お祭りとでんでん太鼓
まだ小学校の頃、父が私に小川未明の童話集の文庫本を買って来てくれた。
私は未明の作品群をとても好きだった。
牛女や、月とあざらしとか、いつも悲しみと表裏一体の喜びが描かれたお話を心から愛した。
何度も何度も繰り返し読んだ。
昨夜は近所にある龍口寺のお祭りだった。
私もちょっと行って楽しい気持ちで帰って来た。
お腹を壊しているから、縁日の美味しそうな食べ物は何も買わなかった。
家に帰ると、未明の月とあざらしの話を思い出した。
お祭りの後、いつもこの作品を思い出す。
子供を亡くした母あざらしが、優しい月に太鼓をもらうお話だ。
私はあまりにもこの話が好きすぎて、小学校の時、親を説得してお祭りで、小さなでんでん太鼓を買ってもらった。
お祭りの後や、悲しい時、いつも自分の部屋でひとりで、でんでん太鼓を少し鳴らした。
昨夜は、でんでん太鼓が手元になかった。
少し泣いて薄いウイスキーコークを作って一口だけ飲んで、薬を飲んで寝た。
私はお祭りは、苦手だ。