで小説を書けばいいのにと勧められたことがある。
その友人はもちろん、私が書くことが好きだなんて知らない。一度、大好きなフォトエッセイを貸したことはあるけれど、きっとそんなことは昔のことすぎて忘れてしまっていると思う。
その友人は、そもそも本を読まないので、お互いに本を勧めあったりしないし、そういう話になったのも、そのときのたった一度きりだ。きっと、今はそんな話を私にしたことすら、覚えてはいないだろう。
私が読書をするのは、基本的にひとりでいる時間だけ。
同じ空間に、家族以外の誰かがいるときに読書をすることがない。だから、電車に乗っても読むのは電子書籍だけ。だから、私が本を読んだり、何かを書いたりしているなんて、結びつく人がいないんだと思う。
でも、もしかしたら私がそうしているように、私の仲の良い人たちの中には、私と同じように読書を人前でしない人もいるかもしれない。これを読んでくださってる人が、実は知っている方だった、なんていうのも、今まで出会わなかったのが不思議なくらいで、よく知っている誰かと繋がっているのかもしれない。
私は、この先もこの秘密を守り続けるだろう。
静かに誰かの言葉を読みながら、私はそれを自分の中に吸収していく。
今だから、と、この秘密を打ち明けるのはきっと、私自身がなにも書けなくなったときだろう。
きっとそのときは、「今だから話すけど」と前置きをして、自分が自分の言葉をウェブ上に残していることを、話すと思う。
人は小さくても大きくても、いつだって秘密を抱えている。
今だから話せる秘密は、この街で生きている限り抱えていく。でも、私と同じように、本当はこっそりと言葉を綴っている、そんな友人がリアルにもいたら、とことん話したいな。
次回テーマは、「歌いたくなる歌」です。
2021.3.20
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